漫画による労使活動に生涯をささげた貧しいフランス人の記録
2006-01-13
「Les mauvaises gens」
著者 : Etienne Davodeau
出版社 : Delcourt
ISBNコード : 2847894497
表装 : ソフトカバー(17x2x23)185頁
| 本の内容 | ☆☆ | 14/20 |
| フランス語難易度 | ## | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪♪ | .すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
この本、2005年下半期に出版された本の中でも、かなり話題になり、あちこちで書評をみかけました。
この本を一言で表現すると「漫画による労使活動に生涯をささげた著者の両親の半生記」
このフレーズ、自分で書いていながら、
「ああ、なんて、つまらなそうな本」
と思ってしまいました。
実は、私もあちこちで、この本の書評を目にしながら、自腹を切って購入することを長い間ためらっていました。
なんせ、この本、テーマが地味だし、彩色されていない白黒漫画(フランスの漫画の多くは彩色されているので、白黒漫画には、なんとなくそっけない雰囲気があるような気がします)だし、読むところも結構あるし、お値段もペーパーバック−に比べると高め。
でも、読み終わって、「ああ、買ってよかった」と、つくづく思いました。この本、ある人へのクリスマスプレゼントにしたら、喜ばれました。
この話は、現在40台の著者が両親に、子供の頃の思い出を聞くところから始まります。
二人とも、『フランスの奥地』とでも形容できるような田舎の貧しい家に生まれました。 家が貧しいために、進学することが出来ず、二人とも、早く働きに出ます。
現在のように、労働条件が整っていなかったフランスの工場での、仕事はとても辛いものでした。
そんな時、彼らの住む町に、Jeunesse Ouvrière Chrétienne のメンバーである若い神父が赴任し、工場や、農家で働く若者たちのためにサークルを作った事から、彼らの人生は、180度転換します。
『漫画』というより、漫画の形を借りたルポルタージュという感じのする作品。
著者は、ジャーナリストが、記事を書くように、両親の証言を聞き、当時彼らが関わった人や、当時の文献を調べます。そんな様子が、そのまま漫画になっているのです。
どうして、フランスは労使が強いのか、それが、どこから来ているのか?
どのような人たちによって、どんな条件の下、現在の労使が持っている力が培われてきたのか?
それらが、フランスの貧しい、学歴もない人たちが、精一杯に歩いてきた過程と共に、本を読み進めて行くうちに、明らかになって行きます。
著者の両親が公立高校設立のための運動をしていたのに、著者の学校の成績が悪いため、公立高校に入学する事ができず、両親は泣く泣く、彼を私立に入れた、という下りを読んだ時、
「いやぁ、学校の成績なんて、ほんとあてにならない、そんなモンで一喜一憂するのはバカみたい。」
と、しみじみ思いました。
だって、中学の成績が思わしくなくても、こんなすばらしい作品を書くことが出来る人間に育ったのですから。
こんな素敵な漫画を描いた著者と、彼を育てたご両親、そして、こんな冒険的なテーマの漫画をあえて出版に踏切った出版社の方々へ、賛辞を送ります。
『新聞、週刊誌の記事に出てくるのは、泡となってフランスという国の水面に浮かび上がってきた事実、それだけじゃ、水の中に隠れているフランスの部分を知ることは出来ない。新聞、週刊誌の記事を読んで、フランスを理解した気になっているのは、大間違い』
と、私の目を開かせてくれた作品です。
本自体が読む人を選ぶタイプの本なので、誰にでもお勧めできる本ではありませんが、それでも本当に、フランス社会を理解したいと思っている方には、あえてお勧めしたい作品です。
本書は、2006年のアングレム国際漫画フェスティヴァル(Le Festival International de la Bande Dessinée d'Angoulême)の le Prix du Public を受賞し、le Prix du meilleur scénario にも、ノミネートされたのを初め、その他の賞を獲得しています。
Etienne Davodeauの著作に関する記事
- 「Les amis de Saltiel. tome 1: L'homme qui n'aimait pas les arbres」

- 「Le constat」

- 「Chute de vélo」

- 「Geronimo, Tome 1」 【作画】

- 「La gloire d'Albert」
- 「Un homme est mort 」 【作画】
- 「Les mauvaises gens」
- 「Quelques jours avec un menteur 」
- 「Le réflexe de survie 」
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日本語の本が入手しづらい環境にありながら、活字中毒症から抜け出す事が出来ないため、フランス語の本を読んでいます。
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