為替投機に関する問題をミダズの伝説になぞらえたフランス漫画「パンドラボックス第5巻」
2006-12-15
Coup de coeur
「Pandora Box, Tome 5 - L'avarice」
ストーリー : Didier ALCANTE
作画 : Erik Juszezak
着色 : USAGI
出版社 : Dupuis
ISBN-10 : 2800137452
ISBN-13 : 978-2800137452
表装 : ハードカバー(24x1x30)48頁
全体評価 :(5/5)
ストーリー :(5/5)
絵 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
神の様に、相場の動向を読むことが出来ると評判の、Midas Management Fundの社長、John Midasが今回の投機の対象として選んだのは、大統領選挙のキャンペーン真っ只中のブラジルの貨幣、レアル。
自分の思惑通り、レアルの値を操作しようと、画策した、Midas には、ブラジルで、貧しい農民に資金を貸すマイクロクレジット(信用貸付)機関で、働いている一人娘がいた。
パンドラボックス第5巻のタイトルは、「L'avarice (強欲)」 で、元になっているギリシャ神話は、黄金が大好きで、「自分の触れるものを全て黄金に変えてほしい‥」という願いをアポロンに叶えてもらい、パンや飲み物、そして、しまいには、愛娘まで黄金に変えてしまったミダスのお話です。
そして、今回は、厳密にはテクノロジーではないのですが、テクノロジーとして「為替投資」が、取り上げられています。
この「Pandora Box」シリーズのシナリオを全巻担当しているAlcante氏は、経済学部を卒業し、現在、エコノミストと、BDのシナリオ作家との二束わらじを履いているそうです。
そんな、経済に精通しているAlcante氏による、この第5巻は、BDの域を遥かに超えた、経済小説的なスケールを持つ作品に仕上がっています。
主人公Midasが仕組んだ為替操作のからくりを中心として、ストーリーが構成されているため、かなり、説明的なテキストが多くなっています。
そのため、漫画化を担当した、Juszezah 氏も、かなり苦労している様子が、伺われますが、為替投機に、一喜一憂する人々の興奮と、市場の盛り上がり等、が良く伝わって来きました。
私は、株式・為替市場に関する知識が皆無で、先物取引の基本的な仕組みすら知らなかったので、Midasが実際に行った為替相場の操作について、作品を読んだだけでは、完全に理解出来ませんでしたが、ストーリーを堪能する妨げにはなりませんでした。
一人の倫理観のないトレーダーが、自分が利益を得るためには、一国の経済を目茶目茶にするのも厭わない様子が、具体的な例を挙て、説明されています。
作品を通して、株・為替取引が、世界的な政治・経済へ与える影響、弊害等について理解が深める事が出来るので、楽しみながら、賢くなれる、一石二鳥の作品です。
でも、先物取引に関する、簡単な説明を、ストーリーの中に織り込むか、それが無理ならせめて、第3巻の様に、頁の下の方に注でも、付けてくれたら、私の様に、経済用語に疎い読者も、すっきりと理解出来る作品になったのにと、そこのところちょっぴり、残念に思われました。
現在の世界中の政治家の事を思う浮かべると、ストーリーは、ちょっと理想に走りすぎている傾向がありますが、残酷だけど、とても素敵なストーリー。
ラストを思い返すと、今でも涙が出てきます。
おまけに、主人公のMidasは、私好みの、渋くて中々いい男に描かれていたので、大満足。(*^.^*)
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