ゴッホが主人公の衝撃的な戦争風刺漫画
2007-07-25
Coup de coeur
- 「Une aventure rocambolesque

著者 :Manu Larcenet
出版社 : Poisson Pilote
ISBN-10 : 220505466X
ISBN-13 : 978-2205054668
表装 : ハードカバー(24x1x30)48頁
全体評価 :(5/5)
ストーリー :(5/5)
絵 :(3/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
第一次世界大戦の真っ只中、脱走兵が続出する戦場の実態を知るため、大統領は、画家を第1戦へ送り、戦場の実態を絵に描かせる事にした。
大統領の勅命を受けた将軍と共に、戦場へ向かったのは、『黄色』の使いすぎで有名なVan Gogh伍長。
そして、将軍とゴッホが目の当たりにしたのは、戦争の実態は、想像を遥かに超えたものだった・・・
とにかく、設定からして、はちゃんめちゃに遊んでしまっている漫画。
『戦場の実態を知るために、ゴッホを第1戦に送る』
という発想もすごいけど、この漫画では、
1890年に死んだことになっているゴッホが生きていて、
彼は、実は、政府の芸術担当の秘密エージェントで、キュービズムの画家を抹殺する任務 『Tempête sur l'art moderne』のため、キュービズム派に潜入したもの、キュービズムに真の芸術を感じてしまい、抹殺するどころか、むしろ手助けをしてしまった。
ゴッホが、この件について口をつぐむをいう事を条件に、当局は、事件をもみ消すために、彼が耳を切って自殺したとメディアに吹聴した。
という事になっているのだけど、
この、はちゃめちゃな、とんでもない発想は、どこから出てくるの?
と、ゲタゲタ大笑いしながら、感心してしまいました。
フロイド博士をおちょくった「Une Aventure rocambolesque de Sigmund Freud - Le temps de chien」を読んだときも、そのはちゃめちゃな発想に、ノックダウンされてしまったけれど、本作は、それを遥かに上まる奇想天外さ。
Manu Larcenet さんの頭の中の構造を見てみたいような気がします。
この作品、そんな、はちゃめちゃな設定を元に、『黄色』や『ひまわり』に絡んだ、お腹を抱えて笑ってしまうギャグを盛り込みながら、軽い調子で始まります。
しかし、お話が進み、主人公らが戦場の悲惨な実態を目にするにしたがって、ストーリーは、がらっとトーンを変え、ずっと深みを見せてきます。
すごい、作品です!
戦争の悲惨さ、戦場の恐ろしさ、兵隊達の苦悩と恐怖、そして、戦争を仕掛けた政治家に対する強烈な風刺を、現実と幻想を織り交ぜながら、ユーモアに乗せて語り、シュールなのに、リアリズムに溢れている漫画。
小説でも、映画でも、ドキュメントでも、表現することの出来ない『戦場』を描いた、鬼作。
小説・映画全てのジャンルを含めて、私が今まで読んだり見たりした、戦争を題材にした作品の中で、トップクラスに入る作品。
鬼才というのは、この様な作品を描く人の事を指した言葉だと痛感しました。
フランス漫画の歴史に残るような傑作、BDファンなら、必読の書だと、私は思いました。
Manu Larcenetの他の著作に関する記事
- 「Une Aventure rocambolesque de Sigmund Freud - Le temps de chien」
- 「Le Combat ordinaire, tome 1」

- 「Le combat ordinaire, Tome 2 :Les quantités négligeables」

- 「Le combat ordinaire, tome 3 : Ce qui est précieux」
- 「Le Combat ordinaire, Tome 4 : Planter des clous」
- 「Congo bobo présente : Guide de la survie en entreprise」
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