ロマン ガリーの一世一代の騙り小説
2007-10-05
「Pseudo」
著者 : Emile Ajar(Romain Gary)
出版社 : Folio(Gallimard)
ISBN-10: 2070313522
ISBN-13: 978-2070313525
表装 : ペーパーバック(11x2x18)242頁
全体評価 :(5/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
この作品は、ロマン ガリーが、『Emile Ajar』の偽名を用いて発表した、「La Vie devant soi 」がゴンクール賞を受賞し、フランスマスコミが、『Emile Ajar』の正体について騒ぎ始めた折に、発表された作品。
この作品の中で、著者は、『Emile Ajar』を名乗る自分は、精神病歴のあるロマン ガリーの甥のPaul Pavlowitchであり、病気の治療の一環として、小説を書いたと、告白しています。
又、それと共に、自分が精神病院を転々とした様子や、小説を書くことになった経過、ロマン ガリーの事を指していると思われる、『Macouteおじさん』という、人物をはじめとした彼を取り巻く人々等について、激白しています。
そのまま読むと、精神に異常がある、男から見た、常人の観点とは異なる視点から見た現実を描いた作品。
現実と幻想が交じり合い、読者を混乱へと誘い込んでゆく、そんな感じのする小説です。
笑いを取る目的で書かれたようには思えないけれど、ページをめくって行くと、思わず笑みがこぼれてしまう、そんな風変わりなユーモアで味付けされている、狂人の告白録です。
この作品、こうして、作品が書かれた背景を考えないで、ただ読んでも、かなり読み応えのある作品なのですが、この作品が出版された当時の事情をを踏まえて読むと、全く違った意味合いを持って読む者に迫って来る作品。
この「Pseudo」は、『Emile Ajar』の正体について、マスコミで「レイモン クノー の偽名では、いや、アラゴンかも・・・」と、色々な噂が飛び交っていた当時、その根も葉もない噂にうんざりした、ロマン ガリーが、世間の口を封じるために、書き、発表した作品なのです。
この作品が発表された当時、マスコミ及び世間は、すっかりロマン ガリーにはめられて、エミール アジャーが、精神病歴のあるロマン ガリーの甥である事を、誰もが信じ込んでしまった事からも、著者の才能が伺われます。
こうした事実を踏まえて、作品を読んでみると、世間を欺くいう目的は、ただの言い訳にすぎず、著者が書きたかったのは、もっと他の事だったのでは・・・
というような気がして来ます。
著者の自分に対する怜悧な観察力と、自己嫌悪、そして自分以外の何者かになりたいという渇望がページの間から湧き出ています。
一度や二度読んだだけでは、裏に隠されたメッセージを解読する事が出来ない、そんな、底知れない奥深さを秘めた作品。
ロマン ガリーの全作品を読み直して、彼の伝記を2,3冊読んでから、もう一度読み直してみたら、きっと又違ったメッセージが見つかるのではないかと思われる、そんな、汲んでも汲んでも、常に新鮮な、冷たい水が尽きることのない井戸のような作品だと思いました。
私は、かなり評価している作品なのですが、好みによって評価が大きく分かれるタイプの作品なので、あえて、お勧めマークはつけませんでした。
Emile Ajarの他の著作に関する記事
copyright © Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド all rights reserved.






