透明感のある絶望を描いたノワール小説の傑作
2008-04-15
Coup de coeur
「Théorie du panda」
著者 : Pascal Garnier
出版社 : Zulma
ISBN-10: 2843044359
ISBN-13: 978-2843044359
表装 : ソフトカバー(12x1x19) 175頁
作品評価 :(5/5)
フランス語難易度 :(2/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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ブルターニュの小さな駅で汽車を降りた、Gabrielという名の一人の男は、一番最初に目についた小さなホテルに部屋を取る。
何の目的なしに、町をぶらぶらしているGabrielが、最初に出合ったのは、妻が入院中のカフェ・レストランの主人José。
さりげなく、人の心の隙間に入り込んで、くつろぎを与える才能を持っているGabrielに、Joséは、心のうちを明かすようになる。
そんなGabrielと親しくなったのは、Joséだけではなく、Gabrielが泊まっているホテルの孤独な受付嬢のMadelaine、偶然にJoséのカフェ・レストランで出会った薬中のカップル、Ritaと Marcの4人。 人生に行き詰まりを感じているこの4人にとって、Gabrielは、次第に、かけがえのない友人になってゆく。
なんて形容していいのか良く分からないけど、読み終わった後、凄い感慨を受けた小説。
感動ではなくて、感慨。
カタルシスとは、正反対のタイプの、どことなく失恋の傷に似た心の震えを感じさせてくれた小説です。
出合った人々に、のほほんとしたくつろぎを与える才能を持った一人の謎めいた男Gabrielと、彼が偶然出会った4人との交流が、透明感の溢れる筆致で描かれて行きます。
どちらかというと、やさしめのフランス語で書かれており、一つの文の長さも短めだけど、心に反響する、そんな独特な文体で綴られた作品です。
お腹を抱えて笑ってしまう可笑しさではありませんが、ところどころ、ほのかなユーモアが感じられます。
人生に不幸を抱えている人々に対して、さりげない、くつろぎを施す、Gabriel。そんな謎めいたGabrielの過去の思い出を現在進行形のエピソードの間に挿入しながら、著者は物語を静かに進めてゆきます。
深い霧の中を、静かだけど、どことなく軽快な感じのするメロディーに誘われ歩いていたら、霧が少しずつ晴れてゆき、気がついたら目の前は崖っぷち。 もう、踏み出した足を元に戻すことなど出来ない。 見事に著者の策略にはまって、深い心の淵へと落ち込んでしまった。
そんな読後感を得た本。
透明感のある絶望、そんな形容詞がピッタリ来るような小説。
文章は上手いし、一分の隙もなくきっちりと計算されている、惚れ惚れするような構成力。 こんな上手い作家がいたのかと、感嘆の念が洩れました。





