先進国と第3世界の関係を描いた社会派サスペンス小説の傑作
2006-06-23
Coup de coeur
「La quatrième plaie 」
著者 : Patrik Bard
出版社 : Fleuve Noir
ISBN-10 : 2265077011
ISBN-13 : 978-2265077010
表装 : ソフトカバー(14x2x22)240頁
| 本の内容 | ☆☆☆ | 18/20 |
| フランス語難易度 | ## | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪♪ | すらすら |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
主人公のAbeこと、 Ablaram Van Tangは、ラオスで、ラオス人の母親とアメリカ空軍のユダヤ系軍人との間に生まれた。
父親は戦死し、Abeが5歳の時、彼を背負った母親が、アメリカ軍の置き土産の地雷を踏んで死亡した。Abe は、運良く命を免れたれたが、地雷のせいで右手の親指と人差し指を失った。
タイの難民キャンプから、フランス領ギニアへ、そして、頭の良さを見込まれ奨学金をもらい学業を続け医者になり、現在、GSF(Gnérir Sans Frontièrs) という非営利団体で、医師として働いている。
Abe は、Ouganda で、行方不明になった 医師、Diego Ponceを探すために、Ougandaに到着したが、Ouganda のGSF支部で働いているスタッフから、現在アフリカで多くの死者を出している「眠り病」に効くrostineという薬を積んだまま行方を絶ったトラックを探してくれと頼まれる。
フランスの薬品会社は、採算が合わないという理由から、 アフリカに蔓延する「眠り病」という病を唯一治療することの出来るこの薬の生産を打ち切ることに決定したため、この病に罹っている人々を救うためには、どうしてもこの薬品を入手しなければならなかったのだ。
パリのGSFのスタッフJoséphineは、ronitine の採算を再開させようと、製薬会社に働きかけるが、企業幹部は、生産の再開をかたくなに拒否する。
やがて、ゲリラの襲撃にあい、ぼろぼろになったトラックが見つかる。
GSFが、ronitineを見つけたものに、千ドル賞金を出すことを発表すると、トラック運転手達の首とronitineが入ったダンボールが、10万ドルの身代金を請求する手紙と共にGSFの事務所へ届けられた。
ちびで、片手の指が半分ないけれど、妙に女心をくすぐる、アジア人と白人のハーフの主人公を中心に、
子供の養育権を元夫に取られた、世界を駆け巡るバリバリのキャリアウーマンのJoséphine、
両親を目の前で惨殺したゲリラの一員となる事を強制され、生き残るために、殺人マシーンとなった、少年兵士のMoses、
新薬の開発には多大な費用がかかるため、製薬会社は、収益の出ない薬を生産する必要はないとかたくなに信じ込み、多くの人の命が失われることを知りつつ、ronitine生産をストップする事を厭わない製薬会社の幹部、Richard、
薬物中毒で、エイズキャリアの娘を持ち、製薬会社の方針に、良心の咎めを感じている、製薬会社の管理職のGilles、
何不自由のない幸せな家庭に生まれたのに、薬の奴隷となり、良心と分別をなくしてしまったGillesの長女Karine、
世の中に、命を救うことの出来る薬が存在するのに、ただ、貧しい国に生まれたというだけで、苦しみながら死んでいかなければならない人々、
フランスに滞在する権利を得るために、お金を払って、自らの血管へエイズ菌に感染した血液を注射する人たち、
そんな人々を通して、現在の先進国と発展途上国の関係を描いた問題作です。
アフリカでの非営利団体の活動ぶりを伝えると共に、アフリカのエイズ患者の想像を絶するような暮らしぶり、「眠り病」に関する恐ろしい事実を読者の目の前に突きつけ、そうした現実に対し、先進国が果たさねばならない役割とは何か、今;私達になにが出来るのかを読者へ問いかけます。
重いテーマをあつかっているのですが、この作品は、決してお涙頂戴式にならず、かつ説教じみてもいなく、あくまでもエンターテイメントとして、書かれているので、とても読みやすかった作品です。
絶妙な作中人物のキャラクター設定、真に迫って、とても迫力のある心理描写。さらっとして、時にはユーモアすら感じさせる軽快な語り口。
読者の気を最後までそらせない、優れた作品構成、心の底へ波紋を投げかけるラスト・・・等などの、優れた要素が、満載されたこの作品は、世界的規模で描かれた社会派サスペンス小説の傑作といっても遜色はないと思います。
この本を読んだ後、世界的な規模で考えたとき、自分がどのような立場に置かれているのかを、改めて考え直すことを余儀なくされました。読む人の人生観、世界観を揺るがしてしまう力を持つ作品だと思いました。
是非、日本語にも訳して、出来るだけ多くの人に読んでもらいたい本です。
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