中国系仏女流作家による中国の歴史小説
2006-02-03
「Impératrice」
著者 : Shan Sa
出版社 : LGF
ISBNコード : 22531095
表装 : ペーパーバック(11x18)448頁
| 本の内容 | ☆☆ | 13/20 |
| フランス語難易度 | ♯♯ | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪ | まあまあ |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
中国系フランス人女流作家により書かれた、中国の歴史小説。
中国唯一の女帝、あの悪名高い、武則天の生涯を、一人称で語った小説です。
裕福な家庭で育った幸せな子供時代。
父親の死により、平民である父親方の親戚に引き取られ、いじめられた少女時代。
その後、地方の有力者から、その利発さを見込まれた、主人公は後宮へ入る事になります。
ここで、陰湿でエロティックな後宮の女性達の様子が描かれます。
何千人もの女性がいる後宮で、皇帝の目に止るのは、至難の技、ほとんどの女性は、皇帝と一度も夜を共に過ごさず、老いていきます。
主人公も自分もその様な運命を送るのだと、あきらめかけいたのですが・・・
全体的に、平坦なな文体で、読みやすい作品だと思います。
主人公が後宮に入るまでと、後宮に入ってから権力を得るまでは、かなり読ませますが、彼女が権力を握ってからは、ちょっとだれ気味、という印象を受けました。
「もし、武則天が自伝を書いたら、こんな風になるかもね」
と思わせる程、自己満足、自己弁護がだらだらと延べられているのには、辟易しました。
ただ、一人称で語られているにもかかわらず、老いてもなおすら、醜く権力にしがみつく、姿を語った、その筆力には、脱帽しました。
権力争いの激しい中国で、自分の才覚だけで、生涯を通じて権力を手中に治めた女性の、ひと時も気を抜くことが許されない緊張の連続の暮らし、そして、激しい気質と孤独を、当時の後宮の様子を交えて、生き生きと語った作品です。
日本人作家による中国物とは、一味違った作品でした。
この記事は、以前Yahoo blog「フランス読書日記」 に投稿したものを一部修正、加筆したものです。
Shan Sa の他の著作に関する記事
ルネッサンス時代のフランス人のブラジル入植をテーマにした歴史大作
2006-01-23
「Rouge Brésil」
著者 : Jean-Christophe Rufin
出版社 : Folio (Gallimard)
ISBNコード : 2070301672
表装 : ペーパーバック(11x18) 601頁
| 本の内容 | ☆☆ | 15/20 |
| フランス語難易度 | ## | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪ | .まあまあ |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
舞台は、ルネッサンス時代。ブルターニュ海軍副指令長官のVillegagnonと共に、ブラジルへ、入植することになり、ブラジル行きの準備を整えているdom Gonzagues de La Druz は、現地人との通訳が見つからず、途方にくれています。そんな彼は、酒場で出会った、ヴェニス人から、「言葉をすぐに覚える事の出来る子供を連れて行けばいい」とほのめかさます。
そして彼は、修道院長から紹介された、女性から、「今は亡き義弟の孤児二人をブラジル行きに連れて行っては」との提案を受け入れる事にします。
こんな経緯で、遺産を横取りしようとたくらんだ叔母に「お父さんがブラジルにいる」と、騙され、ブラジル行きの船に乗せられた、孤児のJust と、Colombe。
女性は、船に乗れないため、Colombeは、男の子に変装して、船に乗り込むことになります。 苦しく、長い、船旅の間に、Just は、Villegagnon の信用を得ることに成功します。
やっとの事でブラジルに到着したけれど、何もなく、一から造っていかねばならない、現地での生活は、辛かった船旅よりはるかに厳しものでした。すでに、現地で長い間生活している、フランス人のLe Freuxは、入植者たちへの便宜を図ることで金儲けをしようと企みます。
狂信的なカトリック教徒のVillegagnonは、カトリックの教義を厳守することを、入植者たちに強制し、Le Freux との接触を断とうとしますが、 入植民達の唯一のなぐさめは、Le Freux から買うアルコールと、彼から斡旋される現地人の売春婦。
Villegagnonは入植したフランス人の反感を大いに買い、入植者は生活に希望を失い、村の建設工事ははかばかしく遅れます。
そんな、入植者の姿と対照的な、自然と共に暮らしている自由な現地人生活。
ちょっとした、きっかけから、現地人といっしょに暮した、Colombe は、彼らの生き方に魅力を感じるようになります。
Villegagnon について、騎士としての教育を受けながら、入植者とともに、城壁を築き、彼らの指揮をする、Just 。
そんな二人の行き方、考え方に、亀裂が生まれ始めます。
Villegagnonが、「堕落した、入植民たちを救うため」古い知り合いのCalvanへ、援助を求める手紙を送ったことから、事態は、急激に、泥沼へ・・・
歴史に埋もれてしまっている16世紀のフランス人によるブラジル入植をテーマに、文献を元に、著者が想像を加えて、構想された、見事な歴史的冒険小説です。
かなり、長い作品でしたが、とても読み応えのある本でした。
Villegagnonは、無能な指導者の典型的な例。読んでいて歯がゆい思いがしました。
フランス人が歴史から、抹殺したいと思っているんじゃないかと思われるほど恥かしい歴史の一こまです。
古めかしい宗教理念に縛られた、無能な行政官の指揮の下で、ひとつのコミュニティーが、ハンメルの笛吹きのメロディーに合わせて海に飛び込む子供たちのように、ドロドロとした、泥沼の様な現実に身を投げ、身動きできなくなって行く姿が、史実を交え、具体的な例を交えて描かれます。
そんなヨーロッパ人の姿と対象的に、自然と共に暮らしている、自由な現地人の姿が描かれますが、著者は、現地人の行き方を全面的に肯定するのではなく、あるがまま、伝えます。
例えば、彼らの間に悪名高い「人食い人種」という名称のいわれとなった、人食の習慣、私は知らなかったのですが、当時のブラジルでは、争いに負けた部族の兵士の肉を食べるという習慣があったそうです。もちろん、これは、後にヨーロッパ人が誇張して伝えたような、誰でも彼でも食べてしまうという訳ではなく、ちゃんと、ある約束事が存在するのですが、やはり、私たちからしてみると、受け入れがたい風習です。
作品中、フランスから、漂流して、ブラジルの地を初めて踏んだヨーロッパ人の、 Pay-Lo という人物が出てきます。
「それじゃぁ、あなたが、ブラジルを初めて発見したのね」
と、 Colombe が言うと、
「いや、ブラジルは、私がここへ来る前から、ずっとあった。ブラジルが私を見つけたんだ」
と、Pay-Lo が訂正するというシーンがありました。これには、名言、ホント目を開かされる思いがしました。
先進国に住んでいる人が往々にして持っている偏見を持たない、このPay-Loという人物は、著者が、理想と考えている人間像を具現している様に思えました。
この小説が、二つの対照的な文化の出会いを、書いた多くの作品と一線を画しているのは、著者が、この手のほかの作品のように、ヨーロッパ人の偏った視点で見た異文化を書くのではなく、ヨーロッパ人が持つ固定観念から自由になり、出来るだけ客観的に二つの文化を捉え、描写しようと試みているところです。
二人の主人公が、ヨーロッパ社会と決別し、現地人たちとジャングルに入って行く、ラストには、著者の熱い思いが感じられました。
時間がある時に、じっくりと読むのに適している大作です。
この作品は、2001年のゴンクール賞を受賞しています。
この作品は、早川書房から、『ブラジルの赤」のタイトルで邦訳が出版されているようです。
Jean-Christophe RUFIN の作品に関する記事
史実は作り話より、ずうっとロマンティクで、残酷という見本の様な6つのお話
2005-12-07
「Suite italienne 」
著者 : Juliette Benzoni
出版社 : Pocket
ISBNコード : 2070309215
表装 : ペーパーバック(11x18) 288頁
| 本の内容 | ☆☆ | 11/20 |
| フランス語難易度 | ♯♯ | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪♪ | .すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
ルネッサンス時代のイタリアの名家にまつわる実話を小説に脚色した6つの話が収録されている短編集。
舞台は、ローマ、フイレンツェ、フェラーレ、ミラノ、ナポリ等のイタリアの都市。ボルジア家、メディシス家 、エステ家、 カッペロ家、スフォルツァ家 、キャラファ家、ヴェノーザ家で、実際に起こった事件を小説にした作品です。
史実は、作り話より、ずうっとロマンティクで、残酷という見本の様な逸話が、文献を元に、見事な、筆力と想像力で、描かれています。
愛してしまったら、命にかかわると知っていても、止めること事が出来ないのは、イタリア人の悲しい性なのでしょうか。
また、裏切りに対する、残酷な仕打ちも、激しい情熱の裏返し?
私は、塩野七生の作品で、ここに取り上げられている、逸話を読んだ事があるのですが、史実の解釈が、微妙に違っている所、とても面白く感じられました。
この本の1番初めに書かれている、ボルジア家の章には、あの悪名高き、法王アレクサンドラ・ボルジアが出てきますが、この法王の神を神とも思わぬ、人間くさすぎる振る舞いには、法王という地位にあるからといって、神性があるのだとは、限らないという事を痛感しました。
フランス人の中には、カトリック教会を盲信している人がいて、時には、辟易されます。そんな人たちに、ローマカトリック教会も、めっちゃくちゃ、いい加減な時代があったんだよぉと、教えてあげたい時には、この本をプレゼントする事をお勧めします。
(ただし、そのせいで、人間関係が壊れてしまっても、私は責任を取れませんので、あしからず)
Juliette Benzoniのその他の著作に関する記事
宗教戦争で荒れ狂っているフランスが舞台の歴史小説
2005-11-07
「Les spadassins」
著者 : Jean-Baptiste EVETTE
出版社 : Gallimard
ISBNコード : 2070772748
表装 : ソフトカバー(13x21)272頁
| 本の内容 | ☆☆ | 13/20 |
| フランス語難易度 | ## | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪♪ | .すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
宗教戦争で荒れ狂っているフランスが舞台。
従兄弟を殺してしまったため、ミラノを追われたANtoino Zampini は、 Vitteaux の領主である男爵Guillaume Du Prat の元に仕官します。Zampini が、剣の名手であり、学者の秘書を勤める事が出来る程の教養のある文化人なのに対し、Vitteaux男爵は、争いを好み、粗野で、女好きで、おまけに気違いじみた、エネルギーの持ち主。
Zampiniは、男爵に裏切られたり、彼のせいで、散々な目にあったりしますが、運命によって、この形容しようのない魅力を持つ男爵の元へ引き戻され、20年もの間、行動を共にし、パリ、トゥルーズ、ローマ、アンベールの戦場の地を駆け回ります。
この小説は、戦い、争いにあけくれた Vitteaux男爵の怒涛の様な人生を、Zampiniが回想する、という形で語られます。
一男爵でありながら、傭兵のごとく、戦場から戦場へ渡り歩き、復讐の炎を常に内に秘めた、Vitteaux男爵の姿を通し、当時の悲惨な戦場の様子、権力争い、裏切り、等々が、生き生きと語られます。
現在だったら、「まったく病気」と言いたくなる様なVitteaux男爵ですが、こんな人物が堂々と男爵をやってられる、当時の政情って本当、どうしようもない、モノだったのねぇと、しみじみ、現在に生まれた幸運を実感しました。
読む分には、おもしろいけど、Vitteaux男爵のような人とは、あまり係わり合いになりたくないです。 ああ、かわいそうなZampini。
この本を読んでいる間、まるで、宗教戦争たけなわの、あの時代へタイムスリップした様な気持ちになりました。
16世紀に興味をお持ちの方、歴史物が好きな方には、楽しんでいただける作品ではないかと思います。
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