うつ状態の主人公から見たパリを書いたフィリップ クローデルの中編小説
2007-03-26
「J'abandonne」
著者 : Philippe Claudel
出版社 : Folio (Gallimard)
ISBN-10 : 2070418030
ISBN-13 : 978-2070418039
表装 : ペーパーバック(11x1x18)111頁
全体評価 :(3/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
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パリで、臓器コーディネーターを職業としている男がこの中編小説の主人公。
主人公は、交通事故で亡くなった17歳の少女の母親に臓器移植の承諾の依頼をすることに躊躇いを感じずにはいられない。
彼には、生後21ヶ月になる娘がいるが、出産の際に、彼の妻はこの世を去ってしまい、うつに陥っている彼には、娘が唯一の生きるささえとなっている。
メトロの下着の広告の写真、
セリーン ディオンのレコード、
ピアスをあちこちつけていて、ジャンクフードとハード・ラップが好きで、ローラーブレードで、パリを駆け巡るベビーシッター、
一夜を共にした、だらしないけれど気のいいバーのウエイトレス、
他人の痛みに無関心な俗物的な同僚、等々
そんな、日常に目にする何気ないはずの些細なことが、彼の心を傷つけ、彼を少しづつ、袋小路へと追い込んでゆく。
そんな様子を主人公のモノローグのみで、描写した作品。
フィリップ クローデル氏の作品を読むのは、これで4作目。
毎回、彼の著作を読むたびに驚かさせられるのは、作品の多彩さ。
この中篇小説は、これまで読んだ彼の作品と違うタイプの作品でした。
フィリップ クローデル氏 は、読み度に、タイプの違う作品に出会うことができる、希有な作家だと思います。
普通の人なら見落としてしまう、そんな何気ない風景が、うつ気味の主人公の心に棘を指し、彼の心を荒立ててゆく様子が、純真で、幸せの象徴のような赤ん坊の様子と並行して、読者に語りかけられます。
私は、このような心理描写のみの暗い作品は、心がすさんでしまうような気がして、なかなか、最後まで読みきることが出来ないのですが、さすが、フィリップ クローデル、過去と現在をうまく交差させた作品構成になっており、読者を最後のページまで、惹きつけて離しません。
主人公の行き所のない、追い詰められてしまった気持ちが、びんびんと伝わってきて、切ない気持ちになってしまった作品ですが、普通に生活していると気がつかないで通り過ぎてしまう現在社会の病んだ部分を、詩的に表現した作品です。
この小説、章に分かれていないので、フランス語の本を読みつけていない人には、そこのところ、少々読み辛く感じられるかもしれませんが、一節の長さは長くないし、読みやすい文体で書かれているので、読みやすさの評価は、


(3/5) になっています。この作品は、2000年のフランス・テレヴィジョン賞を受賞しています。
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