Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド

フランスの現代作家の小説、BD(フランス漫画)を中心に、私が読んだフランス語の本を紹介

ルノドー賞受賞作家フィリップ クローデルの小説


cent regrets
   「Quelques-uns des cent regrets」
著者 : Philippe Claudel
出版社 : Pocket
ISBN-10 : 2070315045
ISBN-13 : 978-2070315048
表装 : ペーパーバック(11x2x18)180頁


全体評価  : (4/5)
フランス語難易度 : (3/5)
読みごこち : (3/5)


* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら



中年を過ぎたと思われる男がこの小説の主人公。
母親の死の知らせを受けた主人公は、生まれ故郷の小さな村に帰ってくる。
故障したバスから、下ろされた主人公は、夜道を一人歩きながら、少年時代を過ごした村にに足を踏み入れる。

人気のないホテルに3日間、居を定めた主人公は、うらびれた村を彷徨いながら、幼い日々を回想する。

母親と二人っきりで過ごした、決して裕福ではなかったけれど、幸せだった日々。村人たちとの思い出、家計を助けるために、市場で働いた思い出などが、現在の寂れた村の様子と共に主人公の目の前を横切ってゆく・・・
そして、母を見捨てて、この町を去ることになった忘れることの出来ない、あの日の思い出が、主人公の脳裏に浮かぶ。


以前にこのブログで紹介した「La petite fille de Monsieur Linh」の著者、
フィリップ クローデールの第2作目の小説
「La petite fille de Monsieur Linh」
と同じように、静かだけど、心にしみこんでゆくような文体で、著者の生まれ故郷のロレーンヌ(Lorraine)地方を思わせる、フランスのうらびれた村の様子が淡々と語られていきます。

ラストにかかるまでは、淡々と、平坦にストーリーが進行してゆくので、ワクワクする、起伏のある作品を期待しながら読んでいた私は、作品を読みながら、何度か、途中でこの本を投げ出したくなりました。
もしかして、「La petite fille de Monsieur Linh」
を読む前にこの作品を読んだら、半ばで挫折したかもしれません。
気の短い私には、読み続けるのが、時折しんどく感じられた本でした。

でも、どうして、主人公が母親を捨て、村を離れたのかが明らかになるラストを読むと、この延々と続いた主人公の回想と現在の村の描写が全く、別の意味を持って、読むものの心に響いてきます。

心を絞られる、そんな感じがする作品。

... les coquillages, quand ils se blessent dans la mer, pour calmer leur blessure et la guérir, ils font de belles perles tout autout, des perles toutes moirées, de vrais trésors qui possédent le souvenir, la mémoire de la blessure... Eh bien nous autres les hommes, quand on se blesse, ou qu'on blesse quelqu'un, nos perles à nous, ce sont les regrets, on se fabrique de beaux regrets,


「....海の中で、貝は傷つくと、傷を和らげ、癒すために、傷の周りに美しい真珠を作り出す。 きらきらと輝き、思い出と傷の記憶を封じ込めた本物の宝物の真珠を作るんだ。
だけど、俺達人間は、傷ついたり、誰かを傷つけたりする度に、俺らが作り出す真珠は、心残りなのさ、俺らはたいそうな心残りを作るんだ」



と、ラストで主人公が、ホテルの主人に対して、頭のおかしい叔父さんから聞いた伝説を語る下りでは、涙がこぼれました。

こんなに重く、暗いテーマを扱っているにも係わらず、ささくれだった心をやわらげてくれる、そんなメロディーを連想させる作品。

他人の痛みを自分の痛みのように感じうることの出来る者のみが書く事のできる、慎み深く、繊細で、やさしさにあふれた作品です。

この作品を読んだことで、これから、もし、辛い事に出合ったとしても、今までと違った姿勢で、人生に立ち向かってゆけるような気持ちになりました。

もしかしたら、辛い時に、この本の一節が、あなたの支えになるかもしれない、そんな強さが封じ込められた本です。

私は、個人的には、とても良かったと思った本ですが、好みが分かれるタイプの本だと思うので、お勧めマークは、あえて付けませんでした。
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私が実際読んでみて感じたままに、独断と偏見で評価しています。
もし、あなたの評価と違ったらごめんなさい。m(_ _)m


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