数の不思議な力を信じたフランス軍大佐の話
2006-01-18
「Le Théorème de Roitelet」
著者 : Frédéric Cathala
出版社 : LGF
ISBNコード : 2253117641
表装 : ペーパーバック(11x18)410頁
| 本の内容 | ☆☆ | 14/20 |
| フランス語難易度 | ♯♯♯ | 難しめ |
| 読みごごち | ♪ | しんどかったです |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
ドイツ人のフランススパイのWronskiは、ドイツ兵に、余興をひろうする芸人。
その余興は、Wronskiが、観客に、登録ナンバー、所属部隊名、生年月日等を言わせ、その数を足したりかけたりしながら、彼らの運命を占うというもの。
数に対する記憶力が抜群のWronskiは、所属隊の名前、登録番号等をすべて暗記して、フランス軍にひそかに連絡している。フランス側は、彼からの情報を元に、ドイツ軍の進軍状況を把握しようとする。
Roitelet大佐は、攻撃の頻度、砲弾のサイズ、兵器の供給量、隊長の年齢、風向き、等の統計の数字を元に計算した数式で、戦争の行方を知ることが出来ると確信している。彼の率いるbureau des calculs により、算出された数字が実際のものと一致したという実績を元に、彼は、政治家、軍部幹部の信頼を獲得する。 Roitelet大佐と、bureau des calculs は、勝利の条件を定義する、『勝利の方程式』を生み出すことに、全身全霊をかけている。
Saint-Arnaud司令官は、戦争に勝つことよりも、自分の利益が優先する男。
Roitelet大佐を陥れるため、Bureau du calculに偽りの統計の数字が伝わるよう、画策する。
そして、東側の前線で、戦っている、フランス軍の第 173部隊 Bastiais に所属する、コルシカ出身のAlbertini、Clovisらの兵士は、供給物資を多く得るため、報告をごまかす事に精を出している。
以上の役者と彼らを取り巻く人々が活躍する、第1次大戦中のフランス軍にまつわるお話。
作品を通して、貫かれているテーマは、戦争のばかばかしさと、数字とその不思議な力。
数学が苦手な私には、作中に出てくる数式には、ちんぷんかんぷん。
数字に絶対的な信頼を置く、Roitelet大佐の考え方には、ちょっと頭をひねってしまいます。
どちらかというと、数学があまり得意でない私は、Roitelet大佐が冗談で口にした、『cassoulet mathematique』に必要となるインゲンまめの数を数えるために、大量のインゲンまめを買占めした、Hectorの気持ちがよく分ります。
毎週5万人もの戦死者が出ているというのに、自分の利益のみしか頭にない、Saint-Arnaud司令官。
5万人の戦死者という数字も、自分達が生み出した数式に必要な数としか捉えることの出来ないRoitelet大佐。
戦争がこのような考えを持っている人たちにより、コントロールされていおり、多くの命が失われていく事実が、皮肉と嘲笑をこめて、語られています。
でも、この作品に出てくる第一線で戦っている兵士たちもかなりいい加減。 戦いの行方よりも、自分たちの部隊に、供給部品がコンスタントに過剰に入ってくるよう、報告を捏造することに精を出し、やばくなったら、すぐ、逃げ出そう試みます。
とにかく、この作品に出てくる、軍の幹部とその部下、そして、その家族、スパイとドイツ将校、前線の兵士、誰も彼もが、まともでなく、ちょっとおかしい人ばかり。 そんな、彼らの戦争下の生活を、著者は、ちょっとブラックがかかったユーモアで味付けして、描いていきます。
この小説、面白いのですが、日常あまり使わない単語が多く、おまけに、ごちゃごちゃしていているので、大変読みづらいのが、難点。 もう少し、すっきりと書いてくれたら、読みやすいのに、と思いながら、ページをめくりました。
戦争のバカバカしさ、男女の関係の不可解さ、数の不思議な力、暗号、占星術、なぞなぞ、そして、陰謀、などの沢山の要素がつまった、野心に満ち溢れている小説です。
なんと、この作品は、Frédéric Cathalaの処女作だそうです。
処女作で、これだけ書けるなんて、これからが、楽しみな作家です。
Frédéric Cathala の他の著作に関する記事
「L'Aigle et le Phénix」


