Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド

フランスの現代作家の小説、BD(フランス漫画)を中心に、私が読んだフランス語の本を紹介

夫の浮気に揺れる妻を中心にフランス家庭をクールに書いた小説


hubble
   「La constante de Hubble」
 著者 : Stéphanie Janicot
出版社 : Lgf
ISBN-10 : 2253114901
ISBN-13 : 978-2253114901
表装 : ペーパーバック(24x1x32) 84頁
 

全体評価  : (4/5)
フランス語難易度 : (3/5)
読みごこち : (4/5)


* 上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい
* この表の見方はこちら



新進企業の経営者をに持つJulietteは、12歳の長女Justine、生意気盛りの10歳になるFabrice、おねしょ癖が治らない6歳の Albertine の4人の子持ちの専業主婦。彼女は、帽子作りを趣味とし、優雅な毎日を送っていた。

ある日、Juliette が自宅で、Julietteの従妹でフェミニストの女性弁護士 Alma と親友のアーティスト Louise とお茶を飲んでいるところ、Théo という女性が彼女の家へ駆け込んでくる。
Juliette の Thomas の企業に勤める彼女は、Thomas と4年越しの不倫関係だったが、Thomas が女性の同僚を出張に連れて行った事から、キレて、Juliette の所へ、今までの関係を暴露しに来たのだった。

おっとりとして、人を疑う事を知れない Juliette にとって、Théo のこの告白は、青天の霹靂。

おまけに、偶然、家にいた娘のJustineにも、一部始終を聞かれてしまう。

Alma は、絶対に、このまま、うやむやにしてはならないと、Juliette を説得する。

冷静になって考えるため、Julietteは、夏休みの間、子供達を連れて、Louise の友達のプロヴァンスの別荘へ避難する事になった。

Thomas の形容したのとは全く違った温和で人間的な Julietteの人柄を知り、自分のした誤りの大きさに慄く、Théo を見たJuliette は、Théo が自殺することを恐れ、彼女をプロヴァンスの別荘へ招待する事にする。  
何がなんだか良く分からないまま、Théo は、拒む口実が見つからないまま、Juliette の提案を受け入れる。

こうして、Juliette と4人の子供、 Almaとその15歳の娘 Sibylleに Louise の9人は、南仏で、ひと夏を過ごす事になる。


「近い銀河ほどゆっくり、遠い銀河ほど速く遠ざかるように動いているという」ハッブルの法則は、人間関係にもあてはめる事が出来るのでは・・・というのが、この小説のテーマ。

主人公のJulietteは、4人の子持ちとは思えないほど優美で、おっとりして、自己主張がないけれど、包容力のある女性として描かれています。他人の幸福を通じて自分が幸福になってしまう、というタイプのJulietteは、私の経験からすると、フランス人には、とても珍しいタイプの人間だと思いました。

自己主張しないと、どんどん足蹴にされてしまうフランス社会で、この年になっても、こんなに、のほほんとしていられるのは、彼女が少々トロいせいもあるけれど、なんやかんや言っても周りの人から護られている幸せな境遇にあるからなのかもしれません。

そんな彼女が、不倫を、娘のいる前でつきつけられて、自分で決断を下さなければなければならない出来事に遭遇します。

彼女の親友はもちろんの事、娘にすら、

「こりゃあ、黙って見てたら、あの人、絶対、又、父親に丸め込まれてしまうに違いない」

と思われてしまう程のお人よしのJulietteを、しょうもないと決別させようと、周りは、なんとか説得しようとするんだけど、Julietteは、なかなか決心がつきません。

こんなヒロインの心の迷いに、彼女を取り巻く人々の過去や、思惑をからめて、小説は展開して行きます。

この作品に登場するのは、

母親より世渡りにたけているのではないかと思える程、クールなのだけど、潔癖感の強いJulietteの長女Justine、

生意気盛りで、父親のThomasにそっくりで、将来が思いやられるJulietteの長男Fabrice、

自己中心にしか人間関係をとらえられず、頭が良くきれ、人を操るのに長けているJulietteのThomas

Juliette と正反対な性格の、完璧なパートナーを求めるあまり、シングル生活を選んだ、凄腕の離婚専門弁護士 Alma、

Alma の元で、少々、現実から離脱する傾向のある天文物理学者のArno

少女から大人へ移行していく難しい時期にさしかかったAlmaの娘、Sybille、

エリート校を卒業したキャリアウーマンだったのが、Thomas に誘惑されてしまったため、脱線してしまった Théo

複雑な過去を持つ、繊細なアーティストの Louise  

等などの人々です。

この多様な考えと、それぞれ違ったタイプの過去を持つ彼らが、それぞれ、モノローグという形で、自分の過去や気持ちを語る、という形でこの小説は進行して行きます。

「Tu n'est pas seul(e) à être seul(e)」(この作品についての記事はこちら)でも十分に発揮されていた、色々なタイプのフランス人の心に入り込んで、彼らの心うちを鮮やかに描写してしまうという著者の手腕に、またもや感服。

読み進んでゆくうちに、「こんなに読者を引っ張っといて、どうやって決着つけるの?」と、
煮えきれない終わり方をするのではないかと、ハラハラしたのですが、それは杞憂に終わりました。

Juliette と Thomas の人柄が、浮き彫りになる、ラストは、いやあ、お見事!

と、うなりたくなりました。

の浮気という、少々生々しいテーマを扱っているのだけど、決してウエットにならず、クールで、かつ、どことなく優しさが漂う、フランス製の人間ドラマでした。

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