高校生が選ぶゴンクール賞、2007年の受賞作品
2007-11-30
「Le rapport de Brodeck 」
著者 : Philippe Claudel
出版社 : Stock
ISBN-10 : 2234057736
ISBN-13 : 978-2234057739
表装 : ソフトカバー(14x3x22)405頁
本の評価 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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東欧を思わせる架空の国の山奥深い、ちっぽけな村が舞台。
主人公の、Brodeckは、村の回りの動植物の観察記録をつける仕事についている。
彼は、若い頃、村人のカンパを受け、首都の大学に進学した経験のある、村で数少ない、学のある男。
村に現れた、よそ者が、村人達により、殺されるという事件が起きた。 事件現場には、Brodeck以外の村に住む全ての男が居合わせていた。
そして、村人達は、近くの町の役所に、この事件を報告するため、事件の顛末を、レポートという形で、Brodeckに書き記すよう、依頼する。
気乗りしない心をかかえ、Brodeckは、しぶしぶ、壊れかけたプライターに向かう。
文部省と、大手チェーン書店FNACの後援で、ゴンクール賞の選考とほぼ同時に行われる『高校生が選ぶゴンクール賞(Goncourt des lycéens』で、満場一致で選ばれた本年の受賞作。
今年は、57校の高校が参加し、その中から選ばれた13人の高校生の審査員により、受賞審査がなされたそうです。
どういうわけか、ゴンクール賞受賞作品と比較すると、『高校生が選ぶゴンクール賞(Goncourt des lycéens』受賞作の方が、私にとっては、食指を動かされる作品が多いような気がします。
山奥深い村で、起こった謎に包まれた殺人事件を、外堀から少しずつ埋めてゆくように語ると同時に、この小説の語り手であるBrodeckは、自らのいまわしい過去の記憶を少しずつ掘り起こしてゆきます。
ユダヤ人虐殺、とか、強制収容所、ナチス、とかいった言葉は、一つも出てこないけれど、ページを捲るにつれて、主人公が、ユダヤ人強制収容所の生き残りであることが、明らかになってゆきます。
澄みきった、的確な文章で、過去と現在を行き来しながら、凄絶な経験を経ることにより、主人公の心が、少しずつ壊れてゆき、心に受ける打撃に対する感度が失われてゆく様子が、読者の心に刻み付けられてゆきます。
人間の心の奥底に潜む残酷さ、という重く深いテーマを、鋭利で、抑制の利いた描写で、深くえぐるように、書き込んだ作品。
本を閉じた後、「La petite fille de Monsieur Linh 」を読んだときのような、心を絞られるような、感慨を味わう事は出来ませんでしたが、著者の円熟した小説家としての実力が、見事に開花した、圧倒的なオーラを持っている一冊でした。
ただ、とにかく、めったやたら暗い本なので、その手の作品が苦手な方には、お勧め出来ません。
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