グローバリゼーションの弊害がテーマの傑作スリラー
2007-06-19
Coup de coeur
「La Frontière」
著者 : Patrick Bard
出版社 : Points Thriller (Seuil)
ISBN-10 : 2020604388
ISBN-13 : 978-2020604383
表装 : ペーパーバック(11x2x18)384頁
全体評価 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
アメリカ、日本企業をはじめとした、外国企業の下請工場が連立する、アメリカ合衆国との国境近くにある、メキシコのCiudad Juarez で、数年間の間に、合計で53体の女性惨殺死体が連続して発見された。
マドリッドの大手新聞社の記者、Tonio Zambudio は、この、未解決の連続女性惨殺事件の取材のため、Ciudad Juarez に訪れる。
現在、拘束されている容疑者の弁護士、警察関係者、そして被害者の家族等の取材をしていうちに、Zambudioは、『maquiladoras』と呼ばれている外国企業の下請工場で働く、女性労働者のあまりに過酷な労働条件と悲惨な生活条件を目の当たりにし、義憤を感じる。
そして、ある夜、被害者の行きつけのバーを取材するため訪れた、Zambudio は、若い女性と意気投合し、彼女の部屋を訪れるが、その帰りに、悪徳警官から不法滞在者であると誤解を受け、留置所に拘束される。
2日後、以前取材して、顔見知りの警察署長Alfonso Pazosにより、Zambudioは、留置所から救い出される。
この誤認逮捕のスキャンダルが報道されるのを防ぐため、 Pazosは、スクープになるネタをZambudioに提供し、記事が書き終わったらすぐに、スペインへ帰るよう諫言する。
ところが、容疑者が留置所に拘束されているにも関わらず、又、女性の惨殺死体が発見される。
この事件には、隠された裏があると感じ、単独で調査を進めるZambudioは、信じがたい真実と直面する。
メキシコで、実際に起こり、未解決のまま、今日に至っている、女性連続惨殺事件をテーマに書かれたフィクション。
テンポが良くて、展開が早く、読みやすい作品でした。
フィクションだけど、本書に出てくる、『maquiladoras』での労働条件は、事実に基づいているとこの事、読んでいて背筋が寒くなると同時に、怒りがこみ上げて来ました。
コストダウンしか頭になく、自分の国では、罪に問われるような、労働条件の元で生産された製品を平気で購入している企業の経営方針に憤りを感じると同時に、その様生産された製品を知らずに自分が購入している可能性に気づき、苦い思いを味わいました。
『maquiladoras』で働くメキシコ人達の過酷な労働条件を描く一方、外貨獲得しか頭になく、自国の労働者の権利を守ることなど、全く念頭にない、メキシコの政治家達や、汚職が幅を利かせている警察機関を強烈に批判した、社会性の強いサスペンス小説です。
少々堅苦しいテーマを扱っていますが、難しい表現は皆無。
政治的、経済的背景を知らない私のような者でも、筋を追っているだけで、無理なく、メキシコが抱えている経済、そして政治問題が理解できるように、書かれています。
その様な、骨のあるメッセージを含んでいる、とても良く出来たしたサスペンス小説です。
「突拍子もない」、「いくらなんでも・・・」
と形容したくなる、この事件の真相に、リアリズムを感じるか、感じないかは、人それぞれだと思いますが、この作品がグローバリゼーションが第3世界の人々へもたらす弊害を巧妙に織り込み、描かれた傑作スリラーである事は、疑いない事実であると思います。
あ、書き忘れましたが、途中、少しですが、グロテスクな描写が出てくるところがありますので、その手の表現が苦手な方はご注意を・・・
Patrick Bard の他の著作に関する記事






