Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド

フランスの現代作家の小説、BD(フランス漫画)を中心に、私が読んだフランス語の本を紹介

2006年高校生が選ぶゴンクール賞受賞作品


contour du jour
   「Contours du jour qui vient」
 著者 : Léonora Miano
出版社 : Plon
ISBN-10  : 2259203965
 ISBN-13  : 978-2259203968  
表装    : ソフトカバー(13x2x20)275頁


全体評価  : (4/5)
フランス語難易度 : (3/5)
読みごこち : (3/5)


* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら



この小説の舞台は、アフリカの架空の国Mboasu。
9歳の先天性の血液病を持つMusangoという少女は、両親に囲まれ、幸せな日々を送っていたが、父親の死により、彼女の人生は、180度展開する。Musangoの父には、彼を棄て愛人の元に走った妻がいたのだが、彼女の事をあきらめる事の出来ない父は、Musangoの母、Ewenjiを、籍に入れていなかったため、Ewenjiは、Musangoの父の死と共に全てを失う。

Ewenjiは、手に職がなく、頼ることの出来る家族もいないのに、Musangoの病気のため、、5日に1回、彼女を病院に連れて行き、高価な治療を受けさせなければならない。考えあぐねたEwenji は、妖術師Séséに相談を持ちかける。

彼女の身に降りかかった全ての不幸は、Musangoに取り付いている悪魔のせいだ、というSéséの言葉を信じた母親は、悪魔を彼女の身体から追い出すために、彼女を折檻するが、彼女の暮らし向きは一向に改善しない。

ある日、切れたEwenjiは、Musangoを、焼死させようと試みるが、Séséに、

もし、Musangoを殺したら、悪魔は家の他の者の身体に棲みつく

と言われたため、Ewenjiは、Musangoを家から追い払う。

裸で、家から追い出されたMusangoは、ひとりで、町を彷徨っていところを、Ayané という孤児の世話をしている女性に引き取られるが、Ayané の施設は、暴徒の攻撃に合う。

Ayané 達の機転から、それを逃れることが出来たものの、Ayanéの保護から離れたMusangoは、キリスト教会の影にかくれて、若い女性をフランスへ娼婦として送り出す商売をしている男達が、出発前の女性を隠している人里離れた隠れ家に囚われ、無給の女中として働かされるようになる。

そして、2年後、男達の隙を着いて、Musangoは、この隠れ家から、逃げだそうとする。


2006年の高校生が選ぶゴンクール賞、受賞作品。
フランスの大手チェーン書店、FNACが主催のこの賞は、毎年、ゴンクール賞の選考対象の作品の中から、高校生の選考員が受賞作選ぶという趣向になっていますが、ゴンクール賞の受賞作品と一致することは、あまりないようです。
選考員と出版関係者の人間関係や、文学的価値が選考に重要な役割を果たすゴンクール賞受賞作品よりも、高校生のゴンクール賞受賞作の方が、「ずばり面白い」作品が多いと、言う人もいるようです。

テレビ番組や、雑誌のルポで、お目にかかる、のんびりしていて、野生動物が自然を謳歌していいるアフリカとは、全く違った、暗黒大陸という表現がぴったり来るような、呪術、狂気、汚職、、貧困、暴力が氾濫する現在のアフリカの一面が、Musangoの軌跡を通して、重厚な表現で描かれます。

不幸の原因、生活苦の不満を、一番弱いものに押し付ける醜い人々の姿を描きながら、著者は特に、この狂気の一番の犠牲者は、子供達であることを、強調します。

紆余曲折を得て、Musangoは、村人から「人の魂食い」の汚名を着せられ、村八分になった老婆と出会います。 言葉少ないこの人生を達観した老婆から、Musangoは、人生に対して新たな姿勢で立ち向かってゆく事を学び、自分を虐待した母親を探すことを決心します。

著者は、この作品について、

Pour moi, Musango est l'incarnation d'une génération d'enfants africains un peu livrés à eux-mêmes, qui doivent se construire sans modèle et qui vont devoir trouver en eux les ressources pour se projeter dans l'avenir. Cette maman un peu en crise qui chasse son enfant est une image d'une Afrique à la dérive, qui ne sait plus quel avenir proposer à sa jeunesse et qui ne sait plus aimer ses petits, très simplement.

私にとって、ムサンゴは、誰にも面倒をみてもらえず、お手本なしで自己形成し、未来に立ち向かってゆくエネルギーを自分自身の中に見つけなければならない、そんなアフリカの子供達の世代を象徴しています。 少々、ヒステリー気味の、自分の子供を追い出すこの母親は、若い世代に、どんな未来を示していいのかわからない、又は、ただ単に、自分の子供すら愛することすら出来ずに、悪い方向へと向かってゆくアフリカを象徴しています。

と、語っているように、この小説は、母親と娘の葛藤を通して、現在のアフリカが抱えている問題点にスポットを当てている作品です。

全体的にとても暗いトーンで書かれた作品。
又、血液の遺伝病を患っていたはずの少女が小説の後半になると、発作を起こさず、コロリと健康体になってしまったりと、納得が行かないところもありましたが、多くの困難を乗り越える事により、憎しみを乗り越えた、一人の少女の生き様を書いた力作です。

母親と娘の関係という面では、現在の先進諸国にも、共通するところがある作品だと思いました。

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