とても平易なフランス語で書かれているにもかかわらず、心に大きな感慨を呼び起こすフランスの小説
2008-01-17
Coup de coeur
「Il a jamais tué personne, mon papa」
著者 : Jean-Louis Fournier
出版社 : LGF(Livre de poche)
ISBN-10 : 2253148679
ISBN-13 : 978-2253148678
表装 : ペーパーバック(17x1x11)155頁
作品評価 :(5/5)
フランス語難易度 :(1/5)
読みごこち :(5/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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僕のパパは、お医者さん。
だけど、ちょっと、そこらにいるお医者さんとは、全然ちがう。
いつも着古した上着を着て、浮浪者でも、はかないようなボロ靴をはいている。ママが見かねて、パパの靴を棄てたら、パパは、スリッパで往診に行くようになった。
だけど、パパは、病気の診断に困った同業者が、相談に来るほどの名医。
お金のない患者さんには、診察料を取ろうとしないし、一日の終わりには、必ず飲み屋で、しこたま飲んで帰ってくるし、気前よく人におごったりするのが大好きで、酔払い運転で羊の群れに飛び込んで、その弁償をしたりで、家計はいつも火の車。
だから、ママは家計を助けるために外に働きに出ている。
僕は、クラスメート達から、
「おまえの着ている服を見ると、医者の息子とは思えない」とか、
「お前の親父はアル中だ」とか言われている。
家の外でのパパは、人類愛に満ちた名医として通っている。
だけど、僕はパパに愛されている感じた事はない。
パパは決して悪い人じゃないけど、お酒を飲んで帰ってきたり、イライラしたりすると、気ちがいじみた事をする。
外では、赤ひげのような医師だけど、家に帰ると無責任を絵に描いた様な父親を持つ、少年の手記という形式で書かれた小説。
巻末についている資料から、これが著者の自伝的作品である事がわかります。
外では、博愛主義者として通っていても、家庭を顧みることがなく、まるで大きな赤ん坊のように、妻にだっこにおんぶで、迷惑のかけっぱなし。
そして、挙句の果てには、お酒とタバコのやり過ぎのため、43歳で、この世を去った、父親への著者の複雑な思いが綴られています。
一切無駄を省いた、とても易しいフランス語で、書かれている上、一つの章が1ページ、長くても2ページを越える事がないので、巷にころがっている、子供向けの小説なんかより、遥かに読みやすかった作品。
この本、巻末についている目次や写真などを除いた、小説の部分は、全部で141ページあるのですが、ゆっくり読んでも、1時間程で読み終えてしまいました。
そんなわけで、フランス語初心者の方でも、無理なく読みきることの出来る本だと思います。
だけど、初歩的なフランス語のみを使って書かれているにも関わらず、作品の内容は、文体と正比例して、しごく深く、濃く、読後、なんとも言いがたい感慨を読者の心へ残します。
豊富なボキャブラリーや、凝った文体を駆使せずに、小学校の低学年の子供でも無理なく読めるような、簡単な単語と文章で、読むものに、これだけ複雑な感銘を与える作品を書いた著者の技量は、並大抵のものではないと思いました。
フランス語初心者から、バイリンガルの方まで、3歳〜150歳の方、等、幅広い読者へ、声を大にして、お勧めできる小説です。
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