パリのアパートで繰り広げられる、フランス女学生と老女の一騎打ち
2006-03-06
「Madames, souriez」
著者 : Jessica L. Nelson
出版社 : Fayard
ISBN-10 : 2213622361
ISBN-13 : 978-2213622361
表装 : ソフトカバー(14x22)220頁
| 本の内容 | ☆☆ | 12/20 |
| フランス語難易度 | ##♯ | 難しめ |
| 読みごごち | ♪♪ | まあまあ |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
Louis 叔父さんから、パリのアパートを相続した、ラッキーな女学生 Louisa。
ただし、このアパートには、住んでいる女性がおり、彼女は、長い間 Louis叔父さんの秘書兼アシスタントを務め、おじさんだけでなく、一族が大変お世話になったので、彼女が望む限り、アパートに住み続ける権利があるという条件付。
そういった経緯から、パリの大学に通う Louisaは、『ばばあ』と同居することになった。
だけど、レジスタント運動や、フェミニズム運動に参加し、修羅場をくぐり抜けて来た『ばばあ』は、一筋縄ではいかない超気難しい性格。 家の飾り物や家具を移動するのは厳禁、ボーイフレンドをアパートに招くのはもっての外、おまけに洗濯機一台入れるのにも、大騒動。
おまけに、アパートは年寄りの臭いがぷんぷん。
だけど、そんな事では、めげない、Louisa。
「だって、ここは、mon son appartement、なんだもん。」
かくして、灼熱の暑さの中、パリのアパートでは、若さ対老熟の戦いが繰り広げられるのだった。
若くて、美しくて、傲慢で、老いることを何よりも恐れているLouisa。
Louisaを、ちゃらちゃらしている、あばずれ、だと思っている、『ばばあ』。
Louisaは、『ばばあ』が、孤児だったLouisaの父親の出生の秘密を知っているのではないかと思っており、なんとか、『ばばあ』の口を割らせようとするが、そうは問屋がおろさない。
『ばばあ』が、ノートに日記をつけている事を知ったLouisaは、『ばばあ』の日記を何とか読もうとするが、『ばばあ』は、どうやら毎日、日記の隠し場所を変えてる様子。
やっとノートの隠し場所を見つけたと思ったら、それは、ダミーのノートで、その中には、
「私を老人ホームへ放り込もうたってそうはいかないよ、・・・その気になりゃ、家具伝いに移動することだって出来るんだから、・・・家の中をあちこち嗅ぎまわるのは、やめておくれ・・・」
と書かれていたりする。
Louisaが『ばばあ』を、頭の中で、ののしり、うらみ、憎む様子が、作品を通して面々と語られます。
だけど、これは、彼女のモノローグという形を取っているので、あまり、実感に迫ってきません。
実際に『ばばあ』とLouisaとの会話、という形で表現していたら、もっとおもしろくなったのにと、少々、残念に思えました。
『ばばあ』の回りに起る出来事を通して、Louisaと『ばばあ』の心が近づいたり、離れたりする様子が、書かれているのですが、Louisaの気持ちの描写が作品の大部分を占めていて、『ばばあ』のLouisaに対する気持ちがほんの少ししか扱われていないので、そこの所が、消化不良になってしまい、不満が残りました。
Louisaより、『ばばあ』のキャラクターの方が遥かに謎に満ちているので、『ばばあ』についてもっと、突っ込んだ書き方をしていたら、もっと面白い作品に仕上がったのではないかと思いました。
あと、ラストも今ひとつインパクトに欠けているような印象を受けました。
若さ対老熟の戦いを、文学的に書こうと、試みた作品のようですが、著者は、品性を失わない様、細心の注意を払っているようで、とってもお上品な作品となっています。
もっと、ざっくばらんに、書いてもらったら、もっと、もっと面白い小説になったのに、残念、という読後感が残りました。


