Newsweek誌元特派員によるフランス文化論
2006-10-05

「Sacrés Français」
著者 : Ted Stanger
出版社 : Editions Gallimard
ISBN-10 : 2070313727
ISBN-13 : 978-2070313723
表装 : ペーパーバック(11x1x18)224頁
| 本の全体評価 | ![]() ![]() ![]() ![]() | かなり楽しめました |
| フランス語難易度 | ![]() ![]() ![]() | 普通 |
| 読みごごち | ![]() ![]() ![]() ![]() | すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
以前にこのブログで紹介した「Sacrés Français, le roman ! : Un Américain en Picardie 」 の著者が、フランス人をテーマに書いたエッセイ集。
著者は、「Newsweek」誌の特派員として、ボン、ローマ、ジェウザレムで暮らした経験があり、パリには、12年以上滞在しているとの事です。
このエッセイ集が好評だったので、「Sacrés Français, le roman ! : Un Américain en Picardie 」を執筆したそうです。
ユーモアとウイットたっぷりに書かれた、とても読みやすいエッセイ集なので、肩の力を抜いて読める本です。
フランス社会、特にマスカルチャーに対する、深い知識がないと出てこない、フランス有名人にひっかけた、ウィットのある言い回しが沢山出て来る事からも、著者がかなりのフランス通である事がわかります。(まあ、天下の「Newsweek」誌の特派員なのだから、これは、当たり前かもしれません)
このエッセイ集で、著者は、国際関係、政治、経済、社会、文化、の5つの面で、フランス人とフランス社会について、アメリカと比較しながら、フランス生活の際に実際に自分が遭遇した具体的な例を挙げ、フランス人を批判しています。
Bizarrement, dès qu'il s'agit des Etats-Unis, les Français, si sceptiques à l'égard de leurs médias, gobent le reportages les plus superficiels et les plus stéréotypés.
自国のメディアに対して懐疑心が強いフランス人が、不思議な事に、アメリカのルポとなると、それがいくら薄っぺらで、陳腐なものであっても、信じ込んでしまう。(これは、アメリカを日本に変えてもピッタリくるような気がします)
Les média sont respectueux, voire obséquieux à l'égard du pouvoir (dont ils reçoivent pour la pluspart des subventions directes ou indirectes)..
メディアは、権力に対し丁重にふるまっている、というかむしろ、媚びへつらっている。(大部分のメディアは、政府から直接又は間接的に、補助金を受けている)
Mais le plus extraordinaire pour nous, journalistes étrangers, reste ce penchant masochiste qui conduit parfois la presse française à se censurer elle-méme.
だが、我々外国人ジョーナリストにとって信じがたいのは、自発的に検閲をするという、フランスのプレスのマゾ的傾向である。
De là à conclure que le journalistes parisien est un snob, un élitiste de l'info, qui fait le tris entre celles qui sont bonnes pour la France d'en bas et les autres, plus gratinées , qu'il garde sous le coude pour les conversations entre confrères ou le dîner en ville.
そんな事から、パリのジャーナリストはスノッブで、大衆向けでないとジャーナリストが判断した本当におもしろい話題は、同業者との会話や、レストラン等での夕食の時の話題として、自分用にとっていおいて、報道しないという事が言える。
この様な例の他に、著者は、次のような指摘もしています。
終身雇用の慣習のある日本で、カルロス ゴーン氏が、日産で、21 000名の従業員を解雇した折に、フランス政府やメディアは、それを殆ど問題にしなかったのにもかかわらず、同じ時期に、Mark & Spencerが、パリの販売店を閉店を決定した時、対象となった従業員数が日産の10パーセントの1500名なのにもかかわず、メディアから、こてんぱに叩かれた例を上げ、
『Je crois qu'en fait les Français voudraient une mondialisation à sens unique.』
(フランス人は、一方的なグローバリゼーションを望んでいるのではないかと思う。)
どんな金持ちでも、ちょっとした出費をしぶる、フランス人はホントケチ。
フランス人は、公衆エチケットを守らない、交通規則違反をするのを悪いことだと思わない。
フランス人は自分が間違っているとわかっていても、絶対にそれを認めない。
等の「ホント、その通り!」
「しめしめ、これを、しっかり暗記して、今度フランス人と議論するときに使って、やり込めてやろう・・・」
なんていう、膝を叩きたくなるような、フランス人の矛盾を鋭く突いた批判が、沢山出てきます。
特に、プレス、マスコミ関係への批判や、フランスの政治、およびフランス人気質に対する分析の中には、かなり的を得ているものがあると思いました。
ただ、社会、文化面に入ると、著者の勘違い、又は、知識不足だと思われる少々的外れの批判や、分析が甘い箇所が目につき始めます。
いくら、フランス生活が長く、ありとあらゆるメディアに目を通し、フランスに関する知識を積んでも、知らないうちに、やはり、アメリカン・カントリーボーイとしての色眼鏡で、フランス人を見てしまい、深く考えずに、結論を出してしまうからかもしれません。
又、これは、書いているうちに、長年、フランス人にいじめられ続けた恨みつらみが頭の中を次々と横切り、興奮してしまい、冷静さを失ってしまった結果かしら?
と、いう考えがふと、頭の中を横切ったもしました。
でも、いくらなんでも、フランス人女性のやんわりとした食事の誘いへの拒否を、全然理解せずに、1年間もしつこく追いまわし、それを、『フランス人は、勤務時間が短く、食事の時間以外はいつも遅れる、アポイントを取るのがとても大変』
の1例として、書いているのは、自分がまぬけで、鈍感であるのを告白している様なもの、
「こんなジャーナリストがフランスの特派員やってんだから、アメリカ人のフランスへの誤解がひどくなるのは、当たり前かしら?」
などと、少々呆れたりもしました。
でも、本の裏表紙によると、著者のTed Stager 氏は、Mary E. Hemingwayw賞をはじめ、数々の賞を受賞している腕利きジャーナリストだそうで・・・
作品の初めの鋭さを見るとそれに、納得できるのですが、
「フランスに10年以上住んでいて、どうして、こんな簡単なことがわからないのかなぁ?」
と、つぶやきたくなる箇所もあります。
突っ込みが足りないところ、分析が足りない所がありますが、フランスに比べると、かなり日本社会と共通点が多いアメリカから見たフランス論なので、日本人の方には、かなり共感できるところがあるのではないかと思います。
全部が全部、納得できる内容ではないけれど、なかなか鋭い批判が沢山出てくる本なので、フランス人と口論する際、いつも言い込められて悔しい思いをしているあなたに、この本は一筋の希望の光を垣間見せてくれるかもしれません。
でも、
Trouver des excuses est le sport favoris des Français
(言い訳をみつけるのは、フランスの国技)
un Français n'accepte jamais d'avoir tort.
(フランス人は絶対に自分が間違っていると認めない)
J'ai appris qu'un Français qui commet une erreur c'est un fauve qui vaut mieux ne pas provoquer.
(誤りをおかしたフランス人は、挑発しない方がいい野獣であるという事を私は学んだ)
と、Ted Stager さんも書いている様に、フランス人を言い込めるのは、ホントに大変よぉ。
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