パリの高級住宅街のアパートの住人をめぐる連作短編集
2006-07-28
Coup de coeur
「Tu n'est pas seul(e) à être seul(e)」
著者 : Stéphanie Janicot
出版社 : Albin Michel
ISBN-10 : 2226159762
ISBN-13 : 978-2226159762
表装 : ソフトカバー(13x2x20)178頁
| 本の内容 | ☆☆☆ | 17/20 |
| フランス語難易度 | ## | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪♪ | すらすら |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
パリの高級住宅街にあるアパートの住人を主人公にした、16篇の連作の短編が収録されている短編集。
タイトルが示す通り、全ての作品のテーマは孤独。
冒頭の作品、「Tu n'est pas seul à être seul」の中で、
「この世で、私ほど、孤独な者はいない」
と嘆く友人に、著者は、
「コミュニケーション、娯楽、消費の方法がかつてないほど、豊富な時代に生きているけれど、奇妙なことに、人は、かつてなかったほど孤独よ」
と、語りかけ、それを証明する形で、友人と同じ建物の住人たちをモデルにした話を語り始めます。
この連作短編集に出てくるのは、
子供の世話と、アパートの管理にまつわる仕事に、疲れ切っている、ポルトガル系のアパートの管理人のおばさん、
自分勝手な不倫の相手を待ち続けるのに疲れた女性、
初老の著名作家、
自分を省みなくなった夫と暮らす夫人、
たった一人でテレビを生きがいとして毎日を送っている老婦人、
容姿に自身のない中学生の女の子、
女の子たちの憧れの的なのだけど、実は麻薬ディーラーに恋こがれている、美貌のホモセクシュアルの男子中学生、
ママが大好きなんだけど、なかなかかまってもらえない赤ん坊、
携帯電話に入るメッセージを待ち続ける女性、
母親の再婚をきっかけとして上流階級の一員となり映画関係のプレス担当をしているかつての友人と、偶然めぐりあったスーパーのレジ担当の女性、
癌に侵されている、女子大生、
占い狂の女性と、セネガル人の占い師、
金持ちの子供ばかりの中学校で、苦労している管理人のおばさんの娘、
管理人のおばさんの亭主。
傍から見ると、何の不自由もない、幸せな生活を送っているようでも、実は、誰もかれも、癒すことの出来ない孤独をかかえて暮らしている。
そう、みんなから、可愛いいと、ちやほやされている赤ん坊ですら・・・
そんな、パリの高級住宅地での人間模様が無駄のない、なめらかな筆運びで、描かれます。
傍から見たら、あんまり幸せそうに見えない、管理人のおばさん一家が、結局、一番幸せに近いところにいるみたい、幸せはお金で買えないって本当。
この本を読み終わった後、孤独というのは、自分を否定される事だというのを発見しました。
心を抉られるような残酷な現実に直面した、主人公たちは、皆、その現実と折り合う方法を見つけて、なんとかやって行こうとします。
こんなに、違ったシチュエーションにいる人物達の、それぞれの心の奥に入り込んで、彼らの機敏な心動きを、シミュレーションして、表現することが出来るなんて、なんて、素敵な才能。
どの、短編にも、見方によっては、取るに足らない様にすら思えてしまう作中人物の悩みや生き方を、否定することなく、あるがままに受け入れようとする、包容力にあふれている、著者の目線が作品の隅々まで感じられます。
皮肉な運命の手に遊ばされる人々の孤独を語った話なのに、読後感が、いいのは、著者のそんな、やさしさが、作品中にあふれているからかもしれません。
夏の暑い盛りに、目の前に差し出された、冷たい水のように、すーぅと、入ってい行ってしまう、とても読みやすい作品でした。
孤独なのは、私、一人ではない、
そんな事を実感したくなった時に、是非お勧めしたい1冊です。
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