ルワンダ、ボスニアでのNGOの現地スタッフとしての経験を元に書かれた小説
2007-06-07
「Barnum」
著者 : Pierre Brunet
出版社 : Calmann Levy
ISBN-10 : 2702136400
ISBN-13 : 978-2702136409
表装 : ソフトカバー(14x2x22)251頁
全体評価 :(3/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(2/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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オルリー空港の近郊の母子家庭に育った、主人公Antoineは、大学の美術史学科を1年で中退し、海軍で兵役を終えた後、オルリー空港での荷物運搬人、深夜ラジオのDJ、パリのナイトライフ専門誌の記者を経て、友人達が刊行した、現在社会への問題提起を中心に扱う月刊誌の記者となる。
そして、ルワンダで活動している『Intervantion Directe』という、NGOの記事を書いた事をきっかけに、Antoineは、 『Intervantion Directe』の現地活動に参加するようになる。
そして、Antoineは、ルワンダの難民キャンプで活動した後、一時パリへ戻ったものの、かつての様にパリの生活になじむ事ができず、今度は、内戦中の旧ユーゴスラビアへ向かう。
この作品では、そんなAntoineの目を通して、
虐殺の後のルワンダの難民キャンプの様子、
パリに帰ったものの、かつての様に、パリの生活になじめない、自分に戸惑いを感じる主人公の様子、
ムスリムを殺すことが生きがいの狙撃者達のライフルに怯え、外出する事もままらないボスニア市民の様子、
等々が語られますが、やはり、一番、インパクトが強かったのは、第1章の、ルワンダ難民キャンプの様子です。
虐殺から命を免れたものの、飢えと受けた肉体的、精神的な傷に悩む人々の姿、
そして、少しでも多く配給品にありつこうとこすかない策略をめぐらす、キャンプの責任者の姿や、
整備されていない道路を利用して、配給品をキャンプまで輸送する苦労、
等と重ね、当地で活動しているNGOのメンバー達が催した、アルコールが溢れるパーティーの様子、NGOの他のメンバーと共に主人公が、へ娼婦を買いに行く様子、等が、現地で経験した者にしか語りえない、力強い表現で、描写されます。
裏表紙に書かれている著者の経歴を見ると、おのずから、著者の姿を主人公と重ね合わせてしまいますが、きれい事だけでない、現地の実態がリアルに伝わって来ます。
食料を難民キャンプに届ける任務を優先させるあまりに、一人の男を見殺しにしなければならない事実。
宗教がらみのNGOが、信者へ優先的に配給品を配っている事実。
などのショッキングな事実が、次々明らかにされますが、私が一番憤慨したのは、Intervantion Directeの現地スタッフに、辞表を出すことを決意させた、ボスニアのエピソードです。
カトリック系クロアチア人とムスリムが一緒に住んでいるボスニアの小さな村では、内戦が起こっても、村人達は一致団結していた。
そのため、この村は両軍からの攻撃を受け、村の半分以上の家は破壊されたが、村人の団結は変わらなかった。ある日、ムスリム系のNGOが、村にやってきて、ムスリムの家庭への食糧補給を申し出たが、村人達の団結は変わらず、この申し出を拒否した。
やがて、デイトン(Dayton)の内戦協定が結ばれ、内戦に終止符が打たれた。
そこで今度は、アングロサクソン系のカトリック団体のNGOが村に現れ、カトリックの家族の家の修復を申し出た。そして、村のカトリック教徒は、この申し出は受け入れた。 戦争ですら、村に入り込ませる事が出来なかった、(宗教間の)憎悪が、こうして現在、村にいついてしまった。
フィクションという形を取っているけれど、生の現実を、小説というオブラートに包まず、生々しく語った作品。
実際に、NGOの現地スタッフとして活動した経験がある著者の手による、この作品は、数日現地に滞在しただけのジャーナリストによるルポでは読む事の出来ない、きれいごとだけでない、現地の状況を知る事の出来る、貴重な本だと思いました。





