ドーピングの問題をトロイの神話になぞらえたフランスの漫画「パンドラボックス第2巻」
2006-12-12
Coup de coeur
「Pandora Box, Tome 2 : La paresse」

ストーリー: Didier ALCANTE
作画 : Vujadin RADOVANOVIC
着色 : USAGI
出版社 : Dupuis
ISBN-10 : 2800136286
ISBN-13 : 978-2800136288
表装 : ハードカバー(24x1x30)48頁
全体評価 :(5/5)
ストーリー :(5/5)
絵 :(4/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(3/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
100 メートル走で、3回も世界新記録を更新した Paris Troy 選手は、腿の故障のため、一時、陸上競技から、遠ざかっていたが、故障から完全に回復し、イスタンブール・オリンピックに向けて、練習を積んでいた。
Paris が休んでいる間、100 mètres走で、優勝を収めたAce Achean選手は、自分は、Paris を破り、オリンピック金メダルを獲得する自信があると吹聴していた。Ace Achean選手は、恋人をParis に取られた事から、Parisを目の敵にしていた。
又、Paris のエージェントから、
現在Paris Troy をコマーシャルに起用しているメーカーが、Ace Achean選手を新たに起用することを検討中であるが、Paris がオリンピックで優勝すれば、莫大な契約金で契約更新をする事が出来る
という情報がParis の耳に入る。
怪我は完治したものの、自分の体に何かしっくりとしないものを感じ、思ったように、練習に熱が入らないParis に、彼の兄Hectorは、Hydrolernolという、現在行われているドーピング検査では、見つかる事のなり、ステロイド剤を彼に供給できるとほのめかす。
Hectorは、かつて、Parisと同様の陸上選手だったが、ドーピング検査で陽性の判定が出たため、陸上競技を断念した過去があった。
このパンドラボックスシリーズの第1巻のタイトルは「Paresse (怠惰)」 で、スパルタの女王ヘレンに恋し、彼女を奪ったたため、戦争を引き起こしたトロイの王子のパリスの神話が下敷きとなっており、取り上げられているハイテク技術は、スポーツ選手のドーピングです。
クラシックなBDの手法を用いて描かれた作品。
一見すると、日本の漫画だったら絵で表現するところを、ごちゃごちゃした台詞で、読者に説明している、私がとても苦手なタイプの漫画なので、「かったるいなぁ」と思いながら、読み始めたのですが、ストーリーがとてもいい上に、読み心地もそれ程悪くなので、あっという間に読み終わってしまいました。
スポーツ選手の体、そして表情の描き方などに、漫画家の才能が溢れているだけに、ParisとHectorの葛藤部分などの、テキスト部分をもっと凝縮して、効率のいいレイアウトにしたら、作品のレベルがアップしたのに・・・と、少々残念な気がしました。
漫画化の仕方には、ほんのちょっぴり、文句を付けたくなる所が多少あるのですが、ストーリーに関しては、文句なしの作品です。
作品では、ドーピングのステロイド剤が、トロイの木馬の役目を果たしますが、ギリシャ神話を、巧妙に現在に、置き換えたそのストーリー構成には、優れたストーリーテラーの才能が感じられます。
又、長い間「ずるする事」を拒否していたいたスポーツ選手が、外部からの色々なプレッションを受けて、ドーピングに走らずにはいられなくなるまでの心理が良く、表現されていました。
又、意表をついた後半のストーリー展開も、見事。
ラストには、言葉を失いました。
関連記事






