暴力を描くことでノワールを書いたつもりになっている作家に爪の垢として読ませたい真のノワール小説
2008-05-02
Coup de coeur
「Flux」
著者 : Pascal Garnier
出版社 : Zulma
ISBN-10: 2843043131
ISBN-13: 978-2843043130
表装 : ソフトカバー(13x1x19)126頁
作品評価 :(5/5)
フランス語難易度 :(2/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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主人公のMarc が、姉夫婦に連れられ、精神病院へ到着するところからこの小説は始まる。
頭部に受けた銃痕のせいで、視力をほとんど失ったMarc は、聴力は正常なのにも関わらず、決して口を開こうとしない。
そんなMarc と、彼に特別な何かを感じる看護婦Mireilleの日常と、Marc の過去への回想が交互に語りながら、Marc の心の底の澱みを読者へ語りかけてゆく中編小説。
全部で126ページありますが、章の間の白紙のページがかなりある上、白黒の抽象画が何枚か挿入されているため、正味は100ページ余りのとても短い小説。
短いだけでなく、大変読みやすかったこの小説は、以前に、このブログで紹介した「Théorie du panda」と同じスタイルで書かれています。
主人公と、彼を取り巻く人々の現在の間に、主人公の過去を挿入しながら、作品はゆるやかに進行してゆきます。
「Théorie du panda」は、浄化された透明感のある絶望を表現した作品だったけれど、本書は、洪水で溢れ出す河のどす黒い色を思わせる、どす黒い絶望を描いた作品。
本当のノワール小説とは、こういう作品の事。
暴力を描くことで、ノワールを書いたつもりになっている作家に、爪の垢として読ませたい作品だなぁと思いましたね。
どこか茶道のお手前を感じさせる、きっちりと計算され、無駄をすべてそぎ落とした構成と文章には、今回も、感嘆の念がもれました。
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