モロッコの田舎の小学校に派遣された新米教師の姿を描いた小説
Coup de coeur
「Ecole des sables」
著者 : My Seddik Rabbaj
出版社 : UBU éditions
ISBN-10: 2351970071
ISBN-13: 978-2351970072
装丁 : ソフトカバー(15x1x21) 182頁
作品評価 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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現在のモロッコが舞台。
小学校教諭の資格を手に、教師として初めて配属された任地のZagouneに赴いた主人公は、バスからおりて途方に暮れる。
バスの運転手が彼を降ろしたのは、砂漠の真ん中。 回りは見渡す限りの砂丘ばかり。 ようやく、砂の中に、色の違った道と思われるものを発見し、それを辿り、砂丘の上にたどり着いた主人公は、遠くに人家の群れを目にする。 村に着いて、村人達から教えられた小学校を前に、主人公は目を疑う。 3棟のプレハブ校舎の横の建物の屋根が崩れ落ちていたのだった。
瓦礫をまたいで、無事な建物に足を踏み入れた主人公は、小学校校長や、同僚の教師に迎えられる。 そして、彼は、Zagoune地区に配属された教師が全員集まるまで、小学校で同僚達と共に過ごす事になる。
夜、教師たちは、教室の机を並べ、その上にシーツを敷いて眠る。 身動きできないほど、狭いスペースで眠る事が出できず、これなら床で寝たほうがましと、思う主人公。 しかし、さそりや毒蛇が徘徊する恐れがある床で眠る事など、もってのほかだった。
そんな悪夢のような、配属一日目だったのだが、任地のベルベル人の集落に配属されてから彼が経験する事になる辛酸は、任地配属の一日目に経験したものを遥かに超えていた。
モロッコの辺境にある、ベルベル人の村に配属された新米小学校教師の経験を語った小説。
アラビア語がほとんど通じない、極貧のベルベル人達の住む集落にたった一人で配属された、町育ちの新米小学校教諭の経験が、繊細な主人公の口から語られてゆきます。
作品の冒頭で、主人公が、砂漠の中で佇む場面から、ぐっと心を捉えられ、一気にラストまで読んでしまったそんな、静かな迫力に満ちている作品。
電気が通わない、そして水道やトイレすらない、信じられないような悪設備の辺境で、小学校教師として勤務する事を余儀なくされた主人公。 そんな彼の経験を中心に、彼が親交を深めた彼の回りの集落に配属された他の小学校教師達の経験などを交えながら、都市での暮らしとは、かけ離れている現在のモロッコの田舎の実態が展開してゆきます。
かなり暗く、辛い話なのに、不思議な事に、読んでいても息苦しく感じる事がありませんでした。
これは、ゆえに、主人公の繊細で優しい目差しによるため。 普通、主人公の様な境遇に陥ってしまった人間は、自分の不幸の元を見つけて(あるいはでっちあげて)自分の欲求不満をぶつけ、憂さを晴らそうとするのですが、この主人公には、そんな態度の微塵も感じる事がありません。 自分の置かれた境遇を耐え難いものと思いながら、それと同時に、彼の回りの人たちの立場も彼らの身になって理解しようとします。 そんな、まっすぐで、優しさに満ちている純粋な主人公の目線は、読んでいて心を洗われるような思いがしました。
決して問題提起をしたり、糾弾調で書かれているわけではないのですが、
どんな田舎で暮している子供たちにも、平等に教育を与えようとしている政府の方針は、もっとも。
だけど、最低限の援助すらせずに、その大変重い任務を全て、新米教師の肩と、貧しい村人達に押し付けてしまうのは、あまりにも、ひどすぎる、
と、ページを捲って行くうちに、憤慨の重いが込み上げてきました。
村での耐え難い経験をしたにもかかわらず、自分の不幸と同時に、辺境で極貧の生活を送っているベルベル人たちの生活環境を嘆く、主人公のやさしい心が伝わってきて、心を動かされずにはいられませんでした。
あまり知られていない、モロッコの一面を垣間見せてくれる貴重な一冊、モロッコや、北アフリカに興味のある方に、お勧めしたい一冊です。







