Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド

フランスの現代作家の小説、BD(フランス漫画)を中心に、私が読んだフランス語の本を紹介

第二次世界大戦中、レジスタンスに加担した神父に恋した修道女のお話


soeur
   「Soeur Philomène」
 著者 : Jean-Luc Aubarbier
出版社 : Editions JC Lattès
ISBNコード : 2709624516
表装 : ソフトカバー(21x13) 250頁
 


 本の内容9/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



1943年、ドイツの占領下にある、フランスのPérigueuxの、貧しい農家の六男坊として生まれた、Robertは、人並みはずれて頭が良かったため、教区の司祭より目をかけられ、学費を捻出してもらい、神学校を出た。
 Robert の親友、Phillipe は、Sarlatの近くの小さなお城を持つ、裕福な階級の出身。

Phillipeが、茶色の髪、中背で、やせており、控えめな性格なのに、比べ、Robertは、背が高くブロンドで、喧嘩っ早く、女好きと、聖職者には、あまり似つかわしくない性格。

ナチスがフランスを占領した時、ナチスを容認するとすら解釈できる法王の態度に、忍従する事の出来なかった二人は、ためらわず、レジスタント活動に加担するようになる。

Phillipe は、自分の勤める学校に、ユダヤ人の子供を匿い、Robertは、危険を伴うレジスタントの連絡係りを務める。

Robertに心を奪われた修道女、Soeur Philomène こと、 Thérèseは、レジスタント活動に賛意はしていなかったが、Robertへの愛のため、活動を援助するようになる。

だが、浮気なRobertの心が、自分から離れつつある事に気づいたThérèseの心には、自分でも抑えることの出来ない復讐の炎が燃え始めた。


第2次世界大戦中のフランスで、実際に起こった事件を、小説化した作品だそうです。
明日の運命がわからないという、ギリギリの状態で、恋におちてしまった、神父と修道女。
まるで、映画のストーリーの様。
「現実は小説より奇なり」とは、この様な事をいうのかと、痛感しました。

著者は、この史実に想像で肉をつけて、読みやすい作品に仕立て上げています。

ただ、著者は、レジスタントに肩入れしている様で、史実の解釈の仕方が公平とは程遠いものとなってしまっている所、文の調子が一本調子で、今ひとつ盛り上がりに欠けるところがあるのは、残念ですが、フランス1市民から見た、ドイツ占領下のフランスの状態がビシビシ伝わって来る、読み物に仕上がっています。

著者は、この事件が起こった地方の出身で、本屋経営をしているとの事です。



フランス人看護婦が見たセネガル

seneg
   「Tam-Tam Sénégal」
 著者 : Nadine PRUDHOMME
出版社 : L'Harmattan
ISBNコード : 2747583473
表装 : ソフトカバー(14x22) 216頁
 





 本の内容☆☆13/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



この本は、主人公のAnneが、セネガル人の友人Demba の死の知らせを受けたところから始まる。
Anneは、自分が、夫のPierreがこの世を去ったときと同じくらいのショックを受けた事に驚き、過去を回想する。

Simon とMarieという、2人の子供がいる中年夫婦AnneとPierreは、セネガル旅行の際に、セネガル人の男性Demba知り合い、友達になる。Pierreの知らぬ間に、Anneは、Dembaは恋に落ち、フランスへ帰ったAnneの元に、Dembaからのラブレターが届くようになる。
その後、看護婦のAnneは、休暇の間、Dembaの住む村のそばにある診療所でボランディアをするため、単身でセネガルへ向かう。

ろくな薬も、医療備品もない、診療所の様子に、当初、Anneはショックを受けるが、診療所で働くことに生きがいを感じるようになる。
手紙とは、がらりと態度が変わってしまった、Dembaの態度を裏切りを感じながらも、Anneは、Dembaのことを拒むことが出来ない。
ある日、Anneは患者の一人の村人が祖父から相続した土地を売って、タクシー会社をはじめたいと考えていることを、耳にし、セネガルに土地を買って家を建てることを考えはじめる。

休暇を終え、フランスへ帰ったAnneは、Pierreに、セネガルに土地を買って、家を建てる計画を打ち明ける。
この計画に、魅力を感じたPierreは、Anneに同意し、二人は、この計画を実行に移すことにしたのだが・・・


本の前書きによると、アフリカとフランスで、看護婦として働いた経験がある著者が、友人が実際に、経験した出来事を元にして書いた小説。

とにかく、とても面白くて、読み出したら止める事が出来ず、一気に読み通してしまいました。
なにしろ著者は、読者を感情移入させてしまうのに、とても長けています。

作中、『主人公が、フランスの医療機関や、製薬会社等を駆け回って、セネガルの診療所へ寄付する医薬品や備品をかき集め、航空会社と交渉して、超過料金を払わずに、飛行機で運ぶ手はずを整え、税関のための書類を揃え、ダカール空港に到着したら、判子が1個足りないというだけで、役人は通関すること拒否。診療所に行って、この事を村人に話しても、皆あまり、憤慨する様子をみせない。それでも、Anneはあきらめられず、村人のコネを使って、大臣と約束を取り付け、大臣に頼んで、なんとかやっとの事で、医薬品を受け取りに行ける様になる。空港のいじわるな役人に、いやみを言われ、やっと、荷物を通関すること出来るようになり、空港の倉庫へ取り入ったのだけど、医薬品の箱は、開封されており、一部が盗まれていた』
という、エピソードが出てきますが、これなど、多分、実際、アフリカで看護婦をした事ある著者の経験が、入っているのではないか?と思われるほど、リアルに、描かれています。
この下りは、この作品の一つのクライマックスですが、それ以外のエピソードでも、私は、読みながら自分がAnneになって、この出来事を経験している様に、興奮しました。

セネガル人の態度に、慣れることができずに、憤慨するAnneに、友人のMoussaが
「君は、ここの文化の微妙なニュアンスを完全に把握するほど、長く住んでいるわけじゃない、・・・」
と、彼女のやり方がまずかったことを指摘する場面があります。

『自分が接している異文化圏の風習、やり方を理解しようとせずに、自分のやり方を押し付けて、それがうまく行かないからといって、憤慨するのは、間違っている』

これは、往々にして、忘れがちになってしまっている事ですが、外国に住む時、心に刻み込んでおかなければならない根本的な約束事だと、この下りを読んだ時、再認識しました。

愛し、信じていた者に裏切られ、絶望の淵に落ち込んでしまったヒロインですが、彼女は、そこから、見事に這い上がり、新しい人生を築きいていきます。

セネガル人から見た主人公の姿が作品中、言及されていなかったのには、ちょっと残念な気がしましたが、
40台でアフリカに出会い、それから、一生を通して、フランスとセネガルの二つの国を愛したフランス人女性の、波乱万丈な感動的な、お話です。

フランス人の目から見た、セネガル生活が生き生きとかかれているので、エンターテイメントとしてだけでなく、アフリカ人の考え方、生き方を理解する手助けになる作品だと思います。

特に、アフリカ文化に興味をお持ちの方に、お勧めしたい本です。

猫が主人公のフランスの風刺漫画


chat
   「Le Chat」
 著者 : Phillippe Geluck
着色   :  Serge Dehaes   
出版社 : Casterman
ISBNコード :  220334024X
表装 : ハードカバー(23x1x31)48頁
 



 本の内容10/20
 フランス語難易度易しい
 読みごごち♪♪♪ すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



フランスで大人気、テレビやラジオ番組にも、ちょくちょく顔を出す、あの有名な漫画家 Phillippe Geluck の 風刺ギャグ漫画集 「LE CHAT」シリーズの第1冊目。
漫画だけでなく、「LE CHAT」のイラストの入ったノート、シーツ、パジャマ等などが現在フランスで大人気の漫画キャラクターです。
「LE CHAT」シリーズは、今まで何冊も読んでいるのですが、そういえば、1冊目は、まだだったなぁと、この前図書館へ行って、めぼしい本がなかった時に借りてきました。

猫が主人公の、1コマから、長くても1ページの風刺漫画のオンパレード。
私が今まで読んだ他の「LE CHAT」シリーズには、ちょっと、ブラック過ぎて、笑えないものや、全然おかしくないものもかなりあるけれど、
この1冊目は、どちらかと言うと、言葉あそびを中心とした、ただ単に馬鹿馬鹿しくて、おかしいものが中心。

「Hier soir, j'étais tellement bourré, qu'à un contrôle routier, j'ai soufflé dans le gendarme au lieu de souffler dans le ballon. Il est devenu tout rouge.」
なんて、思わず吹き出してしまうギャグから、

「J'essaye de noyer mon chagrin dans l'alcool. Mais depuis le temps...il a appris à nager, mon chagrin.」
なんていう、ちょっと詩的(?)なもの、

「Se rendre compte qu'on est un imbécile est un signe d'intelligence.」
なんていう、ちょっと哲学的(?)なもの、

「Les jeunes, c'est tous des bons à rien et ça devient pire avec l'âge.」
みたいに、爆笑した後、ちょっと考えさせられてしまうものまで、盛りだくさん。

フランス人のユーモアを理解したいと、思っているあなたに、お勧めしたい風刺ギャグ漫画です。

現在、「LE CHAT」シリーズの19冊刊行されている様ですが、だいたいどれも、ギャグ自体は違うけど、スタイルは同じです。
私は、ハイティーンのフランス人へのプレゼントに何を贈ったらいいのか分らない時など、よく、この「LE CHAT」シリーズの最新刊をプレゼントします。(自分でお金を出して買う気はあまりしないけど、貰ったらうれしいタイプの本みたい)

ぢなみに、著者は、フランス人でなく、ベルギー人です。
Phillipe GELUCK の 公式サイト
では、Le Chat の漫画が読めます。

フランス新聞社の楽屋裏


journal
「Le journal」 
 著者 : Bernard Maris
出版社 : Albin Michel
ISBN-10 : 2226153934
 ISBN-13 : 978-2226153937
表装 : ソフトカバー(15x23) 336頁



 本の内容9/20
 フランス語難易度###ちょっと難しめ
 読みごごち .しんどかっったです

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



フランスの週刊誌「Le journal」を発行している新聞社の編集長、Serge Faggianと、社長Decroixは、週刊誌の経営方針に食い違いを見せており、犬猿の仲。
解雇された「Le journal」の挿絵担当のFuchsが、同新聞社に勤める記者のGuy Larcherに「私が死んでから開封の事」と但し書きのついた遺書を残して自殺を図る。
Guy Larcherは、社長夫人のJocelyne Decroixに密かに思いを寄せている。
しかし、そんな事を知らない、Serge Faggianは、Guy Larcherに目をかけ、彼に重要な記事をまかせる。
そして、その出来事を発端として、Guy Larcherは、「Le journal」をめぐる権力闘争に巻き込まれて行く。


フランス、アメリカの大学で講師を勤め、すっぱぬきとブラックユーモアが売り物の新聞「Charlie-Hebdo」に記事を投稿し、経済書、小説を執筆している、Bernard Marisによる、フランスの新聞社をテーマにした小説です。

プレス関係者や、自称インテリフランス人が使用する、私には、あまりなじみのない言い回しや表現が沢山出て来るので、読み出し初めは、かなり戸惑いました。又、複雑な新聞社の社長の家族とその周りの人々の関係をしっかり把握するのに、ちょっと苦労しました。

下半身が不自由で、杖なしでは、歩く事ができないけれど、上半身は筋肉もりもり、身障者オリンピックの水泳競技でメダルを獲得した、Serge Faggianのキャラクターは、魅力的。
他人の心をつかむ事に長け、人を自分の意のままに操ってしまう程のカリスマを持つ超人で、かなりきつい所のある人ですが、知恵遅れのDecroixの娘の唯一の友人という、とても優しい一面も持っています。
そんな彼が、心から願っているのは、「Le journal」をもっと価値ある週刊誌に変えること。
そんな彼の想いがひしひしと伝わってきました。

又、Guy Larcherのアパートの窓から見える、部屋に住んでいる、滞在許可を持たないアフリカ人女性のエピソードも、私は、なかなか興味深く読みました。

だけど、それ以外は、これほど苦労して読んだわりには、・・・
私は、新聞社の内部抗争にからんだ、新聞社と政治家、その他の権力との関係についての話が読めるのではないかと期待していたので、その点は、がっかりさせられました。

週刊誌を売るために、人を陥れるために、スキャンダルをでっち上げる、そんな事さえ厭わない、権力者への批判、
主人公のLarcherの社長夫人に対する恋、等などが、この小説のテーマみたいなのですが、どれもこれも、ぼやけてしまって、私にとっては、あまり、ピントきませんでした。
興味をそそるエピソードが沢山出てくるのですが、そのためか、一つのエピソードに割り当てられた記述の量が読者の関心を引きつけるには、不十分な感じを受けました。

作中人物が多いので、それぞれの人物の性格描写が希薄になり、人物の言動に重みが欠け、あまり感情移入出来ないこと、
新聞社内部のごたごたにポイントを置きすぎて、作中、ちょっと触れられている新聞発行と、権力の関係が、いまひとつ、はっきりしないこと。等など、
不満な点をあげればきりが無いけれど、興味深い挿話が満載されている点、又、
誰も書こうとしない、フランスのプレス発行の裏側をあえて、書いたという点は、評価できるのではないかと思いました。

狂気と正常のはざまで・・・


fondu
   「Fondu au noir」
著者 :Jean-Jacques Reboux
出版社 : Folio(Gallimard)
ISBN-10: 2070409643
ISBN-13: 978-2070409648
表装 : ペーパーバック(11x2x18) 306頁  






 本の内容☆☆12/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)


この作品の語り手は、映画狂で、失業中の Samuel こと Sam Flicker。
彼は、以前の勤めていた新聞社の上司である Ralph Finlay から、インタビューの仕事をしないかと持ち掛けられます。

その、仕事とは、 Finlay がさるカクテルパーティーで、知り合った Mollyという女性の父親へインタビューするだけで、1万ドルが手に入るという濡れ手に泡の様な話。
お金に困っているSam Flickerは、喜んでこの申し出を引き受けます。

そんな訳で、Sam は、手入れが全くなされていないため、廃家の様にうらぶれてしまった一軒家に住んでいる、アル中で視覚障碍を持つ、Molly の父親Richard Drexterへのインタビューを始めます。

はじめは、報酬が目的で、Richardの話を聞いていたSamですが、次第に、映画の生き字引の様な、Richard Drexter の話に、映画狂の主人公は引き込まれて行きます。
インタビューが順調に進んでいるある日、この仕事の依頼主、Richard Drexter の娘のMollyがインタビュー中に Richard Drexterの住んでいる 家に現れます。

魅力的な Moollyに、一目で心を奪われた主人公は、Molly を車で送り届けるはずが、彼女の希望により、Greenvilleのモーテルで、彼女と一夜を共にします。
翌朝、一人で目を覚ました は、Sam は、 自分が罠にはまってしまった事に気づきますが・・・


とても、風変わりなサスペンス。
この作品の初めの方に、古いアメリカ映画の俳優の名前が続出してきますが、私にとっては、なじみの薄い、知らない俳優さんばかりなので、今一つピントきませんでしたが、ファンだったら、きっと、うなずきながら読めるのではないかなんて思いました。

この作品の本筋は、主人公の Sam が逮捕される所から始まります。
警察の取り調べを受け、自分の主張が誰にも信じてもらえない事が原因で、彼の頭は、少しずつ、変調をきたしてゆきます。
そして、彼が狂って行く様子が彼自身の口を借りて、語られていきます。

Sam の頭が少しずつおかしくなって行く様子が、彼の口を借りて語られますが、読んで行くうちに、どこまでが、事実で、どこからが彼の妄想なのかが、あいまいになり、読者を混乱に陥れていきます。

そして、信じるのが苦しい程残酷なラスト。

ストーリーに、説明不足の所、ちょっと納得出来ない所あり、読み終わった後、少し、不満が残りましたが、後々、かなり、強い印象を私の心に残した本でした。

タイトルの Fondu au noir は、Vernon Zimmerman 監督の映画「Fade to black」にちなんでいるとの記述が作中に出てきましたが、
この作品に、ホントピッタリなタイトル、洒落ているなぁ、と思いました。

『ADMINISTRATION FRANCAISE』 という名の不思議の国に迷い込んでしまった、可哀相な男のお話


comment
   「Comment calmer M. Bracke」
 著者 : Gérard Mordillat
出版社 : Le livre de poche (Lgf )
ISBN-10 : 2253109371
ISBN-13 : 978-2253109372
表装 : ペーパーバック(11x18) 189頁



 本の内容☆☆16/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



フランスの、ある企業の 資料室に勤める Bracke 氏は、ある日、突然、課長昇進の辞令を受け、その後すぐに解雇を言い渡されます。
そして、この出来事を発端として、Bracke 氏は、相次ぐ、理不尽な不幸の波に、見舞われてゆきます。

カフカも真っ青な不条理の世界。

規則やマニュアルが、大いに巾を利かせているフランスの組織。
規則やマニュアルに通りなら、道理にかなっていなくても、常識からはずれてしまっても、、何でもかんでも全て許されると、信じている企業幹部、警察官、等などに、Bracke 氏は、連続して遭遇し、不条理とすら形容できる様な、理不尽な扱いを受けます。
規則やマニュアルに適う様、何でもかんでも、自分たちの都合のいい様に、捻じ曲げて解釈してしまう、そんな人間達が支配する『Administration française』 という名の不思議の国に迷い込んでしまった、可哀相な主人公のお話です。

彼が体験する、悪夢の様な出来事を、作者は、『報告書』をほのかに感じさせる、おちょくった文体に、言葉あそびをたっぷりと詰め込み、リズミカルかつ、ユーモラスに描いていきます。

この作品を読んでいて、こんな馬鹿な、と叫びたくなる様な、場面に幾度もぶつかりましたが、よく考えてみると、これは、皆、現在のフランスの官僚主義への強烈な風刺。
現在の一部のフランス人のずさんな仕事ぶりを考えると、恐ろしい事に、勿論、『程度の違い』、はあるけれど、どれも、これも、実際にあってもおかしくない様なエピソードです。

不可解な社会の歯車によって、一個人が、徐々に、すり減らされ、消耗され、ぼろくずの様になってゆく有り様が、おもしろおかしく、語られます。
最後の最後まで、フランス社会と企業をバカにし続ける著者の姿勢は、ホントあっぱれ!

現在のフランス企業、及び国家機関に対する、強烈な風刺小説であり、ブラックユーモアの新境地を開拓した、新しいタイプの小説です。

Gérard Mordillatの他著作に関する記事

フランスで大人気のAdamsberg 警察署長が活躍する推理小説


cercles bleus
   「L'homme aux cercles bleus」
 著者 : Fred Vargas
出版社 : J'ai Lu
ISBNコード : 2290349224
表装 : ペーパーバック(11x2x18)220頁





 本の内容10/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち しんどかったです

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)


4ヶ月前から、夜の間に、パリの歩道に直径2メートル程の輪と、
「 Victor, mauvais sort, que fais-tu dehors ? 」
という言葉が、青いチョークで書かれる様になった。
そして、その青い輪の中には、決まって、ビールの王冠、ろうそく、鳩の足、眼鏡のレンズ、クリップ等、ごみに等しい物が置かれていた。

新聞、雑誌は、この奇妙な行為を、20世紀最後の文化現象と書き立てた。 しかし、パリに配属された Adamsberg 警察署長は、この青い輪に、胡散臭さを感じていた。そして、彼の予感は、当たり、ある朝、青いチョークの円に囲まれた女性の死体が見つかる。

チョークで青い円を書く男を見た事がある、と言う、風変わりな著名な海洋学者、Mathilda FORESTIER の 証言を元に、Adamsberg は、事件の解明に乗り出して行く。


「L'homme à l'envers」(書評は、こちら を参照ください)で活躍した、Adamsberg 警察署長が主人公の推理小説です。
この作品に出てくるMathildaは、町で見かけた人を尾行して、その人について、感じたことをメモすることを趣味としていますが、その下りを読んだ時、私は、
「もしかしたら、とっても風変わりで、魅力的なVERGASの作品に出てくる人物のキャラクターは、こんな風にして、生まれたのかもしれないなぁ」なんて、思いました。

VERGAS の作品は、テンポのいい文章で書かれたものが多いのですが、この作品は、心理描写や、心理分析、モノローグ等が多く、せっかちな私にとっては、読むのがちょっと、かったるかったです。

でも、この一見無駄とも思える、部分に、作者の人生観や、哲学が、ちょこっと見えたりしたのが、面白かったですね。

でも、最後まで、読んで、
「ちょっと、かったるかったけど、ここまで読んで良かった」
と、しみじみ実感。
VERGAS の作品は、前半は、おもしろいけど、ラストは今一つという尻つぼみタイプもあるけれど、この作品は、それと正反対で、ラストが見事。最後のシーンもなかなか味があって良かったですね。

VERGASの他の作品に比べると、スピード感があまりないので、ちょっと読むのがかったるいけれど、VERGASの人生観などをちらりと覗くことが出来るので、ファンなら、読んでおいて損はない作品なのではないかと思います。


Fred VARGASの著作に関する記事

ブラジルで激しい恋に落ちたフランス女性の物語


salam
   「La Salamandre」
 著者 : Jean-Christophe Rufin
出版社 : Folio (Gallimard)
ISBNコード : 2070328767
表装 : ペーパーバック( 11x18)189頁
 




 本の内容☆☆11/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



パリの企業で働く, Catherine は、上司にも、部下にも、評価されている離婚経験のある、40過ぎの管理職。
ブラジルに住んでいる友達、Audeの家で、1ヶ月のバカンスを過ごすため、飛行機に乗り込みます。
コパカパーナの砂浜に寝そべりながら、のんびりとしたバカンスを送る Catherineは、ある日、ハンサムなブラジル青年、Gil に出会い、それから、彼のエスコートでブラジルのバカンスを送る事になります。

「Gil の様なタイプには、注意しなさい。遊びなら、いいけど、深入りしちゃダメよ」と、
Audeとその夫は、Catherineに忠告しますが、彼女の心の中に、Gil が占める場所がどんどん大きくなって行き・・・


一見したら、若い男に狂った、あわれな中年女のお話。
もし、Catherineがブラジルに来る事がなかったら、Gilと知り合う事がなかったら、絶対に人から後ろ指さされる事などなく、良識的な生活を死ぬまで淡々と送っていた事だと思います。

Gilと出会った事で、Catherineは「狂気」と一重違いの情熱に身も心も捧げ、その結果、身を滅ぼされ、残りの人生を屍の様に、送る羽目になってしまいます。

悲劇的なお話なのですが、本の最後に出てくる、全てを失ってしまった彼女は、なんだか、とても満ち足りている様に思えました。

もし、Catherineに
「やり直す事が出来たとしたら?」と、質問する事が出来るとしたら、きっと彼女は
「同じ事を繰り返すわ」と答える様な気がしました。

人から何と思われようと、自分がこれと信じ、全ての情熱を傾けた、そんなひと時を過ごすことができれば、その思い出だけで、後の人生を、生きて行く事が出来る。
一生、何の情熱も知らず、誰もから尊敬される人として、淡々とした人生を送る人より、行き着く果ては破滅しかないとわかっていても止まる事の出来ない情熱に身をまかせた、そんな記憶をもっている人は、ずっと幸せ。

人生が不幸であるか、幸福であるかは、本人にしかわからない。

そんな、著者の思いが感じられる様な気がした、心を揺さぶられる悲しい愛のお話でした。

Jean-Christophe RUFIN の作品に関する記事

超おすすめフランス漫画ー達者な水彩画風な絵がとても素敵

Coup de coeur

mucha
   「Muchacho、tome 1 」
著者 : Lepage
出版社 : DUPUIS
ISBN-10 : 2800134097
ISBN-13 : 978-2800134093
表装 : ハードカバー(24x1x31) 72頁





 本の内容☆☆☆17/20
 フランス語難易度##易しめ
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)


1976年、Tachito大統領の独裁下にある中央アメリカのニカラグアが舞台。

優れた絵の才能を持つ、神学生のGabrielは、神父のJoaquinに連れられて、 Joaquinの友人の神父Ruben の教会の壁画を描くため、Nicaraguaの奥地の村へ、赴きます。
Gabrielは、アメリカから父親が持ち帰った、宗教画集からヒントを得たクロッキーをRubenへ見せますが、Rubenは、
「その様な絵じゃ、自分の名前すらろくに書くことの出来ない、この村の人々を感動させることは出来ない」と言い、
Gabrielへ、村へ出て、村人の姿をスケッチするよう勧めます。

その頃、村では、Tachito大統領の支配下にある軍隊の、村人に対する暴虐無人に振舞いに、村人の怒りが爆発し、レジスタント運動が広がりはじめています。
村人との接触を通じて、人間的に成長を遂げた、Gabrielは、ついに、村人たちを感動の渦に巻き込む、壁画を描くことに成功したのですが・・・


以前にも、書きましたが、私は、基本的に、Bande déssiné が、苦手です。
第1に、Bande déssiné の典型的なタイプの絵柄が、私の趣味から、かけ離れている。
第2に、Bande déssiné は、一般的に、読むところが非常に多いので、日本の漫画を読むペースで読めないため、イライラしてしまうのです。

でも、このBDは、絵がとっても素敵。
デッサンの確かな、水彩画のような絵柄が、普通のBDとは、一線を画しています。
南アメリカの貧しい村、そして、村人の様子が、この達者な絵で、余すところなく、表現されます。

才能のある写真家が撮影した、人物写真を見ると、その人の人生が透けて、見えてくるような感覚を覚えることがありますが、このBDの絵にも、それに似た思いを抱きました。
このBDの作中人物は、もちろん、架空の人物だと思いますが、その絵を通して、彼らの人生が伝わってくるような感じを受けました。

普通のBDの様に、登場人物の台詞で、状況説明をするのではなく、ほとんどの行動が絵で表現されているんで、全体的に、とても、読みやすいです。
ただ、冒頭の部分は、スペイン語が少し出てくるので、ちょっと戸惑うかもしれません、でも、ほんの数ページ、辛抱すれば、後は、楽になりますよ。

さて、ストーリーに関してですが、この作品は、2部作ということで、私は、まだ、第1巻しか読んでいないので、あまり、はっきりしたことは言えないのですが、第1巻を読んだ限りでは、かなり、明確なメッセージを持っている、骨のあるストーリーのようです。

2巻目は、いつ出るんじゃ!

「BDのあの癖にある絵が嫌い」という、あなた、ちょっとこの本を手にとって見て下さい。あなたのBDに対する考えが変わる事間違いなし、と私は思いますよ。


Emmanuel Lepage の他の著作に関する記事

フランスのブルターニュ地方の民話の漫画

「Les contes du korrigan. tome 1 : Les trésors enfouis」

Kor 1
 ストーリー : Erwan Le Breton, Ronan Le Breton
 作画 : Jean-Luc Istin, Frédéric Peynet 他
出版社 : Soleil Productions
ISBNコード : 2845653174
表装 : ハードカバー(24x1x32)53頁
 

 本の内容☆☆11/20
 フランス語難易度易しめ
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



この漫画の主人公は、ブルターニュ地方に住むといわれている、小人の妖精 コリガン(korrigan)。
彼が、ブルターニュに古くから伝わるケルト系の民話を、読者に向けて語るという、「Les contes du korrigan」シリーズの第1巻です。

この本でコリガン(korrigan)は、次の3つのお話を話してくれます。

村の祭事や調停を司る、Druideという地位についている名士を父に持つAwenと、孤児のTamは、深い絆で結ばれた恋人。
「どこの馬の骨ともわからん男に娘をやれん」
とAwenの父から言われた、Tamが、Awenの親に認めてもらえる様、海に住む、妖精Morganの宝を盗もうとするお話。

老婆に一夜の宿を貸したため、はめると姿が見えなくなる指輪を手にした男の話。

「こぶとりじいいさん」を思わせる、せむし男のお話。


3人の漫画家が作画を担当しているので、3つのタイプの絵が楽しめます。
中には、人物に、フランス漫画特有のくせが、ちょっとある絵の漫画もありますが、全体的に、読みやすく構成されています。
又、どのお話でも、背景に、ブルターニュの美しい風景が丁寧に書き込まれているのにも、好感が持てます。

フランスの民話を漫画で読んでみたいと思っていられる方、民話が好きな方には、気に入っていただけるのではないかと思います。

フランス人の子供へのクリスマスプレゼントにもいいかもしれませんね?


関連記事

カメルーン出身のフランス人による、人種差別に関するエッセー

「Je suis noir et je n'aime pas le manioc」

manoc
  著者       : Gaston Kelman
出版社 : 10/18
ISBNコード : 2264041080
表装 : ペーパーバック( 10x18) 207頁
 



 本の内容☆☆15/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪ .まあまあ

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



カメルーン出身で、都市工学者であり、フランスの Evry市の、L'Observatoire du Syndicat d'Aggromeration Nouvelle de la ville d'Evryの 所長を務めた事もある Gaston Kelmanによる、人種差別に関するエッセー集です。

この本が、フランスで出版された時は、「挑発的」と、かなり、マスコミで、話題にされました。
でも、私は読んで、
「どうしてこれが『挑発的』なの、本当の事を書いてるだけなのに?」と思いましたね。

フランス人は、他の国の人の事は、平気でめちゃめちゃに、けなすくせに、自分の事が批判されると、すぐ、『挑発的』とか『攻撃的』と言い、批判の矢を相手に返そうとするのですから、本当、これには辟易させられます。

この本に書かれている、著者が肌の色が黒いため、経験した、数々の恥辱を読むと、怒りがこみあげて来ました。

この本に書かれている様な人種差別の例は、フランスに住んで、「フランス人の中で暮らしている」非白人なら、程度の違いこそあれ、きっと、誰もが経験してる事だと思います。
学歴と社会的地位がある著者ですら、こんな経験があるのですがら、学歴も仕事もない、パリ郊外の団地に住む非白人が日常経験している屈辱は、想像するのが恐ろしいくらいです。

性質が悪いのは、この「人種差別」の大半は、相手の為を思って、親切にしてあげているつもりで、本人が気づかないうちに、行われている事です。
作者は、色々な例を挙げ、それがどうして、いけないのかを論理的に説明しています。

ただ、この本が、他の人種差別について書かれている本と違う所は、黒人は、白人より劣っているという考えは、白人だけではなく、黒人の中にも深く根づいているという事を明確に論じ、特に、アフリカ諸国の住人にも、非難の矢を向けている所です。
ここの所など、日本人にも共通している所が、あるなぁと、私は思いました。

「アフリカ人の血を受けていても、フランスで生まれて、フランス人として暮らして行くなら、肌の色が違ってもフランス人」という、著者の主張には、大いにうなずけます。

だから、ただ、単に肌の色が黒いから、アフリカの文化に興味を持って当然、という考えを持つ教育関係者に対して著者が向ける、批判も筋が通ったものだと思います。

又、著者は、「フランスの治安問題について、人種別の調査は、『共和国の原則』に反するので、出来ない」
という一部の政治家の意見に対しても、
「本当に、何が問題であるか、調査しなければ、原因解決は出来ない」と、断言し、反論します。

ただ、問題点だけを挙げ、フランス社会を批判するのではなく、ちゃんと、彼なりの問題解決の方法を示している所、とても好感が持てました。

ただ、残念なのは、この本は、インテリを読者対象として書かれている様で、文章が長く、1章も長くて、あまり、気軽に読めるタイプの本でない事です。

あまり、本を読む習慣のない、人達にこそ、是非、読んで貰いたいタイプの本なので、そこの所、とても残念に思えました。

宗教戦争で荒れ狂っているフランスが舞台の歴史小説


spad
   「Les spadassins」
 著者 : Jean-Baptiste EVETTE
出版社 : Gallimard
ISBNコード : 2070772748
表装 : ソフトカバー(13x21)272頁




 本の内容☆☆13/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



宗教戦争で荒れ狂っているフランスが舞台。

従兄弟を殺してしまったため、ミラノを追われたANtoino Zampini は、 Vitteaux の領主である男爵Guillaume Du Prat の元に仕官します。Zampini が、剣の名手であり、学者の秘書を勤める事が出来る程の教養のある文化人なのに対し、Vitteaux男爵は、争いを好み、粗野で、女好きで、おまけに気違いじみた、エネルギーの持ち主。

Zampiniは、男爵に裏切られたり、彼のせいで、散々な目にあったりしますが、運命によって、この形容しようのない魅力を持つ男爵の元へ引き戻され、20年もの間、行動を共にし、パリ、トゥルーズ、ローマ、アンベールの戦場の地を駆け回ります。

この小説は、戦い、争いにあけくれた Vitteaux男爵の怒涛の様な人生を、Zampiniが回想する、という形で語られます。

一男爵でありながら、傭兵のごとく、戦場から戦場へ渡り歩き、復讐の炎を常に内に秘めた、Vitteaux男爵の姿を通し、当時の悲惨な戦場の様子、権力争い、裏切り、等々が、生き生きと語られます。

現在だったら、「まったく病気」と言いたくなる様なVitteaux男爵ですが、こんな人物が堂々と男爵をやってられる、当時の政情って本当、どうしようもない、モノだったのねぇと、しみじみ、現在に生まれた幸運を実感しました。

読む分には、おもしろいけど、Vitteaux男爵のような人とは、あまり係わり合いになりたくないです。 ああ、かわいそうなZampini。
この本を読んでいる間、まるで、宗教戦争たけなわの、あの時代へタイムスリップした様な気持ちになりました。

16世紀に興味をお持ちの方、歴史物が好きな方には、楽しんでいただける作品ではないかと思います。

アフリカに関するエッセーの傑作

Coup de coeur

L'Africain
   「L'Africain」
著者 : Jean-Marie-Gustave Le Clézio
出版社 : Folio (Gallimard)
ISBNコード : 2070318478
表装 : ペーパーバック(11x1x18)124頁



 本の内容☆☆☆17/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



モーリス諸島出身の両親を持ち、幼年をアフリカで過ごした事のある、JMG Le Clézioが、アフリカへの想いを語った作品。

著者の父は、1928より、英国軍の軍医として、アフリカに勤務していました。
戦争が終わった1948年に、著者は、母親に連れられて、初めてアフリカの地を踏みます。

彼の父が勤務していたのは、ナイジェリアのOgoja、当時、この地に住むヨーロッパ人は、彼の家族だけでした。

大きな力を持つアフリカ、太陽、豪雨、植物、昆虫、すべてが桁違いにスケールの大きいアフリカ。
そして、自由にあふれている人間の体。
8歳の著者が初めて出会った、そういった未知の世界が、偏見のない子供の目を通して語られます。
決して、美しい思い出のみ取り上げているのではないし、美化しているわけではないのだけれど、彼の筆を通すと、彼の心の中に残っているアフリカの思い出は、心の琴線を揺らされる美しいメロディーに変わってしまいます。

厳格で、子供の頃、理解する事が出来なかった父の思い出。
普通のやさしい、お父さんになることのできなかったほど、厳しい人生を送ってきた父親。
20年以上、熱帯アフリカの奥地で、暮らし、広大な土地の唯一の医者として、多くの人々を治療し、
普通の人が生涯目にすることのない、悲惨な場面に数え切れないほど立ち会ってきた父。
著者は、父親が歩いてきた道を辿りながら、彼を理解しようと試みます。

そして、内戦に明け暮れる、アフリカ。Biafraの虐殺。
アフリカへ武器を輸出しているヨーロッパ諸国への批判。
この本を通して、著者は、アフリカと彼の父への想いを語っていますが、心を打たれたのは、その文章に漂う、SERENITE。
長い年月により、表面的なもの、余分なものがすべて、きれいに洗い流された、思い出。
その中に残った本質的な物のみが、灼熱の中をすっと吹き抜けて行く風のような、文章で綴られています。

この本には、挿入されている、彼の父が撮影した15枚のセピア色の写真からも、彼の父と著者のアフリカへの深い愛を感じる事出来ます。

『とても美しい言葉で綴られた、アフリカに関するエッセーの傑作』と、言っても決して過言ではないと、私は思いました。

フロイド派の精神分析を武器に、中国を駆け巡る、中国版ドン・キホーテーの冒険


complexe
   「Le complexe de Di」
著者 : Sijie Dai
出版社 : Folio (Gallimard)
ISBNコード : 2070309215
表装 : ペーパーバック(11x18)398頁
 




 本の内容☆☆13/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)


フランスに留学して、フロイト派の精神分析学を勉強した、ちびで、ド近眼のさえない中国人の男、Muoが主人公。
このヒーロー、ドジで、夜汽車の中で、回想にふけっている間に、座っていた席は取られるは、荷物どころか、靴まで盗まれてしまいます。

帰国して、精神分析師として、開業しようとしますが、精神分析の事など、誰も聞いたことのない、中国の田舎では、これが、なかなか思った様には行きません。
それでも、Muoは、母親の箪笥から失敬した布と、父親の釣竿で、看板代わりの旗を作り、それを、自転車に、くくりつけて、村々を回り、精神分析医として夢判断の診察を始めます。


だけど、Muoの苦労は、それだけじゃなかったのです。
帰国したMuoを待ち受けていたのは、

「大学時代に思いを寄せた、Volcan de la Vieille Lune、という女性が、中国人警官が容疑者を拷問している写真を撮って外国の新聞社に売ったため、警察に捕まり、現在、起訴中」 

という知らせ。

Muo は、Volcan de la Vieille Luneを刑務所から救い出そうと、奔走します。四苦八苦の末、つてを辿り、Volcan de la Vieille Luneの事件を担当している判事に会ってみると、袖の下が良く効くと評判の、この判事、

「お金は、有り余ってるので、代わりに、処女がいい」

なんて事、言い出したので、大変。

Volcan de la Vieille Luneを助けるためならと、Muoは、精神分析医として夢判断をしながら、処女を探そうと、若い女の子がたくさん集まる、求職市場で開業しようとします。
市場を管理している、マーガレット・サッチャ女史を思わせる女性警官に、取り入って、開業の許可を得て、精神分析医として診察を始めたのは、いいのですが、・・・



著者は、小説家、兼、映画監督の中国出身のフランス人。
そのせいか、作品は、とても映像的、読んでいて、Muoが、中国を駆け回る光景が目に浮かんできます。そんな映像的な文章で、ドジでさえないMuoが中国社会で、獅子奮迅する様子がコミカルに描かれます。
Muoが遭遇する事件や人物を通して、中国社会への強烈な風刺が

「母国をこんなに、けなしてしまって、本当にいいの?」

と、心配したくなる程、後から、後へと登場してきます。

ドジで、さえない、Muoですが、あばたの女性警官、葬儀屋で死体処理を担当している未亡人、田舎から出稼ぎに来た少女等など、次から次へと女性と係わり合いが出来、まったく、このヒーローついているんだか、ついていないのか、よく判らなくなってきます。

「いくら、Volcan de la Vieille Lune を救い出すためとはいえ、おいおい、Muo、結婚の約束なんかしちゃっていいの?」

そんな読者の疑問も耳に入らないほど、一心不乱に処女を探して歩く、中国版ドン・キホーテーの物語です。


Sijie Daiの他の著作に関する記事

サン・マロのフランス漫画フェスティヴァル「QUAI DES BULLES」

bulle
image:http://www.quaidesbulles.com/

今日は、モン・サン・ミッシェル、サン・マロ旅行の第3日目。
(1日目と2日目の様子は、Yahoo Blog フランス読書 をご覧ください)
前日に立ち寄った、観光案内所で、今日から3日間、「QUAI DES BULLES」というフランス漫画フェスティヴァルが開かれる事を偶然知り、それなら、今日は、絶対、「QUAI DES BULLES」に行くと決心を固めたのでした。

朝ごはんを済ませたら、早速、観光案内所へ直行。観光案内所のおねえさんに、「QUAI DES BULLES」 について色々話しを聞いて、ついでにチケットを購入。初日の金曜日は、午後14時からという事なので、午前中は、旧市街の教会で開催中のサンペの原画の展示会へ行く事にしました。

この展覧会は、旧市街にある古い教会で開かれていました。シャンデリアや布を使って、古い石造りの教会の中をうまくアレンジしてあり、シンプルだけど、とってもいい雰囲気。
私は、サンペは、プティ・ニコラの挿絵を描いた人と、というイメージが強かったのですが、色々な風刺漫画が沢山、展示されてあり、とっても楽しめました。ただ、漫画の原画なので、大きさが小さいので、一つの作品を一人の人しか見る事が出来ず、他の人が見たい絵を見ている場合は、前の人が作品の中のテキストを読み終わるまで、じっと待ってなければならないのが、ちょっとかったるかったです。
金曜日の午前中だったせいか、館内に、あまり見学者がいなかったから、良かったけれど、そうでなかったら、とてもじゃないけど、ゆっくり見ている事は出来ないんじゃないかと思いました。でも、前の人が見終わって、立ち去る前に「クス」と笑うのが、とても面白かったです。(そういう私も見終わって吹き出していました)

さて、午後は、待ちに待った、「QUAI DES BULLES」。来館者用の駐車場に車を置いて、バスに乗って、会場に着いたら、わぁ、発券所の前は、すでに長蛇の列。でも、すでにチケットを買ってあるので、入り口に直行。入って券を見せると手の甲にスタンプを押してくれる。これで、手を見せるだけで、1日中、出入り自由になるって事みたい。入り口で、Parquet出版のお姉さんが袋を配っている。なんと中には、カタログとBDが1冊。ひやー気前がいいね。後で読んだら、絵は今ひとつだけど、ストーリーは結構面白かったです。Parquet出版の広告戦略に見事はまって、第2巻を読みたくなってしまった。とほほ

「FESTIVAL DE BANDE DESSINEES」に来る人の目的は、その場で、お気に入りの漫画家の本を買って、サインを貰うこと。
私は、フランス漫画は、あまり好きじゃないし、全然詳しくないのですが、そんな私でも、好きな漫画家が2人います。なんと、そのうちの一人が今回の、「QUAI DES BULLES」に来ているという。なんという幸運!!!最近、あまりついていなかったけど、ここ2,3日で運が急上昇したみたい。Youpieeeeeee!そうです、華麗な絵のファンタジー冒険漫画、「NAUJA」の作画を担当したSTANSさんが来ていたのです。\(^o^)/(「NAUJA」の書評はこちら

私がサインを貰うのは、恥ずかしいので、二人の息子に、「NAUJA 第3巻」と新作の「Les Royaumes Engloutis」を持たせて、サイン待ちの列に並ばせました。
サインといっても、ちょこちょこと、自分の名前を書き込む、日本の作家のサイン会とは大違い。
なんと、本のタイトルが載っているページの横の白いページに、作中人物のスケッチを描いてくれるのです。
漫画家によって差があると思いますが、STANSさんは、大体一人に15分くらいかけて、とても丁寧なスケッチをしていました。
「NAUJA」には、鉛筆で元脱走兵の王Rakovの親友(名前は忘れてしもうた)の絵を、「Les Royaumes Engloutis」には、鉛筆で、描いた上、インクで墨を入れた「アロン」の絵を描いてくれました。
そして、なんと「Les Royaumes Engloutis」のアロンの絵の上には、なんと、カタカナで『アロン』と書いてあったのでぇすよぉ。息子の話しによると、他の人にも書いていたとの事だから、もしかしたら、ELIASさん、日本びいきなのかしら?

息子がサインを貰うため、待っている間に、入り口でもらったPaquet出版のカタログを見ていてビ・ビックリ。「NAUJA」って、フランスの作品じゃなくて、スペインの漫画だったのです。
作画担当のELIASさんを初め、ストーリーや着色担当の漫画家は、みんなスペイン人でした。ひぇービックリ。(・o・)
(後で、BDを調べてみると「Les Royaumes Engloutis」には、翻訳者の名前が小さく記入されていたけれど、「NAUJA」の方は、隅から隅まで調べたけれど、どこにも、翻訳者の名前が載っていませんでした、どうして?)
おまけに、Paquet出版のカタログの「NAUJA」のところには、「SERIE COMPLETE」との記入が・・・
お話は、完結には程遠い感じで、終わっているので、まだ、続きがあると思っていたのですが、これで終わり?!(°O°;)
それとも、あまり人気が出なかったので、途中で打ち切りになったのでしょうか???
でも、息子の話によると、来年はじめに、「NAUJA」の第2部の1冊目に当たる4巻が出るという、噂が会場で漂っていたとの事・・・
うぅん、よく分らん。(?_?)
「どうして、サイン貰ったときに、ELIASさんに聞かなかったの?」と問い詰めると、
「フランス語しゃべれないみたいだったよ、それに、絵を描くのに集中していて、話しかけにくい雰囲気だったよ」との事。
無料サービスのファンへのスケッチにすら、そんなに真剣にしてもらえるなんて、フランスのBDファンはとっても幸せね。そういえば、ELIASさん、小柄で、シャイそうな感じの人でした。

「QUAI DES BULLES」は、こういった出版社ブースの他に、漫画家の原画の展示会もありました。

これって、漫画の原画っていうより、芸術作品じゃないの???と言いたくなったのは、スターウォーズの漫画版の作画を担当したMathieu LAUFFRAYの原画展示会での事でした。
スターウォーズの原画には、それほど驚かされなかったけど、ハイティーン向けの、ちょっとホラー的な要素のあるSFファンタジー漫画BD「PROPHET」の原画、特に、表紙用にかかれたカラーの原画が「うひょー!すごい!」と叫びたくなる程、凄い作品。
達者な絵と、アメリカの特殊SF映画のスタッフがはだしで逃げ出したくなる様なコンセプト。久しぶりに目の保養をさせていただきました。
「おばあちゃん、こわいよぉー」と、見に来ていた、少女が思わず叫んでしまった程、ド迫力の絵でした。
これを機会に、LAUFFRAYが作画を担当しているBD「PROPHET」を読んでみようかしら、だけど、後で悪夢を見そう・・・とジレンマに悩む私でした。

その他、タフで、ハードな修道女ばあさん、Marie-Thérèseシリーズの原画展では、大爆笑。等など、と、全部書ききれないけど、大変充実した、半日を終え、帰るため、駐車場への無料往復バスの停留所へ。

漫画出版社の袋を手にした、他の人たちとバスを待っていると、Editions Soleil の袋を持ったおにいさんが、近づいてきて、「『Editions Soleil』のポスターいらんかい?」と私に話しかけてくるではありませんか。V(^o^)V
おにいさんが、ポスターを配っているのを見た周りの人は、オラもオラもと、にいちゃんの回りに集まり、あっという間に袋は空に・・・

「いやあ、なんで、今日はこんなについているんだ!!!」(●^o^●)と思った1日でした。

サン・マロのフランス漫画フェスティヴァル「QUAI DES BULLES」のもっと詳しい様子を知りたい方は、「QUAI DES BULLES」の公式サイト(仏語)
http://www.quaidesbulles.com/  
をご参考ください。


視覚障碍者がヒロインのフランス推理漫画


luna
   「luna alamaden」
 ストーリー : Lapière
 作画 : Clarke
出版社 : Dupuis
ISBNコード : 2800136219
表装 : ハードカバー(24x1x32)48頁
 



 本の内容☆☆11/20
 フランス語難易度易しめ
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



視覚障碍を持つLuna は、モビールを主に制作している彫刻家で、アパートに一人暮らし。母親の代りに買い物をしたり、洗濯したりと、母親の世話をしている。
そんな彼女は、毎週水曜日に、姉 とその夫 と一緒に、ビストロで食事をするのが習慣になっている。 だが、長年の間、母親と仲たがいをしている姉は、 Lunaが、細々と母親の世話をするのが気に触って仕方が無い。
そんなある日、 彼女らの母が殺され、アリバイの無いLuna に容疑がかかる。


B D には、珍しい、大変読みやすい作品でした。
絵も、B D 特有の癖が全く感じられない、とても好感の持てる絵柄です。主人公、彼女を取り巻く人々の性格が、絵を通して、良く感じられます。又、何気ないフランスの風景が背景として、丁寧に書き込まれていてます。

ただ、この作品のトリックに関しては、私は、ちょっと納得が行きませんでした。視覚障碍者は、障碍が無い人より、嗅覚や聴覚、触覚が鋭いので、このトリックは、現実的でない様な気がしました。

好感の持てる絵柄、とても読みやすい所、そして、障碍者を主人公にしたという点は、大いに評価出来ますが、もっとつっこんだストーリーだったら良かったのになぁという不満が残りました。

Denis Lapière原作の作品に関する記事

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