Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド

フランスの現代作家の小説、BD(フランス漫画)を中心に、私が読んだフランス語の本を紹介

パレスチナ・イスラエルの紛争を描いた傑作小説

Coup de coeur

attentat
   「L'attentat」
 著者 : Yasmina Khadra
出版社 : Pocket
ISBN-10 : 2266162691
ISBN-13 : 978-2266162692
表装 : ペーパーバック(11x1x18)245頁
 




 本の内容☆☆☆18/20
 フランス語難易度#♯♯少々難しめ?
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)


この小説の主人公は、アラブ系イスラエル人の敏腕外科医、Amine。

満員のレストランで、起こった自爆テロの被害者を治療して、クタクタになって帰宅した Amineは、警察庁のお偉方の友人のNaveedから、「至急、病院へ戻って来る様に」との電話を受ける。 

病院へ着いた、Amineを待っていたのは、爆発の影響で、ぼろぼろになった変わり果てた妻、Shiemの遺体だった。

そして、Amine は、 Naveedから、レストランで起こった自爆テロ事件の犯人は、妊婦に変装し、マタニティードレスの下に隠した爆弾を爆破させた彼の妻、Shiemだと、伝えられる。

アラブ系でありながら、完全にイスラエル社会に溶け込み、社会的地位と、財産があり、愛する妻と幸せな日々を送っていた主人公とその妻のShiem。
やさしくて、慎み深く、なによりも自分を強く愛していたと信じていた妻が、『KAMIKAZE』と呼ばれる自爆テロを起こした事が、どうしても信じられないAmineは、ユダヤ系イスラエル人の同僚であるKimの助けを借りて、Shiemの死の謎を解明しようとする・・・


この本を読み終わって、とっさに頭に浮かんだ言葉は
「 Trop fort ! Poignant ! 」

私は、これまでに、パレスチナ問題について、書かれた記事や、テレビのルポは、数え切れない程読んだり見たりしました、又、この地方へ旅行へ行った人の話を聞いたりもしましたが、この本を読んで、「もしかしたら。今まで私は、何も理解していなかったのではないか」と、愕然とした思いを味わいました。

フィクションという形を持って、パレスチナ・イスラエルの紛争と一緒に生きていかねばならない運命に生まれた、パレスチナ人たちが直面している現実を出来るだけ忠実に伝えようとし、それに成功した作品だと思います。

貧しいアラブ系の家庭の出身でありながら、完全にイスラエル社会に溶け込み、イスラム原理主義者を完全に否定している主人公。彼は、自爆テロを賞賛する、imam に対して、次のように叫びます。

「Tu oses me sôuler avec tes histoire de braboure et de dignité lorsque tu restes dans ton coin en envoyant des femmes et des gamins au charbon?
Détrempe-toi: nous vivons bien sur la même planète, mon frère, sauf que nous ne logeons pas à la même enseigne.
Tu as choisi de tuer, j'ai chosi de suver. Ce qui est l'ennemi pour toi, pour moi est un patient.」

女や子供達を、地獄に送っておきながら、自分はぬくぬくとしているお前が、勇気や尊厳を語る事で、ずうずうしくも、俺を陶酔させようとするつもりか。
勘違いしないでもらいたい。俺たちは、同じ惑星に住んでいる、ただ、違った生き方を選んだだけだ。
お前は殺す事を選び、俺は治療する事を選んだ。お前にとっての敵は、俺にとっては患者だ。

そんな、考えを持っているAmineを中心に、

彼の妻が自爆テロを犯したにも係わらず、Amineに変わらない友情を示し続けるユダヤ人のKim、と Naveed、

ナチスのユダヤ人収容所にいたことのあるKimの父親、

常にテロ恐怖に脅えて暮らしているがゆえ、テロ行為にかかわるものに対し激しい憎悪を抱く人々、

そして、イスラム原理主義に傾倒せずにはいられない立場に追い込まれてしまった者たち、

彼ら生き方と考え方が、グサグサと、胸に突き刺さるナイフのように、頁をめくるにつれ、読む者の心に刻み込まれてゆきます。

最後に、Amineがたどり着いた結論は、どうやったら解くことができるのか誰にも分らない、現在のパレスチナ・イスラエルの紛争の行方を暗示しているようで、暗い気持ちになりました。

著者がアルジェリア人であり、主人公がアラブ系という事もあり、この作品、少々、パレスチナ寄りになっている事は、否めません。
ですが、「中立」を第一に考えて、行われた報道では伝える事が難しい、パレスチナ人が生きている現実を読者に伝えるのに成功しているのも、否めない事実です。

パレスチナ自治評議会選挙でハマスが勝利を収めたのは、納得できませんが、どうして、パレスチナ人たちがハマスを選んだのか、この小説を読んでみて、少しですが、理解できた様な気がしました。


Yasmina KHADRA こと、Mohammed MOULESSEHOUL の様な文才が持たない私は、どんなに言葉を尽くしても、うまく、この本を読んだ後感じた思いを伝えることは出来そうにありません。

「とにかく、読んでみてください」 

2006年は、始まったばかりで、今年もビジバシ本を読んでいくつもりですが、この本が2006年のベストコレクションに入ることは、間違いないと、確信している傑作です。
この本を読み終わった後は、どんな本を読んでも、物足りなく感じてしまい、困っています。

多くのの言語に訳して、出来るだけ、沢山の人に読んでもらいたい作品です。


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