2000年にバレンツ海で起こったソ連の原子力潜水艦沈没がテーマのフランス小説
2007-09-14
Coup de coeur
「Une exécution ordinaire」
著者 : Marc Dugain
出版社 : Gallimard
ISBN-10 : 2070776522
ISBN-13 : 978-2070776528
表装 : ソフトカバー(16x2x23)349頁
全体評価 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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2000年に北極海に近いバレンツ海で起こった原子力潜水艦の事故を支柱に据えた連作短編集。
「Je ne suis que Staline」
晩年のスターリンを『治療』した女性の話
「Vertes années」。
スターリン死後のソビエトで、共産主義の崩壊を予想した2人のソビエト軍の大佐と、将軍の対話と、東ドイツ勤務のソビエト軍工作員に関する逸話
「Anterograd」。
記憶障害の妻を抱えて暮らしている、主人公は、
『ジャーナリストには、何も話さない』
という条件で、政府から保証金を手にするが、ジャーナリストの娘の通訳として、外国人ジャーナリストの通訳を引き受け、潜水艦沈没に関する取材に協力する。
「Deux amis」
「Vertes années」に出てきた、大佐と、将軍の対話 。
現在は、引退し、田舎に住んで、悠々自適の生活を送っている大佐が、将軍にある相談を持ちかける。
「Carbonisés」
バンレツ海で、演習中の事故により、沈没した原子力潜水艦に乗っていた新米潜水艦乗組員の話。
「La belette」
原子力潜水艦の事故の連絡を受けた、ロシア大統領の心のうちを語ったエピソード。
「Le silence des mots」
息子と親友を原子力潜水艦の沈没で失った男の話。
この作品には、以上の8章から成り立っています。
かなり地味なトーンで書かれた作品なので、前半を読む限り、これといった感慨はありませんが、後半に入ると、初めは、つながりが全く見えなかったエピソードが、それぞれ、絡み合い、大きなうねりをなし、原子力潜水艦の事故という事件を立体的に書き刻んでいることに気づかされます。
真実を少しずつ、明らかにして行き、それにからめて、ソビエトが抱えている問題や、ソビエトの政治社会の歪みを読者の目に突きつけて行くという、凝った作品構成になっています。
又、それに加え、堅実な表現力を持つ文章で描かれる小説なので、
共産主義から民主主義に移行していくソビエトに生きる市民を取り巻く様子や、そこで暮らす人々の心うちが、痛いほどに伝わってきて、最後のページを捲るまで、本を手放すことが出来ませんでした。
この作品のように、実際に起こった出来事を元に小説を書く場合、資料に捉えらすぎて、小説としての魅力に欠けてしまう場合が往々にしてあるのですが、この作品は、資料をうまく消化し、小説の中に織り込んであるため、リアリティーがある重厚な作品として仕上がっています。
本を読む醍醐味を味わうことの出来た、ずっしりとした重量感のある、読み応えバッチリの小説でした。
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