ファン・ディエゴの奇跡のマントに閉じ込められた男と女性眼科医の奇妙な関係
2007-09-07
「Apparition」
著者 : Didier Van Cauwelaert
出版社 : LGF (Le Livre de Poche)
ISBN-10: 2253154814
ISBN-13: 978-2253154815
表装 : ペーパーバック(11x3x18)217頁
全体評価 :(3/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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マスコミに持てはやされ、数多くの著名人を患者に持つ、主人公の女眼科医の、Nathalie Krentz は、診療室に、枢機卿、Damiano Fabiani の訪問を受ける。
『奇跡』が、科学的に存在しない事を、いくつも、マスコミを通してで証明した、自他認める無神論者のNathalie。 そんな彼女 に、Fabiani 枢機卿は、バチカンでは、メキシコで、1531年に奇跡を起こした、Juan Diego(ファン・ディエゴ)を列聖するかどうか、審査を行う予定であり、Nathalieに現地に赴き、奇跡のtilma(マント)を調べて欲しいと、告げる。
初めは、この申し出に気乗りしなかったNathalieは、結局、メキシコへ行く事に決意する。
そして、現地でNathalieを待ち受けていたのは、思いがけない事実だった。
2002年にローマ教会から列聖を受けた、ファン・ディエゴのtilma(マント)をテーマに、1999年に書かれ、2000年に初版出版された小説。
作品のあとがきには、実際に存在する資料を元にしており、作中の奇跡、科学者らの検証に関する記述は、事実だが、この作品の登場人物は、架空である、と、書かれています。
奇跡のtilma(マント)に閉じ込められてしまった、一人の男と、眼科専門の私立病院の院長の父親と微妙な関係にある同僚の眼科医を恋人に持つ、聡明な無神論者のヒロインを軸に展開する小説。
奇跡の科学的検証にからみ、カトリック教会の内部事情や、500年以上前の奇跡を公認するかという問題が、政治にまで大きな影響を及ぼすという事実、無神論者も、実は、神の存在を拒否するという狂信者になりうるという事実など、いくつもの、興味深い考察が作中示されています。
Didier Van Cauwelaert氏の作品は、これで 6作目なのですが、登場人物の心理描写の的確な表現には、改めて驚かされました。
男性の著者が、女性の立場に立って書いた小説を読んでいると、時々、あまりに、ヒロインの心理描写が、実際の女性の心理とはかけ離れているのに、憤慨することが時折あります。
「こいつは、いったい何を考えているんだ。 無知や勘違いを元にでっち上げた、一人よがりで事実無根の『女性心理』を、偉そうに活字にして、他の馬鹿男がこれを鵜呑みにしたら、馬鹿の数が倍増するじゃないか! こういう害本には、『一人よがり本』のラベルをつけて、売って欲しい」
と、本を投げ捨てたくなる事があります。
ところが、この作品は、違和感を感じるどころか、ヒロインにすんなり自己投影し、作品の中に入ってゆく事が出来ました。
著者の Didier Van Cauwelaert 氏は、女性心理を相当深く理解していのではないかと思われます。
もしかしたら、名立てのプレーボーイ?などと、
勘繰りたくなってしまうほど、女性の微妙なな心の動きを機敏に文章で表現した作品です。
ただ、作品全体に関しては、色々な題材を盛り込み過ぎたため、視点が分散しすぎで、ポイントが曖昧になってしまったような感が否めません。
しかし、ラストに示された、
教会で祈り、天からの奇跡を望むのは、バーで、アルコールに溺れることと同じ、現実逃避にしか過ぎない。 奇跡を望むのではなく、私達一人一人が行動を起こすべき。
という見解には、大いにうなずかされました。
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