タリバンの支配下のアフガニスタンを描いた名作
2006-04-21
「Les hirondelles de Kaboul」
著者 : Yasmina Khadra
出版社 : Pocket
ISBN-10 : 2266134752
ISBN-13 : 978-2266134750
表装 : ペーパーバック(11x1x18)148頁
| 本の内容 | ☆☆ | 15/20 |
| フランス語難易度 | ##♯ | 少々難しめ |
| 読みごごち | ♪♪ | まあまあ |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
タリバンの支配下にあるアフガニスタンが舞台。
監獄の番人のAtiqは、妻のMussarat が不治の病にかかっている事を告げられた。
愛する妻が次第に病でやつれ果てていくのを見かね、鬱状態に陥る Atiqに、友人の Mirzaは、離婚し、若い娘を娶る様、薦める。
Mohsenは、偶然、立ち合わせた、投石による死刑の現場で、自分でも知らないうちに、回りの雰囲気に押され、自分の意思とは裏腹に、死刑囚に石を投げつけてしまう。
我に返ったMohsenは、自分で、犯したこの行為を恥じ、どうしてこんな事になったのか自分が信じらず、狼狽する。
Mohsenの妻のZunairaは、元弁護士で、教養のある女性。
Mohsenは、救いを求め、Zunairaに自分が犯した行為を告白する。
だが、彼は、安らぎを得る事が出来ず、二人の間の溝がさらに深まってしまった事を認識する。
次の日、二人の間に漂う重苦しい雰囲気から逃れるため、Mohsen 、は、Zunaira へ、以前の様に、二人で散歩に出る事を提案する。だが、この他愛無いアイディアは、悪夢へと変わって行った・・・
以前に紹介した「L'attentat」(書評は、こちらをご参照下さい)を書いた、著者の他の作品を読んでみたくて、色々調べたところ、この本に行き当たりました。
タリバン支配下にある、カブールの市民の日常を書いた作品。
「L'attentat」は、グングン、読者の心の奥に入り込み、力強いメッセージを投げかける作品でしたが、この小説は、強いメッセージを全面的に押し出すのではなく、タリバンが、市民生活を支配するようになって、市民の日常と家庭がどの様に変化していったのかを描きながら、機敏に読者の心の中に入り込み、読む者の感情をゆさぶらせてしまう作品です。
イスラム原理主義を頭から信じ込み、ばかげた、理不尽な行為を正義だと信じている人々、
それが悪い事と知りつつ、回りの人の影響を受け、自分を失ってゆく人達、
そして、人間として生きていく事を否定された女性達
彼らや彼女らの姿を描きながら、著者は、人間がどんなに弱く、不確定な存在なのか、読者に語りかけます。
作品を読んでゆくにつれ、自然と、イスラム原理主義に心酔することが出来ず、人間性を失う事のない人々の叫びが自然と心に伝わって来ます。
タリバンの政策が、面と向かって糾弾されているわけではないけれど、不寛容な原理主義的宗教によって、人間が人間として生きていく事を否定されているカブール市民の日常に、怒りを覚える様になります。
この現実に対して、作中人物達が出した、結論は、あまりにも悲しすぎて、絶望的。
読み終わった後、
「現在のアフガニスタンは、どの様に変わったのかしら?」
と、とても気になりました。
先日見た、テレビのルポだと、かなり自由になったみたいだけど・・・
現在のカブールを舞台にして、この現実がどの様に変わったのか、是非、著者に、もう1作、カブールを舞台にした作品を是非、書いてもらいたいなぁと思いました。
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