現職医師が描いた医師が主人公の漫画短編集
2006-11-20
「Bonne santé」
著者 : Charles Masson
出版社 : Casterman
ISBN-10 : 2203396318
ISBN-13 : 978-2203396319
表装 : ソフトカバー(18x2x24) 190頁
全体評価 :(4/5)
ストーリー :(4/5)
絵 :(1/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごこち :(4/5)
* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら
耳鼻科外科医兼、漫画家の、Charles Masson氏が、医師の日常をテーマにして書いた白黒漫画。
恋人から「嘘つき」とののしられ、「そう、俺は大嘘つき」と、主人公の医者が
初めて患者に対して嘘をついたインターン時代を回顧する話、
農家へ、患者を訪問に行く医師の『スリッパ』に関するモノローグ。
裸のまま、服を着るのも忘れ、自分が手術した患者の事について、悶々と自問を繰り返す外科医の話、
手術中に患者に麻酔をかけるのは、手術中に外科医が交わす、下品で限りなく程度が低いジョークを患者に聞かせないためかも・・・という、知らざる外科医の1面を暴いた話、
患者の命を救うことは出来ないけれど、そのまま死なす事は出来ないため、何度も手術を繰り返すことを疑問に思う女性外科医の話、
「あんたの漫画は暗い話ばかり、幸せな話はないの?」
との、編集者からの希望により、著者が選んだ話。(全然明るくない)
以上の医師が主人公の6篇の短編漫画が収録されている作品集です。
各漫画の間には、1ページ程度の、コント風なテキストが挿入されています。
このテキストは、新年に病室を訪れた医師が患者たちと交わす会話なのですが、かなりきついブラックがかかっています。
ページをバラバラとめくってみて、得た私の第1印象は、決していいものではありませんでした。
繊細さとは程遠い、かなりくせの強い、素朴なタッチの白黒の絵、この作品の書評を読んでいなかったら、決して読む気になれなかったタイプの本です。
だけど、読んでみると、なかなか鋭い視点で書かれたすぐれた漫画である事にすぐに気がつきます。
普通、医者によって書かれた作品は、どれも、患者を一段上に立って見下ろしながら、書いてあるのだけど、この漫画は、それと違い、医者も患者と同じ弱い人間なんだ、という事実を前面に押し出し、患者と同じ目線から、医師という存在を語っているところが、すごくいいと思いました。
又、フランス人らしく、どのエピソードも、医者という仕事、そして患者達の関係を、斜めにみて書いてあります。
どことなくブラックがかかっていて、ちょっと皮肉なオチがついているにもかかわらず、読み終わった後、著者のやさしい心が伝わってくる不思議な風味の作品です。
珠玉の感動作なんて、そんな破廉恥なものは描けないもんね・・・という著者の声が、どこからともなく聞こえてくるような気がしました。
だから、医者によって書かれた、他の小説、漫画とは、全く趣の違った作品。
正統派の医療漫画、又は、医者又は、病院に対する知識を深めたい、又は、病気と闘う医師を患者を書いた感動の作品などを期待している人には絶対にお勧めできません。
だけど、実物大のフランスの医師の姿を知りたいと思っている人、又、将来医師になろうと思っている人には、必読の書だと思いました。
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