ヴァルガスの推理小説のとても独創的な漫画化
2006-09-11
Coup de coeur
「Les quatre fleuves」
ストーリー : Fred Vargas
作画 : Edmond Baudoin
出版社 : Viviane Hamy
ISBN-10 : 2878581342
ISBN-13 : 978-2878581348
表装 : ソフトカバー(13x21)224頁
本の全体評価 :(5/5)
ストーリー :(4/5)
絵 :(4/5)
フランス語難易度 :(2/5)
読みごごち :(5/5)
この表の見方はこちら
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
この作品の主人公Grégoireは、仕事をせずに空き缶等の廃物で庭に巨大な彫刻を制作中の父親と、お堅い銀行員の兄、庭の畑で野菜を栽培している兄、そして役者志望の3人の兄といっしょにパリの郊外で暮らしている。
Grégoireは、友達のVincentと一緒に、かっぱらいやひったくりをして、収入を得ているが、父親は、Grégoireがピザの宅配をしていると信じている。
Vincentは、ある年寄りに目をつけ、Grégoireの見ている前で、年寄りのかばんをひったくる。
そして、家に帰ったVincentが、かばんを開けてみると、中には、3万フランの紙幣と、黒魔術に関する数冊の本、血と思われる液体が入った瓶、タロットカード、図書館カード(George Estier名義)、社員食堂カード(Gilles Benamou名義)、クレジットカード(François Pont名義)、警官の証明書(Roland Vinteuil名義)、鳥の足、猫のものと思われる頭蓋骨等に混じり、黒い箱が入っていた。
この黒い箱の中に、15個ほどの人間のものと思われる歯が入っているのを見たVincentは、気味が悪くなり、Grégoireに電話する。
Vincentのアパートに赴いたGrégoireは、Vincentが部屋で殺されているのを発見する。Grégoireは隠し場所から、問題のかばんを取り出し、公衆電話から警察へ、Vincentのアパートに死体がある事を、匿名で連絡し、何もなかったように家に帰る。
Grégoireの電話を受け、Vincentのアパートに駆けつけたAdamsberg警視は、死体の足に刻まれた傷により、この殺人がBelierと呼ばれている連続惨殺事件の犯人の仕業だと推察する。
一方、問題のかばんの持ち主は、自分が面倒を見ている若い女性Estelleをおとりに、Grégoireをおびきだそうと計画する。
フランスの人気女流推理作家、Fred Vargas が、漫画家の Edmond Baudoin とコンビを組んで書いた作品。
この作品を描くため、VargasとBaudoinは、約1年の間、構想を重ねたそうです。
その結果生まれた、漫画とも、イラスト入り推理小説ともいい難い、全く新しいタイプの本です。
絵及び、テキストは、全て、荒削りなタッチの筆で、黒1色のみを使って描かれています。
漫画風にコマワリされて描かれている頁もあれば、筆で描かれたテキストに絵がついた頁あり・・・と、自由自在に頁を活用して書かれています。
普通の漫画の様に、一定のリズムで、作品を読むのではなく、じっくり説明したい時には、テキスト形式、スピーディーに作中人物の行動を説明したい時には、絵だけの漫画、作中人物達の会話を前面に出したいときには、頁いっぱいに、顔の絵とふきだしを並べたり・・・
といったように、とても起伏のある構成となっています。
この全く新しい頁の使い方により、多様なテンポ、リズムで話を読めて行けるので、スローとアップテンポが混ざったバラエティーに富んだ音楽を聴いている様な、とても心いい読みごこちの作品に仕上がっています。
絵は、荒削りですが、絵の基礎をしっかりと身につけた者のみが持ちうる、確実なデッサン力、すぐれた構成力、スピード感が感じられます。
ストーリーはVargasお得意の、風変わりで楽しい人たちが登場する、推理サスペンス。
登場人物の会話や、ちょっとした行動に、Vargas特有のユーモアが溢れているので、読んでいて思わず笑みがこぼれて来ます。
Vargasの小説には、ちょっとスローテンポすぎて読み心地がいまひとつ・・・と、ぐちりたくなるものもありますが、この作品は、Baudoinの絶妙な漫画化により、スピードがありかつ、Vargasの作品を通して感じられる独特な雰囲気が良く伝わった作品に仕上がっています。
ただ、Adamsberg とDanglardの容姿は、私が抱いていたイメージとは、少々違っていました。
ヴァルガス・ファン、推理小説ファンにはもちろんの事、新しいタイプの漫画を読んでみたいとお思いの方にもお勧めしたい作品です。
Fred VARGASの他の作品に関する記事
- 「Ceux qui vont mourir te saluent」
- 「Dans les bois éternels 」
- 「Debout les morts」
- 「L'homme à l'envers」
- 「L'homme aux cercles bleus」
- 「Pars vite et reviens trard」
- 「Sans feu ni lieu」
- 「Sous les vents de Neptune」
- 「Un peu plus loin sur droire」
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