Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド

フランスの現代作家の小説、BD(フランス漫画)を中心に、私が読んだフランス語の本を紹介

Romain GaryがEmile Ajarの筆名で発表し大ヒットし、映画化された「これからの人生」の原作

Coup de coeur

la vie devant soi
   「La Vie devant soi 」
 著者 : Emile Ajar(Romain Gary)
出版社 : Gallimard (La bibliothèque)
ISBN-10 : 2070420310
ISBN-13 : 978-2070420315
表装 : ペーパーバック(13x2x18)290頁
 

全体評価  : (4/5)
フランス語難易度 : (3/5)
読みごこち : (3/5)


* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら


1970年代のパリベルヴィユが舞台。

元娼婦で、そろそろ70に手が届こうかという、ユダヤ人のマダムRosaは、色々な事情で子供を手元において置けない娼婦の子供達を預かっている。
子持ちの娼婦達が一番恐れているのは、子供がいる事を当局に知られ、子供を孤児院へと送られてしまう事と、たちの悪いひもに、子供を楯に、恐喝される事。
そんなわけありの子供達が、エレベーターのないアパートの6階のマダムRosaのアパートで、暮らしている。

この小説の語り手は、3歳の時から、ずうっと、マダムRosaと共に暮らしているMomoこと、Mohammed。
マダムRosaは、Momoの生い立ちについては、固く口を閉ざしているので、Momoは、自分ががムスリムで、10歳であるという事以外は、何も知らない。

Momoは、彼が今ひとつ理解出来ない事情で、学校には行っていないが、近所に住む、ヴィクトル・ユーゴの本を宝物のように大事にしている、物知りのアラブ人、Hamilさんから、読み書きを教わった。

学校には言っていないけど、Momoは、大人も舌を巻くような賢さと、可愛い容姿を持っているので、ピガール街の娼婦には、大人気。
そんなMomoと、老いに徐々に身体を蝕まれていく、マダムRosaの物語。


以前に紹介した「Le syndrome copernic」の中で、ちらっと題名だけが出てきた本。

ロマン ガリー(又は、ギャリー)の本は、遥か昔に読んだ事があるのですが、彼が、Émile Ajar のペンネームを用いて書いた、この作品は、未読だったので、どうしても読みたくなり手に取りました。

ダニエル ぺナックの「Malaussène」シリーズの舞台となっている、色々な人種の人々が混ざり合って住んでいるパリベルヴィユを舞台に繰り広げられる、おかしくて、悲しい感動の物語。

マダムRosaは、アウシュビッツに送られた経験があり、人生の辛酸をなめつくしたものの、人間に対する底なしのやさしさを失わず、人種、生まれに係わらず、多くの子供達に愛を注いできた素晴らしい女性。

彼女は、子供達の偽造証明書を作ってまでも、子供を孤児院へ送ろうとする当局や、やくざ者の手から、長年に渡り身体を張って、子供達を守ってきた勇敢で、優しい女性。

だけど、今では、美しかった若い頃の面影が全く失せてしまい、醜く太り、髪の毛が抜け落ちてしまっい、6階への階段を上るのにも一苦労。

そんな、マダムRosaを中心に、

文学造詣が深く、Momoに、色々な話をしてくれたけど、ぼけがはじまりつつある、年寄りのアラブ人Hamil、
マダムRosaに手紙の代筆を頼みに来るベルヴィユでは顔役のやくざ物、
ブーローニュの森で働いている、元ボクサーのセネガル人の心優しいオカマのマダムLola、
社会の底辺に生きるものに優しいまなざしを注ぐ、マダムRosaの理解者である、ユダヤ人医師、Katz

等の人々の姿を交えながら、Momoの人生が語られます。

老い、安楽死、人種、宗教、血の絆、本当の愛とは、そんな思いテーマを盛り込んでいるにもかかわらず、決して暗くならず、説教じみていなくて、時には、可笑しくて、そして物悲しくて・・・と、読者の心をぐらぐら揺すぶる力を持っているスゴイ小説。

人間の尊厳というテーマを上質のユーモアと軽快な語り口で編み込み、香辛料をちょっと効かせた、複雑な舌ざわりのする作品。

お涙頂戴とは程遠いタイプの小説なのですが、読み終わった後、感動のため、あふれ出る涙を止める事が出来ませんでした。

この作品は、1975年ゴンクール賞受賞し、モーシェ・ミズラヒ 監督、シモーヌ・シンヨーレ主演で、映画化され、1997年のアカデミー賞最優秀外国作品賞を受賞しています。(この映画の邦題は「これからの人生」)

この作品は、ペーパーバックの『folio』シリーズにも入っている様ですが、私は、中学4年生(3ème)のフランス語の教材として編集されているガリマー社の『La bibliothèque』シリーズで読みました。
ガリマー社の『La bibliothèque』シリーズでは、作品の読み方の手引きおよび著者解説がついているので、作品をより深く作品を理解したいとお思いの方や、フランスの学校での国語教育の指導法について興味のある方は、こちらの版で読まれる事をお勧めします。

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