多くの人に読んでもらいたい本だけど、特にフランス在留外国人にお勧めしたい小説
2007-10-19
Coup de coeur
「Comment peut-on être français ? 」
著者 : Chahdortt Djavann
出版社 : Flammarion
ISBN-10 : 2080689169
ISBN-13 : 978-2080689160
表装 : ソフトカバー(14x3x21)315頁
本の評価 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :41/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
25歳になるイラン人女性、Roxaneは、パリのオルリー空港から、バスに乗り、パリへ足を踏み入れた。
スーツケースを引きずって、6階にある屋根裏部屋の小さな部屋へ着いたRoxaneは、ほっとため息をもらす。
それから、2週間、言葉は全くわからないものの、パリのあちこちを歩き回り、イランでは決して味わうことの出来ない自由と、町のショーウィンドーに溢れる豊富な食材など、夢のようなパリを満喫したRoxaneは、フランスで暮らしてゆくための一番の難関にチャレンジしなければならなかった。
あらためて、話をつけておいたイラン人通訳と、滞在許可書の申請のため、県庁へ出向いたRoxane。
ところが、彼女の懸念は杞憂に終わり、イラン人通訳が、
「あなたは、本当にラッキーだ。あなたより、ずっとしっかりした書類を持っていても、中々許可がおりない人が沢山いる」
と、驚いたほど、Roxaneは、簡単に、滞在許可書を手にする事が出来た。
滞在許可書を手に、意気揚々と、Roxaneはアリアンフランセーズで、フランス語を習い始めたのだったが、思ったよりフランス語は、厄介な言葉である事に気がつく。
読みやすいフランス語で書かれており、おまけに1章の長さが短いので、かなりラクラク読めた小説。
この本を、図書館で見つけた時、タイトルを見て、外国人のフランス語及びフランスのカルチャー習得苦労記、なのではないかと思い、読み始めました。
本の初めの部分の、ヒロインがパリについて、フランス語を習い始めたあたりまでは、そうなのですが、中ごろからは、フランスとイランの文化比較、原理的イスラム主義が政治、司法を支配しているイランの現状に対する批判がメインとなり、そして、読むものを動揺せずにはいられない後半部分、と、3つの違った面を持っている小説です。
フランス人の友達が出来ないRoxaneは、自分の胸のうちを、彼女の愛読書「Lettre persane」を書いたMontesquieu氏へ手紙を書いて打ち明ける事を思いつきます。
61 Avenue Montaigne 75008 Paris、
81 Boulevard Voltaire 75011 Paris、
73 Avenue Victor-Hugo 75016 Paris、
等々、適当に思いついたアドレスに送られたこのMontesquieu氏への手紙は、必ず『あて先人不明』で、Roxaneの元へ返送されてきますが、それでも、彼女は手紙を書き続けます。
Roxaneの父親が数十人もの妻を娶っていたため、兄弟が全部で何人いるのか知らず、ずっと自分の母親だと思っていた女性が実は、自分の姉だった等という、イラン人ですら、驚愕する家庭に育った事実、
イランでは、子供は家畜同様の扱いしか受けていない事実、
イスラム教原理主義が女性のみならず、男性まで、全ての市民の自由を阻害している事実、
等々、ヒロインが歩んできた困難に溢れる道のりが、Roxaneのパリでの生活ぶりに合わせて、作品を通して語られてゆきます。
現在のイラン人の市民生活について、全く知識がなかった私は、タリバン支配下のアフガニスタンを思わせる、現在のイランの状況に、驚きを感じずにはいられませんでした。
だけど、彼女があまりにフランスを美化して語るのに、私は少々辟易し、
まあ、ヒロインがフランスに来たばかりという設定なので、フランス社会についての知識がないのだからしかたがないかもしれないけれど、いくらなんでも、世間知らずのお馬鹿さんもいいところ・・・
なんて、思いながら読んでいたのですが、
後半部分を読んで、頭をガーンと殴られたようなショックを受けました。
「はい、大馬鹿さんは、私で〜す。(T.T) 」
ちゃんと、伏線が張られているにもかかわらず、Roxaneの心のうちを読みきる事が出来ず、彼女のことを『お馬鹿さん』呼ばわれしていていた自分の能天気なアホさ加減と、Roxaneの袋小路に追い詰められてしまった人生が、重く心にのしかかってきて、私は、号泣してしまいました。
読むときの楽しみがなくなってしまうので、
とにかく、だまされたと思って最後まで、読んでみて下さい、
としか、書けないのが、残念。
「あやしいイラン人」なんて、言って喜んでいる、大馬鹿な日本のエセ知識人達に、是非、読ませたい本です。
タイトルと、本の表紙に書かれている説明が曖昧なので、損をしているけど、とっても素晴らしい本なので、イランに興味がある、ないに関わらす、多くの人にお勧めしたい小説です。





