大きな困難に直面した1カップルと1人の男の微妙な関係をセンシビリティーに溢れる筆致で描いた傑作フランス現代小説
2007-11-09
Coup de coeur
「Passage du gué 」
著者 : Jean-Philippe Blondel
出版社 : Robert Laffont
ISBN-10 : 2221107209
ISBN-13 : 978-2221107201
表装 : ソフトカバー(14x3x22)336頁
本の評価 :(5/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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Fredは、妻と、2人のティーンエイジャーの子供を連れ、故郷に住んでいる母親を訪れた。 子供達の目的は、母親が住んでいる町にある、アウトレットのブティック。 客でごった返す店内で、子供たちが目の色を変えて洋服を漁っている時、家族づれの姿がFredの目に留まる。
そして、Fredは、過去を回想する。
1985年、英語教師試験の受験勉強中のFredは、団地街にある中学校で、生徒指導員として、働いていた。
ある夕方、校舎の見回り中に、どこかの教室から流れてくる Mortels の「Total Control」 のメロディーに誘われ、ある教室のドアをあけると、そこには、教団の椅子にすわり足を机に投げ出し、瞳を閉じて、音楽にひたっている美術教師のMyriamがいた。
その出会いをきっかけに、FredとMyriamは、急激に親しくなり、ある日、Myriamは、Fredを自宅で催されるパーティーに招待するが、その席で、Fredは、目の前が真っ暗になる様な、事実を目の前に突きつけられる。
このブログで何度も紹介したJean-Philippe Blondel 氏が2006年に発表した小説。
いままでに読んだ、Blondel氏の作品で一番感動した、センシビリティーに溢れた小説です。
この作品は、Blondel氏の今まで紹介した小説のように、凝ったプロットは、用いられていらず、Fred、Myriam、Thomasの、3人のモノローグのみで、作品が展開します。
ストーリーそのものは、要約して書いてしまうと、
ううん、つまらなそう、
と、思われてしまいそうなので、あえて、書きません。
(もし、この著者の作品を今まで読んだことがなくて、あらすじだけで、判断していたとしたら、私は、この小説を、手に取ることはなかったと思います)
だけど、やもすると、センチメンタルで、ぐじゅぐじゅとしたじめじめ感いっぱいの、自己満足的な読み物になってしまう、難しいテーマを、こんなに、心をぐらぐら揺すぶられる作品に変えてしまった、著者の力量に圧倒されました。
大きな困難に直面した1カップルと1人の男の微妙な関係を、繊細で、豊穣な筆致で描いた感動の小説です。
恋愛小説が苦手な私ですら、これはスゴイ!
と、読み終わった後、叫んでしまったくらい、読む人の心に大きな波を与える小説です。
小説に例えを使うのは、タブーだという事はわかっていますが、あえて、例えるとすれば、タイプは少々ちがうのですが、
初期の村上春樹氏の作品に見られるセンシビリティーと似たようなものがこの作品の底に流れているみたい、
この本を閉じたとき、私の頭の中には、そんな思いがふと横切りました。
Jean-Philippe Blondel、本当にすごい作家です。
どうして、日本では紹介されていないのかしら?
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