漫画と呼ぶのを躊躇わせる程、文芸的で、魅力的なBANDE DESSINEE
2006-03-24
Coup de coeur
「Un peu de fumée bleue...」
ストーリー : Denis Lapière
作画 : Pellejero
出版社 : Dupuis
ISBNコード : 2800129735
表装 : ハードカバー(24x1x32)56頁
| 本の内容 | ☆☆☆ | 18/20 |
| フランス語難易度 | # | 易しめ |
| 読みごごち | ♪♪♪ | すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
この漫画の舞台は、ヨーロッパの不特定の国。
あちこち旅行しながら写真を撮っているカメラマンが、閉店間際の山の上のホテル・レストランに足を踏み入れる。レストランには、トランプをしている3人の男、酔いつぶれるまで飲んでいる男しかいなく、閑散としている。
ホテル経営者の娘、Laure(ロール)の目の前のテーブルには、言葉が書かれた数本のタバコが並べられている。Laureは、その中の1本のタバコを手取り、火をつける。たばこに書かれているのが、Tristan Corbière (トリスタン コルビエール)の詩の一節である事に気がついたカメラマンは、娘に尋ねる。
「どうして、タバコに、詩が書かれているの?」
この問いをきっかけに、Laureは長い打ち明け話を始める。
このホテル・レストランがある場所は、バスの終着駅。
山の上の刑務所に、政治犯が収容されていた頃は、政治犯の妻や母親たちが、このホテル・レストランに泊まっていた。囚人たちは、3日おきに、刑務所から、近くにある兵舎まで、トラックで運ばれ、拷問を受ける事になっていた。刑務所から出たトラックは、険しい山道にさしかかると、自然とスピードを落とす。
運がよければ、その場所で、囚人の母親や妻は、トラックの荷台に乗っている、家族の顔を見、言葉をかけたり、物を渡したりする事が出来るため、囚人の家族は、その場所で、トラックを待つのが習慣になっていた。
この刑務所に収容されていた囚人は、留置されている日数の代わりに、何回トラックに乗ったかを数えるのが慣わしとなっていた。噂によると、37回まで、持ちこたえた囚人がいるとか・・・
家族が会いに来る囚人は、他の囚人より、長く生き延びる事に気づいたLaureは、家族のいない囚人たちの面倒を見る事に決意する。そして、他の女性達に混じって、トラックを待つのがLaureの日課となった。
そんなある日、Laureは、トラックに乗っていた、囚人のLudvik(ルードヴィック)に恋してしまうようになる。
彼にタバコを手渡し、心が通い合うようになった頃、 Laureは、毎回渡す1本のタバコに、詩を1行ずつ書く事を思いつく。 「詩が終わるまでは、死なないで」 彼女のメッセージを理解したLudvikは、手渡されたタバコは吸わずに大切にとっておいた。
やがて、クーデターが起こり、政治犯らは釈放された。
LaureとLudvikは、山の上のホテル・レストランを離れ、都会で暮らし始める。
Laureは、ウェイトレスとしての仕事を見つけ、二人は幸せな暮らしのスタートを切ったはずだったのだが・・・
これは、絵で読む文学作品。
版画を思わせる、輪郭の太い絵。 普通の漫画とは、一線を画している、アートっぽい絵が ストーリに力を与えています。
ストーリー、絵、コマワリの仕方、読み心地、何一つ文句をつける事が出来ないくらい完成されている作品だと、私は思いました。
政治的で暗いテーマを扱っているけれど、人間の心理に焦点を置いてストーリーが構成されているので、全然、生々しくないし、難しくなく、快く、感動の渦に身を任せることが出来ます。
恋愛小説が苦手な私をうならせた、人間の心の奥にある琴線を揺さぶる、繊細でかつ力強い作品です。
悲劇的な話しなのですが、ラストがいいので、後味が悪くなく、感動だけが、余韻となって、いつまでも心に残ります。
又、一般的なフランス漫画と比べると、とても読みやすい作品でした。
巻末に、ストーリーを担当した、Denis LAPIERE 氏による、作品及び作中人物に関する解説が載っています。 私は、この解説により、作品及び、著者への理解を深めることが出来ました。
とても魅力的な1冊でした。
Denis Lapièreの作品に関する記事
- 「La Saison des anguilles」

- 「Le tour de valse」

- 「Le bar du vieux français, Edition intégrale」

- 「Luka, tome 1 : C'est toujours une histoire de femme 」

- 「Luka, tome 2 : La peur est la couleur de la mort 」

- 「luna alamaden」

- 「Un peu de fumée bleue...」
Ruben Pellejeroの作品に関する記事
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