イランの独房で、絞首刑の執行を待つ、15歳の少女の手記という形を取った小説。
2008-07-14
イスラム原理主義者のテロが相次いで起こった1990年代のアルジェリアを舞台にした小説
2008-05-21
ヤスミナ カダラの「テロル(L'Attentat)」
2007-10-12
Frarabicさんのブログ で、以前、このブログで絶賛した 「L'attentat」 の邦訳が、今年の3月に早川書房から出版されたのを知りました。


うれしい!



邦題は「テロル」です。
(アマゾン・ジャパンでこの本について詳しく見る
)
早川書房さんありがとう。
「Les Sirènes de Bagdad」も、とってもいいので、
是非、邦訳出版して下さるようお願いします。m(_ _)m

ヤスミナ カドラの著作に関する記事


うれしい!



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「Les Sirènes de Bagdad」も、とってもいいので、
是非、邦訳出版して下さるようお願いします。m(_ _)m

ヤスミナ カドラの著作に関する記事
イラク人の若者が自爆テロになって行く過程を綴った問題作
2006-12-21
ヤスミナ カドラの自伝的小説
2006-11-23
アルメニア人虐殺をテーマにした傑作小説
2006-11-16
ベイルートに暮らした3代の親子の姿を歴史にからめて描いた小説
2006-08-15

「Roman de Beyrouth 」
著者 : Alexandre Najjar
出版社 : Pocket
ISBN-10 : 2266164996
ISBN-13 : 978-2266164993
表装 : ペーパーバック(11x18)441頁
| 本の内容 | ☆☆ | 12/20 |
| フランス語難易度 | ## | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪♪ | すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
かつて、ベイルートの新聞社の記者を勤めた事のある Phillipeがこの小説の語り手。
ベイルートのフランス大使館勤務のエリートだったPhillipe祖父 Roukoz、
ベイルートの名士の主治医を務めた名医だったPhillipe父、
そして、大手新聞社に勤め、激変するベイルートの様子を報道したPhillipe、
ベイルートを愛し、ベイルートに暮らした、この三代の親子の人生を通して、ベイルートの歴史を語った作品です。
現在は、年老いて、緑内障のため、視覚を失ってしまった、Phillipe が、過去を著者に語るという形で、お話は進行して行きます。
訪れた者は、誰もが、滞在したくなる様な、美しい街、かつては、中東のスイスと言われた、ベイルート。
この街には、いくつもの人種と宗教が共存しています。
皆さんもご存知の様に、ベイルートは、幾度か占領され、複数の戦争により、踏みにじれていきます。
1985年、フランス大使館に勤める、Roukoz が、クーデターの企みに加わる所から、物語は、始まります。
彼が意図した様に、物事は進まず、悲劇的な局面を迎えます。
それから、この小説では、Phillipe両親の暮らしぶりや、フランス人経営の学校に通い、成長していくPhillipeの姿を語りながら、違った文化、宗教を持つ人々と共存しようとする市民たちの姿、そして、戦いに、恐れおののきながらも、普通に暮らして行こうとする市民の姿が、この街の歴史と重ねられて、淡々と語られています。
メディアを通して、戦争による悲惨な状況しか、報道されていなかったけれど、その中で、市民が何を思い、どういう風に生活して来たのかが、この本を読んで、少しわかった様な気持ちになりました。
派手な展開や、アクションなどは、この本には期待できませんが、ベイルートの一市民から見たこの町の歴史を知りたい、とお思いの方には、お勧め出来る作品だと思います。
ベイルート生まれの著者は、
「疲れきっているけれど、誇り高い貴婦人の様なベイルートへの、愛を込めてこの作品をしたためた」
とインタビューで語っていました。
厚い本ですが、平易で、読みやすいフランス語で書かれているので、読むのにも、それほど時間がかかりませんでした。
現在、リバンを中心に展開されている国際紛争が早期解決する事を、「疲れきっている誇り高い貴婦人」が昔の様な美しさを一日も取り戻すことを願って止みません。
この記事は以前Yahoo Blog に掲載した記事を一部修正したものです。
タリバンの支配下のアフガニスタンを描いた名作
2006-04-21
「Les hirondelles de Kaboul」
著者 : Yasmina Khadra
出版社 : Pocket
ISBN-10 : 2266134752
ISBN-13 : 978-2266134750
表装 : ペーパーバック(11x1x18)148頁
| 本の内容 | ☆☆ | 15/20 |
| フランス語難易度 | ##♯ | 少々難しめ |
| 読みごごち | ♪♪ | まあまあ |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
タリバンの支配下にあるアフガニスタンが舞台。
監獄の番人のAtiqは、妻のMussarat が不治の病にかかっている事を告げられた。
愛する妻が次第に病でやつれ果てていくのを見かね、鬱状態に陥る Atiqに、友人の Mirzaは、離婚し、若い娘を娶る様、薦める。
Mohsenは、偶然、立ち合わせた、投石による死刑の現場で、自分でも知らないうちに、回りの雰囲気に押され、自分の意思とは裏腹に、死刑囚に石を投げつけてしまう。
我に返ったMohsenは、自分で、犯したこの行為を恥じ、どうしてこんな事になったのか自分が信じらず、狼狽する。
Mohsenの妻のZunairaは、元弁護士で、教養のある女性。
Mohsenは、救いを求め、Zunairaに自分が犯した行為を告白する。
だが、彼は、安らぎを得る事が出来ず、二人の間の溝がさらに深まってしまった事を認識する。
次の日、二人の間に漂う重苦しい雰囲気から逃れるため、Mohsen 、は、Zunaira へ、以前の様に、二人で散歩に出る事を提案する。だが、この他愛無いアイディアは、悪夢へと変わって行った・・・
以前に紹介した「L'attentat」(書評は、こちらをご参照下さい)を書いた、著者の他の作品を読んでみたくて、色々調べたところ、この本に行き当たりました。
タリバン支配下にある、カブールの市民の日常を書いた作品。
「L'attentat」は、グングン、読者の心の奥に入り込み、力強いメッセージを投げかける作品でしたが、この小説は、強いメッセージを全面的に押し出すのではなく、タリバンが、市民生活を支配するようになって、市民の日常と家庭がどの様に変化していったのかを描きながら、機敏に読者の心の中に入り込み、読む者の感情をゆさぶらせてしまう作品です。
イスラム原理主義を頭から信じ込み、ばかげた、理不尽な行為を正義だと信じている人々、
それが悪い事と知りつつ、回りの人の影響を受け、自分を失ってゆく人達、
そして、人間として生きていく事を否定された女性達
彼らや彼女らの姿を描きながら、著者は、人間がどんなに弱く、不確定な存在なのか、読者に語りかけます。
作品を読んでゆくにつれ、自然と、イスラム原理主義に心酔することが出来ず、人間性を失う事のない人々の叫びが自然と心に伝わって来ます。
タリバンの政策が、面と向かって糾弾されているわけではないけれど、不寛容な原理主義的宗教によって、人間が人間として生きていく事を否定されているカブール市民の日常に、怒りを覚える様になります。
この現実に対して、作中人物達が出した、結論は、あまりにも悲しすぎて、絶望的。
読み終わった後、
「現在のアフガニスタンは、どの様に変わったのかしら?」
と、とても気になりました。
先日見た、テレビのルポだと、かなり自由になったみたいだけど・・・
現在のカブールを舞台にして、この現実がどの様に変わったのか、是非、著者に、もう1作、カブールを舞台にした作品を是非、書いてもらいたいなぁと思いました。
Yasmina Khadraの他の著作に関する記事
パレスチナ・イスラエルの紛争を描いた傑作小説
2006-02-13
Coup de coeur
「L'attentat」
著者 : Yasmina Khadra
出版社 : Pocket
ISBN-10 : 2266162691
ISBN-13 : 978-2266162692
表装 : ペーパーバック(11x1x18)245頁
| 本の内容 | ☆☆☆ | 18/20 |
| フランス語難易度 | #♯♯ | 少々難しめ? |
| 読みごごち | ♪♪♪ | .すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
この小説の主人公は、アラブ系イスラエル人の敏腕外科医、Amine。
満員のレストランで、起こった自爆テロの被害者を治療して、クタクタになって帰宅した Amineは、警察庁のお偉方の友人のNaveedから、「至急、病院へ戻って来る様に」との電話を受ける。
病院へ着いた、Amineを待っていたのは、爆発の影響で、ぼろぼろになった変わり果てた妻、Shiemの遺体だった。
そして、Amine は、 Naveedから、レストランで起こった自爆テロ事件の犯人は、妊婦に変装し、マタニティードレスの下に隠した爆弾を爆破させた彼の妻、Shiemだと、伝えられる。
アラブ系でありながら、完全にイスラエル社会に溶け込み、社会的地位と、財産があり、愛する妻と幸せな日々を送っていた主人公とその妻のShiem。
やさしくて、慎み深く、なによりも自分を強く愛していたと信じていた妻が、『KAMIKAZE』と呼ばれる自爆テロを起こした事が、どうしても信じられないAmineは、ユダヤ系イスラエル人の同僚であるKimの助けを借りて、Shiemの死の謎を解明しようとする・・・
この本を読み終わって、とっさに頭に浮かんだ言葉は
「 Trop fort ! Poignant ! 」
私は、これまでに、パレスチナ問題について、書かれた記事や、テレビのルポは、数え切れない程読んだり見たりしました、又、この地方へ旅行へ行った人の話を聞いたりもしましたが、この本を読んで、「もしかしたら。今まで私は、何も理解していなかったのではないか」と、愕然とした思いを味わいました。
フィクションという形を持って、パレスチナ・イスラエルの紛争と一緒に生きていかねばならない運命に生まれた、パレスチナ人たちが直面している現実を出来るだけ忠実に伝えようとし、それに成功した作品だと思います。
貧しいアラブ系の家庭の出身でありながら、完全にイスラエル社会に溶け込み、イスラム原理主義者を完全に否定している主人公。彼は、自爆テロを賞賛する、imam に対して、次のように叫びます。
「Tu oses me sôuler avec tes histoire de braboure et de dignité lorsque tu restes dans ton coin en envoyant des femmes et des gamins au charbon?
Détrempe-toi: nous vivons bien sur la même planète, mon frère, sauf que nous ne logeons pas à la même enseigne.
Tu as choisi de tuer, j'ai chosi de suver. Ce qui est l'ennemi pour toi, pour moi est un patient.」
女や子供達を、地獄に送っておきながら、自分はぬくぬくとしているお前が、勇気や尊厳を語る事で、ずうずうしくも、俺を陶酔させようとするつもりか。
勘違いしないでもらいたい。俺たちは、同じ惑星に住んでいる、ただ、違った生き方を選んだだけだ。
お前は殺す事を選び、俺は治療する事を選んだ。お前にとっての敵は、俺にとっては患者だ。
そんな、考えを持っているAmineを中心に、
彼の妻が自爆テロを犯したにも係わらず、Amineに変わらない友情を示し続けるユダヤ人のKim、と Naveed、
ナチスのユダヤ人収容所にいたことのあるKimの父親、
常にテロ恐怖に脅えて暮らしているがゆえ、テロ行為にかかわるものに対し激しい憎悪を抱く人々、
そして、イスラム原理主義に傾倒せずにはいられない立場に追い込まれてしまった者たち、
彼ら生き方と考え方が、グサグサと、胸に突き刺さるナイフのように、頁をめくるにつれ、読む者の心に刻み込まれてゆきます。
最後に、Amineがたどり着いた結論は、どうやったら解くことができるのか誰にも分らない、現在のパレスチナ・イスラエルの紛争の行方を暗示しているようで、暗い気持ちになりました。
著者がアルジェリア人であり、主人公がアラブ系という事もあり、この作品、少々、パレスチナ寄りになっている事は、否めません。
ですが、「中立」を第一に考えて、行われた報道では伝える事が難しい、パレスチナ人が生きている現実を読者に伝えるのに成功しているのも、否めない事実です。
パレスチナ自治評議会選挙でハマスが勝利を収めたのは、納得できませんが、どうして、パレスチナ人たちがハマスを選んだのか、この小説を読んでみて、少しですが、理解できた様な気がしました。
Yasmina KHADRA こと、Mohammed MOULESSEHOUL の様な文才が持たない私は、どんなに言葉を尽くしても、うまく、この本を読んだ後感じた思いを伝えることは出来そうにありません。
「とにかく、読んでみてください」
2006年は、始まったばかりで、今年もビジバシ本を読んでいくつもりですが、この本が2006年のベストコレクションに入ることは、間違いないと、確信している傑作です。
この本を読み終わった後は、どんな本を読んでも、物足りなく感じてしまい、困っています。
多くのの言語に訳して、出来るだけ、沢山の人に読んでもらいたい作品です。
Yasmina Khadraの他の著作に関する記事
モロッコが舞台の二人の男の友情の物語
2006-02-06
「Le dernier ami」
著者 : TAHAR Ben Jelloun
出版社 : Points (Seuil)
ISBNコード : 2020798328
表装 : ペーパーバック(11x1x18)147頁
| 本の内容 | ☆☆ | 11/20 |
| フランス語難易度 | #♯ | 普通 |
| 読みごごち | ♪♪♪ | .すらすら読めました |
(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)
モロッコのTangerのフランス高校に通う、二人のティーンエージャー、Ali と Mamed は強い絆で結ばれた友達。女の子をナンパしたり、映画の話、政治の話をしたりして、楽しい時を過ごします。高校卒業後、Mamed はフランスの大学の医学部へ、Ali カナダへ映画の勉強をしに行くことになります。
大学の休みを利用して、帰国した二人は、反政府活動をしたとの理由で、警察に逮捕され、刑務所へ送られます。
刑務所でのつらい期間を、二人はお互いをかばうことにより、生き延びることに成功し、二人の絆はさらに強くなります。
やっとの事で、釈放され、自由になった二人。Ghitaという女性と結婚したMamed は、スウェーデンで医師としての職を得、モロッコを離れます。
Sorayaという裕福な女性と結婚したAli は、歴史の教師として、モロッコで就職します。
そして、離れていても、永続すると思われた、二人の友情に、次第に亀裂が見られ始めます。
この小説の語り手は、Ali 、 Mamed そして、二人の共通の友人 Ramon の3人。
第1章は、Ali から見た、Mamed が、第2章では、Mamed から見たAliが、そして、第3章では、Ramonから見た
二人の姿が、語られます。
同じ時代を同時に生きていたのに、Ali 、 Mamed が、持っている思い出には、微妙にずれが感じられます。でも、お互いをかけがえのない親友と思っていたことには、違いはありません。
ストックホルムに暮らすうちに、モロッコの政治、生活がいかに、秩序のないものであるのかに、気づき愕然とする
Mamed。 彼は、スウェーデンの政治、生活、人の暮らし方を賞賛の目で見ながらも、雑然としたモロッコに耐え難い郷愁を抱きます。
そんな、Mamed にたいし、Aliは、色々と日々頭を悩ませていることを並べ上げ、彼をなだめようとします。
そして、かけがえのない親友に対してMamed の取った意外な態度、そして、感動のラスト。
私は、子供の頃、漫画で、この作品とほんの少しばかり似たストーリーを読んだことがあるので、途中でラストが想像できてしまったため、私は、今ひとつ、感動できませんでした。(だって漫画の方のストーリーの方がずっと感動的だったのだもん。ちなみに、この、少女漫画、ストーリーは覚えているのですが、作品タイトルも、著者も覚えていません(T.T) )
この小説は、そんな二人の男の人生と友情に、絡め合わせて、現在、モロッコが抱えている、汚職、医薬品の不足、養子が法律では認められていない等の問題が提示されています。 私には、二人の友情より、そちらの描写のほうが、興味深く思えました。
本の最後の部分で、 Mamed の父親が次に様につぶやく場面が出てきます。
Tu sais mon fils, je fus tenté par la politique au moment de l'indepenedance du Maroc, mais je vis très vite que nous n'étions prêts pour l'exercice de la démocratie.
Je ne dis pas que nous méritons pas de vivre en
démocratie, mais nous avons besoin qu'on nous éduque, qu'on nous explique ce que c'est, nous avons besoin d'apprendre vivre ensemble.
La démocratie, ce n'est pas une technique, un machin qui vous permet de déposer un bullein de vote dans l'urne, non, la démocratie a besoin du temps pour s'installer, c'est une culture, ça s'apprend, nous on a oublié de l'inscrire dans notre programme.
息子よ、私はモロッコの独立時に、政治に首をつっこもうとしたことがあるが、私はすぐに、母国が民主主義を実施する準備が出来ていないことに気がついた。
私は、私たちの国が民主主義に値しないといっているわけじゃない。だが、民主主義というのが、どういうものであるのか、教育、説明してもらう必要が、共存することを学ぶ必要はある。
民主主義というのは、形だけまねすればいいというものではない、民主主義は、投票箱に選挙票を入れることを可能にする、それだけじゃないんだ。民主主義が、定着するためには時間が必要だ、民主主義は、文化であり、学ぶべきものであることを、わが国は、政治計画の中に書き入れる事を忘れた。
私は、この部分を読んだ時に、ふと、イラクの事を思いました。
二人の男の友情と、現在のモロッコが抱えている問題を描いた作品。
女性に対する描写があまりに表面的過ぎる点には、多いに不満が残りましたが、モロッコという国を理解する手助けになる本だと思います。
とても読みやすい作品でした。
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