ブック クロッシング(Bookcrossing)が元で、事件に巻き込まれてゆく初老の男を語ったサスペンス
「L'inconnue d'Antoine 」
著者 : Philippe Huet
出版社 : Rivage
ISBN-10: 274361451X
ISBN-13: 978-2743614515
表装 : ペーパーバック(11x1x17)220頁
全体評価 :(3/5)
フランス語難易度 :(4/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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ジャーナリストを引退した、60歳になるFred Delmanyが、この作品の主人公。
2度の結婚は破綻し、子供達は、自立しているため、しがらみのない、Fredは、手持ち無沙汰な毎日を送っている。
ある日、Fredは、公園のベンチにペーペーバックを置き忘れてしまう。
取りに戻った所、ベンチには、若いカップルが座っており、女性の手には、彼が置き忘れた本があった。
本を取り戻すことをあきらめたFredは、その場を立ち去り、この出来事を友人のMaxに告げる。
Maxは、Fredに、自分が気に入った本を、駅や公園のベンチ、列車の座席など、公共の場に故意に『置き忘れて』、未知の人に紹介する、『Bookcrossing』というシステムがアメリカで流行し、ヨーロッパでも広まりつつあると、Fredに説明する。
そう、意図せずに、Fredは、『Bookcrossing』していたのだ。
そして、Fredは、彼のMacBainのペーパーバックの運命と、その本を手にした女性について思いを巡らせた。
それから数日後、Fredは、今度は、特別の思い入れがある、Blondin の、『L' Humeur Vagabonde』を、ベンチに置き、立ち去る。
物陰から、この本が誰に拾われるか、伺っていたFredは、ある女性が本を手にし、数ページを読み、本を持って立ち去っるのを目にし、この女性の後をつけてずにはいられない衝動に駆られる。
フランスでも、数年前から話題になり始めた、『Bookcrossing』が、ストーリーに大きく係わってくる、スリラー。
『Bookcrossing』という、本好きには、読み逃すことの出来ない、とっても魅力的な題材をメインにすえたミステリー小説です。
もし、私が『Bookcrossing』するんだったら、どの本を選ぼうかしら?
なんて、考え始めたら、それだけで、数時間つぶれてしまいそうです。
さて、肝心の作品についてですが、この魅力的なテーマをうまく調理して、偶然と誤解が重なって、退屈すぎた人生が思わぬ方向へと進路を変えてゆく様子を描いた作品。
初老に足を踏み入れた主人公の微妙な心理をはじめ、作中人物の心理描写に、ふくらみがあり、筋、プロットを追うばかりのミステリーとは一線を画した作品となっています。
現役ジャーナリスト生活から離れ、手持ち無沙汰な主人公が、ちっぽけなロマンを求めて、彼が『Bookcrossing』した本を手にした女性を尾行するに至る心理を、彼の日常にかれめて語った前半は、ミステリーというより、普通の小説タッチ。
だけど、後半に入ると、作品は、一気に、ミステリータッチに展開。
前半部分で状況説明と、作中人物の心理状態の説明が、しっかりなされているので、後半の展開が非常に説得力のあるものとなっています。
ネタばれになってしまうので、あまり詳しく書けないのが残念なのですが、ストーリーやプロットだけでなく、登場人物の心理面にも、重点を置いた、手堅く構成されたミステリーだと思いました。
この手の作品は、尻つぼみになってしまうことが往々にしてあるのですが、ラストが締まっているので、充実した読後感を得る事が出来ました。
日常お目にかかる機会が少ない、単語が出てくるので、フランス語難易度は、難しめになっていますが、全体的には読みやすかった作品です。





