エコ・テロリストをテーマにしたフランスのサスペンス小説
2008-02-12
Coup de coeur
「Le parfum d'Adam」
著者 : Jean-Christophe Rufin
出版社 : Flammarion
ISBN-10: 2081201232
ISBN-13: 978-2081201231
表装 : ソフトカバー(15x4x24) 539頁
作品評価 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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ポーランドのWroclawにある研究所が、荒らされ、実験用の動物が解放されるという事件が起こった。 現場に残された落書きから、動物擁護ゲリラによる犯行だと推定された。
アメリカ合衆国、アトランタで、慈善病院の院長をしている Paul Matisseは、病院に多額の寄付をしているメセナだと名乗る謎の人物にMadisonホテルに呼び出される。
Paul を待っていたのは、以前Paul が、CIAのエージェントだった時の上司、Archieであった。 CIAを辞め、情報・安全管理を受け持つ会社を設立したArchieは、Paul に、ある任務に参加しないかと、誘いかける。
患者の治療と病院経営に、生きがいを見出していたPaul だったが、計画中の病院拡張のための費用を得るため、しぶしぶ、Archieの申し出を承諾する。
Paul は、Archieの指示に従い、ポーランドのWroclawの研究所へ調査に赴き、事件を調査し、この事件が、コレラ菌を盗むためのカモフラージュであったという結論に達する。
誰が、どういう目的で、コレラ菌を盗んだのか?
この事件を担当する事を決めたPaul は、かつて共に諜報機関で働いた経験のあるKerryにコンタクトを取る。
初期の国境なき医師団で活躍したメンバーであり、Action Internationale Contre la Faim (飢餓撲滅国際活動団体)の会長を勤め、現在は、セネガルのフランス大使として活躍中の、ゴンクール作家リュファン氏による、エコロジーとテロをテーマにしたスリラー。
『エコロジー=善』という観念が、巷に幅を効かせているフランス社会へ、過激派エコロジストの危険を訴えかけたフィクションです。
フランスのスリラーには、珍しく、アメリカ製の優れたサスペンス小説を思わせる、スピード感があり、読みやすく、読者サービスに長けているエンターテイメント小説。
ページを捲りながら、登場人物達の行動を追って行くだけで、何の基礎知識の持たない読者でも、エコ・テロリストたちが何者であり、どういう理念に基づき活動しているのかが、すんなり理解出来るように考えて書かれています。
地球を守るためなら、大量無差別殺人も厭わない、そんな過激な思想を持つ、思想家や、エコロジスト達が登場し、『地球を守る』という目的が、危険で、過激な活動に繋がってゆく事実を読者に突きつけて行きます。
アメリカのFBIでは、イスラム原理主義のテロリストの次に危険だとマークされているエコ・テロリストの危険性を訴えかけた優れたサスペンス。
作品の端から端まで、きっちり計算して、書かれているので、サスペンス小説に、必ず付き物の、アラやアナや隙のない、完成度の高いに仕上がっています。
楽しみながら、すらすら読めるエンターテイメント性の高い小説なのですが、さすが、ゴンクール賞受賞作家、作品の諸所にちらばめられた、ちょっとした風景の描写などに、心に染みとおる情緒が感じられる、文学的な香りが高い作品に仕上がっているので、エンターテイメントと呼んでしまうのに、躊躇いを感じてしまう、そんな読み応えのある作品でした。
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