不可解な人間という存在を描いた傑作フランス漫画
2006-11-25
Coup de coeur
「Le combat ordinaire,Tome 2 :Les quantités négligeables」
著者 : Manu Larcenet
出版社 : Dargaud
ISBN-10 : 2205055895
ISBN-13 : 978-2205055894
表装 : ハードカバー(24x1x32) 48頁
全体評価 :(5/5)
ストーリー :(5/5)
絵 :(4/5)
フランス語難易度 :(1/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
田舎の1軒家で、恋人のEmilie と一緒に暮らし始め、港で働く労働者の写真の展示会の準備にかかり、なんとか社会復帰をした Marco。
そんな彼に、彼の父親は、Marcoに自分がアルツハイマー病にかかっている事を告白する。
港で働く労働者の写真撮影の折、出合った幼馴染が、生活苦のため、外国人排除をスローガンとして掲げる超右翼の政党に、賛同した事を知り、Marcoはショックを受ける。
又、彼は、偶然、写真展の準備のため出合った人々の裏表のある態度を垣間見てしまう。
虚偽と矛盾に満ちた人間世界で、戸惑いながらも、なんとかやって行こうとするのだが、Marcoは、神経性発作を起こし、倒れてしまう。
アングレム国際漫画フェスティヴァルで最優秀賞を獲得した「Le combat ordinaire, Tome 1」の続編。
嘘や偽善を許すことの出来ない一本気の持ち主で、かつ繊細で神経質な主人公Marcoの目から見た、虚偽と矛盾に溢れる社会を読者の目に刻みつけながら、そんな世界に暮らしている、不可解な人間という存在に、鋭くメスを入れた作品です。
登場する人物は皆、子供向きのアニメに出てくるキャラクターのように、可愛く描かれているので、一見すると「可愛い子供向けのお話かしら?」と、思いがちなのですが、お子様ランチとは程遠い、大変深く考えさせられ、センシビリティーに満ちている、大人向けの作品です。
普通のBDのように、ただ、ストーリーを追って絵を描いて行くのではなく、主人公の感情や心の動きなどが読者に伝わるように、工夫して、レイアウトが構成されているので、まるで映画を読んでいるような感覚を受けました。
この作品に出てくるエピソードは、どれもこれも、現在社会で生活して行く上で誰もが、実際に直面する問題です。
そんな問題に対して「仕方がない」とか「大人なんだから・・・」と、割り切る事が出来ず、かつ、それに対して表に立って強く抗議することも出来ない、繊細でデリケートな主人公の気持ちがキリキリと伝わって気ました。
第1巻目も悪くなかったけど、私にとって、この第2巻目のストーリーには、第1巻目より、私の経験に重なるところがあり、共感度が1巻よりぐーんと上がりました。
人間の内面まで突っ込んで描かれたBDが少ない中、この作品が多くのフランス人の評価を受けているというのが納得できました。
お子様ランチのBDや、ストーリーのみを追うBDも面白いけれど、時には人間の内面、そして、人間関係に対して、しんみり考えたいとお思いの方にお勧めしたい作品です。
Manu Larcenetの他の著作に関する記事
- 「Une Aventure rocambolesque de Sigmund Freud - Le temps de chien」
- 「Une aventure rocambolesque de Vincent Van Gogh : La ligne de front」

- 「Le combat ordinaire, Tome 1」
- 「Le combat ordinaire, tome 3 : Ce qui est précieux」
- 「Le Combat ordinaire, Tome 4 : Planter des clous」
- 「Congo bobo présente : Guide de la survie en entreprise」
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