2005年06月15日 (水) | 編集 |
「La grande mutation」
著者 : Adama Coumba Cisse
出版社 : L'Harmattan
アフリカの小さな村を治める Yougo の唯一の悩みは、最愛の妻 Céréeに子供が出来ない事。
Céréeは、呪術師に子供が生まれる様、術をかけてもらいます。
念願かなって、生まれた子供は、村の他の子供達と、フランス人が作った学校へ通うことになります。
この本の裏表紙によると、著者は、セネガル出身で、現在、L'Association démocratique des Français à Etranger のWabundé 支部の会長を勤めているそうです。
祖先から伝わる慣習が全てを支配していた、アフリカの村が、ヨーロッパの文明の影響を受け、次第に変わって行く、様子を描いたフィクションです。
フランス人の学校で、教わった事を、子供たちが村に持ち込み、大人たちの古い観念を打ち壊し、新しい村を築いていく様子が描かれます。
著者は、この作品を通して、アフリカの村がこうなって欲しい
という希望した理想の姿を描いているみたいです。
でも、この本の作中人物が皆、物分かりのよすぎるのに、私は、とても、物足りないものを感じました。
自分が今まで信じ続けていた事が間違っていると認めるのは、とても難しい事なのに、ただ、単に、子供が説得しただけで、作中人物は、皆、簡単に、考えを変えてしまいます、
おまけに、彼らの内部の葛藤の描写が皆無。
現在のフランスにすっかり溶け込んでいるアフリカ系のフランス人家庭に育った女の子が、ヴァカンスで、両親の生まれ故郷に帰った折り、本人意志を全く無視して、結婚させられてしまう例が、後を経たないという現実を目の前にしているだけに、
こんなに、うまく行くはずないのに?
という思いが、何度も頭の中を駆け巡りました。
又、フランスの植民地支配による、利点のみが延べられていて、その弊害について、全く言及されていないのにも、大いに不満が残りました。
教養のない、フランス人がこれを読んだら、フランスのアフリカの植民地支配は、全く正当なものだった、感謝されて同然、後ろ指さされる事は絶対ない、と勘違いしてしまいそう。
現在、フランスのアルジェリアの植民地政策がを「有益な所もあった」
と教科書に、明記する事を制定する法律が、国会で、審議され、一部のアルジェリア人の批判を招いている時に、アフリカ出身の作者により書かれたこんな片手落ちの本が、近代アフリカの歴史を知らないフランス人の目に止まるのは、ちょっと問題なんじゃないかしら? と思いましたね。
ヨーロッパ人に向けて書かれたというより、古い因習にとらわれている、アフリカの村に住む人々の視野を広める事を目的として、書かれた本、という印象を受けました。
この記事は、2005年6月15日に、Yahooブログ「フランス読書日記」にアップしたものを、
「フランス読書日記」の閉鎖に伴い、本ブログに転載したものです。
著者 : Adama Coumba Cisse
出版社 : L'Harmattan
アフリカの小さな村を治める Yougo の唯一の悩みは、最愛の妻 Céréeに子供が出来ない事。
Céréeは、呪術師に子供が生まれる様、術をかけてもらいます。
念願かなって、生まれた子供は、村の他の子供達と、フランス人が作った学校へ通うことになります。
この本の裏表紙によると、著者は、セネガル出身で、現在、L'Association démocratique des Français à Etranger のWabundé 支部の会長を勤めているそうです。
祖先から伝わる慣習が全てを支配していた、アフリカの村が、ヨーロッパの文明の影響を受け、次第に変わって行く、様子を描いたフィクションです。
フランス人の学校で、教わった事を、子供たちが村に持ち込み、大人たちの古い観念を打ち壊し、新しい村を築いていく様子が描かれます。
著者は、この作品を通して、アフリカの村がこうなって欲しい
という希望した理想の姿を描いているみたいです。
でも、この本の作中人物が皆、物分かりのよすぎるのに、私は、とても、物足りないものを感じました。
自分が今まで信じ続けていた事が間違っていると認めるのは、とても難しい事なのに、ただ、単に、子供が説得しただけで、作中人物は、皆、簡単に、考えを変えてしまいます、
おまけに、彼らの内部の葛藤の描写が皆無。
現在のフランスにすっかり溶け込んでいるアフリカ系のフランス人家庭に育った女の子が、ヴァカンスで、両親の生まれ故郷に帰った折り、本人意志を全く無視して、結婚させられてしまう例が、後を経たないという現実を目の前にしているだけに、
こんなに、うまく行くはずないのに?
という思いが、何度も頭の中を駆け巡りました。
又、フランスの植民地支配による、利点のみが延べられていて、その弊害について、全く言及されていないのにも、大いに不満が残りました。
教養のない、フランス人がこれを読んだら、フランスのアフリカの植民地支配は、全く正当なものだった、感謝されて同然、後ろ指さされる事は絶対ない、と勘違いしてしまいそう。
現在、フランスのアルジェリアの植民地政策がを「有益な所もあった」
と教科書に、明記する事を制定する法律が、国会で、審議され、一部のアルジェリア人の批判を招いている時に、アフリカ出身の作者により書かれたこんな片手落ちの本が、近代アフリカの歴史を知らないフランス人の目に止まるのは、ちょっと問題なんじゃないかしら? と思いましたね。
ヨーロッパ人に向けて書かれたというより、古い因習にとらわれている、アフリカの村に住む人々の視野を広める事を目的として、書かれた本、という印象を受けました。
この記事は、2005年6月15日に、Yahooブログ「フランス読書日記」にアップしたものを、
「フランス読書日記」の閉鎖に伴い、本ブログに転載したものです。
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