フランス革命の実態を語りながらルイ17世暗殺の謎に挑んだ小説
2008-05-23
「Un roi sans lendemain」
著者 : Christophe Donner
出版社 : Grasset
ISBN-10: 2246625815
ISBN-13: 978-2246625810
表装 : ソフトカバー(14x3x22) 378頁
作品評価 :(3/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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作家のHenri Nordenは、テンプル塔に幽閉されたまま10歳で命を落したルイ17世を主人公とした映画のシナリオを担当する事になる。
フランス革命の動乱の最中、幼い命を失った、マリーアントワネットとルイ16世の息子、ルイ17世についてのルポをテレビで見た、富豪夫人Sylvie Delamareは、自らの資産で、ルイ17世を主人公とした映画をプロデュースする事に決めた。そして、Henri のメンターである、Sylvie の父親が娘へHenri にシナリオを担当させるように、推薦したのだった。
ルイ17世は暗殺された。
それなら、だれがルイ17世を暗殺したのか?
Henri は、サン・キュロットの指導者で、有権階級を皮肉った新聞「デュシェーヌ親父(Le Père Duchesne)」の発行者であるジャック=ルネ・エベールが、ルイ17世の死の真の犯人であると確信し、エベールの人生を語ることにより、彼が『どうして』そして、『どうやって』幼いルイ17世を死に至らしめたのかを明らかにしようと試みる。
この小説の前半では、ルイ17世の映画のシナリオを担当する事になった、Henri の日常と、Henri が文献を調べながら、掴んでいく、フランス革命当時の国王、王妃を巡る当時の状況が並行して語られてゆきます。
ルイ16世が幼年時代に、父及び、兄から受けた精神的虐待によるトラウマにより、病的に内気で、自己嫌悪感を持つ性格を持つに至った経過や、どうしても跡継ぎを産まねばならないため、マリーアントワネットが愛人達と浮気をするに至った事、又、自分の子供でないと知っているにも関わらず、マリーアントワネットが産んだ子供達を敵愛したルイ16世の様子、そして、革命を叫ぶ民衆達の残酷でおぞましい振る舞い・・・等々の、生々しい当時の様子が、迫力たっぷりに描かれます。
フランス革命を扱った少女漫画や、学校の歴史の授業ではお目にかかる事のない、生々しい、当時の王族の姿や、革命家の野蛮な残酷さ等、あまり語られることのないフランス革命の裏側が、ディテールを端折らずに、リアルに描かれているので、私は、興味深く読む事が出来ました。
作品の後半部では、王とその家族と取り巻きがチュイルリー宮殿に移されてからの経過が語られます。 著者は、ジャック=ルネ・エベールが発行した新聞「デュシェーヌ親父」の記事をたどりながら、エベールが、新聞記事という媒体を使用することによって、王族を卑しめ、彼らの処刑へと世論を操ってゆく様子を描いて行きます。
屈辱満ちた絶望の底に突き落とされても、決して最後まで品位を失う事のない王と王妃の姿が、きわめて醜悪なエベールのやり口や、あくまでも醜く、粗暴で、無教養な革命政府の要人達の姿と対照的に描かれます。
ページを捲りながら、野蛮で無教養でめちゃくちゃな人々に牛耳られていた革命政府の暴走ぶりと、いくら政治的には無能な王であったとしても、王とその家族が受けた非道な扱いには、憤慨の念を感じずにはいられませんでした。
しかしながら、「デュシェーヌ親父」の記事が中心となる、この後半部は、前半部に比べると、一本調子でメリハリに欠けているため、ページを捲るスピードがいくらか遅くなりました。
又、作品の後半に入ると、前半では、かなり頻繁に顔を出したHenri が、なぜか、すっかり姿を見せなくなってしまい、映画制作がどうなったのかが、わからないまま作品が終わってしまったのには、大いに不満が残りました。
しかしながら、一章の長さが短めなので、歴史物にしては、読みやすかった小説なので、奇麗事ではない、フランス革命の実態を知りたいとお思いの方には、お勧めできる小説ではないかと思います。





