真実の多面性を切り取った、フランス現代小説家による秀作
2007-03-31
Coup de coeur
「Un minuscule inventaire」
著者 : Jean-Philippe Blondel
出版社 : Robert Laffont
ISBN-10 : 2221104420
ISBN-13 : 978-2221104422
表装 : ソフトカバー(14x3x22)297頁
全体評価 :
フランス語難易度 :
読みごこち :
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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妻が二人の子を連れて、他の男の元に走ったため、一人っきりになった主人公Antoineは、家にある不要なものをフリーマーケットで売り、過去と決別をつける決心をする。
111番のスタンドを割り当てられたAntoine。
彼のスタンドに客が訪れ、彼らが品物に触れるたびに、その物にまつわる過去の忘れかけていた記憶がAntoineの脳裏に蘇る。
銀メッキのイヤリング、青いラインの入った白い表紙の小説本、黄色いウールの毛布、白地に青の縞の入った帽子、赤い額縁、赤青黄色の三色のハンモック、金色の鉄の灰皿、金色の細かい模様の付いた万年筆、
それらの古い物が、主人公を過去へと誘ってゆく。
この作品は、
古い品物の売り手である主人公が、自分の置かれている状況を説明する「Une annonce」、「Un Stand」
品物にまつわる思い出を語る「Objets perdus」
その品物を、買った人達にまつわる話を語る「Objets trouvés」
そして、フリーマーケットが終わった後の主人公を語った「Un début」
の5部に分かれています。
初めの3部を読んでいたときは、人の心の動きを機敏に綴った、まあまあ面白い作品だけど、何か足りないという感じを抱いていたのですが、
「Objets trouvés」を読むと、作品に対する印象がガラット変わります。
『人間の記憶は真実の一面のみを写しているものでしかない、肝心な事は何にもわかっちゃいないのかもしれない』
という、真実の多面性が見えてきて、胸をえぐられるような思いを味合わされます。
自分と人生を交差させた人たちが、自分の知らないところでそれぞれの苦悩や重荷を抱えて生きている、そんな人生の残酷さを垣間見せてくれる、秀作でした。
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