感動的なサッカーの実話を元にした短編集
2006-08-27
Coup de coeur
「Libre arbitre. Onze histoires loyales ou déloyales du football mondial」
著者 : Dominique Paganelli
出版社 : ACTES SUD
ISBN-10 : 2742761632
ISBN-13 : 978-2742761630
表装 : ソフトカバー(12x22)150頁
本の全体評価 :(5/5)
フランス語難易度 :(3/5)
読みごごち :(3/5)
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(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
長年スポーツジャーナリストを務めていた著者が、サッカーにまつわる実話を元に書いた下記の11の短編が収録されている作品集。
オーストリアのPraterスタジアムでは、サッカーの試合の75分目になると、観衆が拍手喝采を送る慣わしとなっている。 そのわけを明らかにすると同時に、ナチスの鉤十字の入ったユニフォームを着てプレイするより、自殺する事を選んだ、『サッカーのモーツァルト』 と呼ばれた Mathias Sindelar を語った
「La Soixante-Quinzième Minutes」
ハッサン2世の治下、政治活動をしたかどで、逮捕され、拷問され、サッカー場に埋められた無実の人々。
その過去の罪を暴くことに一生を捧げたモロッコ人の男の話
「Terrain vague」
ビデラ大統領の軍事独裁下にある1978年のアルゼンチンで、サッカーのワールドカップの最中に反政府分子として、捕らえられ、拷問を受けた二人のサッカー選手が過去を語りあう
「Escuela mécanica de la armada (Esma)」
チャウシェスクの独裁政権の支配下にあるルーマニアで、名門サッカークラブであるバルセロナ・サッカークラブを破ったルーマニアのサッカークラブ Steaua の名ゴールキーパー Helmut Ducadam の悲しい運命を語った
「Les jeux de mains du jeune Dracula」
旧東ドイツから、西側へ亡命した、サッカー選手、Luz Eigendorf と東側に残された家族の話
「La Course du soleil」
クーデターにより、ピノチェト将軍が権力を握り、民主主義から独裁制へと変わったため、過酷な運命を辿るはめになったチリのサッカー選手たちについて、スポーツジャーナリストが語る
「Tous les 11 Septembre」
チャウシェスクの独裁下のユーマニアで行われたサッカーの試合で、公正な審判をしたため、刑務所へ送られた審判の話
「Hors-jeu」
規則違反、型破りな言動でメディアを騒がせたが、リヴァプールの大衆に愛された、一本気のサッカー選手、Robbie Fowler にまつわる逸話。「Dockers」
ナチスの支配下にあるウクライナで、行われたサッカーの試合で、「八百長試合をしろ」とのナチスの命令に背いたため、強制収容所へ送られた、サッカー選手達の話。
「Véstiaire」
1992年5月のフランスのコルシカ島のフリアニ・スタジアムで、サッカーの試合の最中、客席が崩れ落ち、人の死者が出た事故の現場に居合わせた著者の事件に関するエピソードを語った。
「Le Saint-Esprit (Furiani, 5 mai 1992)」
の、合計11の短編がおさめられています。
たかが、スポーツと、あなどれない程、サッカーは、ヨーロッパや南アメリカの人々の心と生活の中に入り込んでいます。それを常に、利用しようとする独裁政治家達と、サッカーにかかわる者達の関係を象徴している逸話を中心として、この短編集は構成されています。
どの短編を読んでも、
『スポーツマン精神』なんていう、きれい事では済まされない、純粋にプレーしたり、公正な審判をすることが許されなかった、独裁政権下でのサッカーの試合の裏に隠されていた、数々の醜く、そして悲しい事実、
サッカーが大衆の心に入り込んでいるばかり、サッカーの名選手であるがため、独裁政治の犠牲となり、人生を捻じ曲げられてしまった選手達の切ない思い、
そして、どんな時にでも、決して自分が正しいと信じた事を守り抜いた、サッカーの名選手達の勇気ある行い、
等が、胸に響いてくるので、どの逸話も、涙なしでは読むことの出来ませんでした。
スポーツ辞典などでは、語られる事のない、隠れたサッカーの歴史を語った名作。
サッカーのファンは、勿論の事、サッカーにあまり詳しくない人にもお勧めしたい1冊です。





