Lire en FETE - フランス語の本の読書ガイド

フランスの現代作家の小説、BD(フランス漫画)を中心に、私が読んだフランス語の本を紹介

2005年ベストセレクション  その6

2005年ベストセレクションの番外編として、今日は、フランス語圏以外の作家の作品を紹介します。本ブログでは、原語がフランス語の本のみを紹介するようにしているのですが、例外として、あえて紹介したいと思ったほど、私に強い印象を残した本です。

Coup de coeur

biza
   「Le bizarre incident du chien pendant la nuit」
  著者 : Mark Haddon
翻訳  : Odile Demange
出版社 : Pocket
ISBNコード : 2266142836
表装 : ペーパーバック(11x18) 394頁
 



 本の内容☆☆☆18/20
 フランス語難易度易しめ
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



この本の語り手は、15歳のクリストファーという男の子。
彼は、シャーロック ホームズのファンで、数学の天才。
黄色と茶色が大嫌い。
グラフ、図表と真実が好き。
クリストファーは、朝、スクールバスが続けて赤い車4台、追い越したら、その日は吉日になると思っている。
3台の赤い車だったら、小吉日。5台の赤い車なら、大吉日。
彼は、人に触れられるのが大嫌い。
人と、どうやって接していいのかわからない。
彼は自閉症。

ある日、ご近所の飼い犬が殺されているのを、クリストファーは発見する。犯人を見つけるため、捜査に乗り出した彼だったが、捜査は思いがけない真実へとクリストファーを導いて行く。

以上の作品紹介は、、フランス語版の裏表紙の作品紹介をアレンジしたものです。
大変良く出来ているので、私が変な紹介するよりいいと思ったので、ちょっとアレンジして使用させて頂きました。

この本は、出来る事なら、なるべく先入観を持たずに読んで頂きたい本なので、紹介は手短にします。

日常、起こっている何気ない事が、自閉症のクリストファーの目を通すと、今まで私達が思っていたのと、全く違った意味あいを持ったものになってしまいます。
自閉症の子供の目から見た私たちの住む世界が、どんなに謎と危険に満ちており、不可解なものであるかが、ほのかなユーモアを漂わせる明晰な文体で、語られていきます。

犬の殺人事件ならぬ殺犬事件の捜査を通し、クリストファーが成長して行く過程が、作品を通して語られていくのですが、クリストファーと彼の両親の気持ちが痛いほどわかり、心がきりきりと音をたてて傷みました。

私は、自閉症に対しては、あまり良く知らないので、この本に出てくる自閉症に関する描写が正しいのかどうか、判断する事は出来ませんが、とても、心を動かされた本です。
この手の病気を扱った本は、お涙頂戴、又は浪花節調に流れてしまう場合が多いので、自閉症の子供に関する本と聞いて、その手の本は遠慮したいと思っている方、そんな理由でこの本を避けたら、大損をすることになりますよ。

普通の本の枠組みを超えた、全く新しいタイプの小説です。

ユーモアたっぷりにかかれていて、クイズに勝ち残るコツなど、誰もが関心を持てる数学ネタもが入っているので、とっても楽しみながら読めるし、かつ、色々と考えさせられて、自分の世界が少し広がった様な気持ちにさせてくれる本です。

宝石の様なきらきらした言葉が、あちこちにちりばめられているこの本は、Whitbread 、Booker prize をはじめ、世界中で合計18個の賞を獲得したそうです。


本書は、「夜中に犬に起こった奇妙な事件 ハリネズミの本箱」のタイトルで、早川書房より邦訳が出版されているようです。

この本の邦訳についてはこちら


この記事は以前メーリングリスト「本の出張所」に投稿したものを一部修正、加筆したものです。

2005年ベストセレクション その5

私が今年読んだ本の中で印象に残っている本を紹介する「年末特集シリーズ」第5回目は、当ブログですでに紹介済みの作品で、私が特に一押ししたい作品を紹介します。
本のタイトル部分をクリックすると、記事へ飛ぶことが出来ます。

小説

「MALATAVIA」

とにかく、面白くて楽しめた本。この本の初めの方に出てくるフランス人のカリカチュア的描写には、大爆笑、なかなか的を得ていると思いました。ちょっとリアリティーに欠けるところがあるけれど、それも許す気分になれちゃう、とおっても魅力的な作品でした。
作品を紹介した時には、ソフトカバーのみでしたが、現在はfolioからペーパーバック版が出版されています。

「Quatre soldats」

「終わりの雪」の邦訳が出版され、日本でも知られてきた、Hubert Mingarelli のMedicis賞、受賞作です。
文学好きの私には、涙なしでは読み終えることが出来なかった作品。
淡々とした文章で、文字を綴ることが、どれ程贅沢な行為であるかを語った作品。
とても平易なフランス語で書いてあり、超読みやすい作品です。
「終わりの雪」が気に入った方にはもちろんの事、「終わりの雪」を読んで、Hubert Mingarelli は、ちょっと・・・と、思った人に、特にお勧めしたい作品です。

「L'homme de la frontière」

上記の2作に比べると、やや小粒な作品ですが、これもなかなか掘り出し物。
考え抜かれたプロットには、おもわずうならされてしまいました。
楽しみが激減してしますので、本の裏表紙の紹介文を読まずに、読むことをお勧めします。

フランス漫画 ( BANDE DESSINEE)

私は、フランス漫画は、基本的には、あまり好きではありません。
第一に、読むところが多すぎる。 日本の漫画だったら、絵で表現する様な所が、往々にして、ごじゃごちゃとして、とりとめもなく、文才に欠ける、主人公のセリフになっているので、はっきり言って、読むのがかったるいのです。
ちんたらした、陳腐なセリフを延々と読むより、小説を読んだ方がずっとまし、と思ってしまいます。おまけに、フランス漫画の絵柄も、私の趣味に合うのは、ホント少ない!
下記の4冊は、そんな私のフランス漫画観を見事に覆してくれた作品です。

「LE BAR DU VIEUX FRANCAIS, EDITION INTEGRALE」

モロッコ人の両親の間でフランスに生まれた少女と、幼い妹の命を救うためアフリカのある村を逃げ出した孤児の少年、
この二人のハイティーンの男女の自分探しの物語。
なかなか情緒だっぷり、個性的な絵の、素敵な作品です。

「CHUTE DE VELO」

普通の人の何気ない生活の中にドラマが・・・
私が、初めて読んだEtienne DAVODEAUの漫画で、私が、DAVODEAU氏のファンにした、きっかけとなった作品です。

「Muchacho」

Tachito大統領の独裁下にある、中央アメリカのニカラグアを舞台に、たぐい稀な絵の才能を持った少年が成長して行く過程を、民衆の反政府運動に絡めて描いた作品。私が、第2巻の出版を心待ちにしている作品です。

「Coeur Tam-Tam」

Tonino Benacquistaの短編をBD化した作品。
ワハッハと笑い、しみじみ幸せな気持ちになれる作品です。
絵、読みやすさ、ストーリーが3拍子そろった、誰にでもお勧めできるフランス漫画だと思います。

2005年ベストセレクション その4

私が2005年に紹介した本の中で特に印象に残っている本を紹介するシリーズ、第4回目は、Jean-Claude IZZOが書いた、マルセイユが舞台のハードボイルドの傑作、Fabio Montale シリーズの第1巻目を紹介します。

Coup de coeur

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   「Total Kheopes」
 著者 : Jean-Claude Izzo
出版社 :  Folio(Gallimard)
ISBNコード : 2070417204
表装 : ペーパーバック(2x11x18)347頁
 


 本の内容☆☆☆17/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪ まあまあ

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



マルセイユ北部の貧民街の保安担当の警官で、イタリア人を両親に持つFabio Montale は、 人に言えない、犯罪に関わったという過去を持っている。彼の過去の思い出と切り離す事の出来ない、幼なじみのHugoが死んだ。
彼の死に、疑惑を抱いたMontaleは、独自に捜査を始めるが、彼は、意図しないうちにマルセイユの暗黒街の闘争に巻き込まれて行く。


現在のフランスが抱えている人種差別問題をテーマにした、異色のハードボイルド。

乾いた口調で、マルセイユの街の底辺で生きる者たちの姿が、マルセイユの街や、その周辺の美しい海岸地帯と共に語られまず。


「Boxer,ce n'est pas seulement cogner.
c'est, d'abord, apprendre à recevoir des coups.
A encaisser. Et que ces coups fassent le moins mal possible.
La vie n'est rien d'autre qu'une succession de rounds.
Encaisser, encaisser. Tenir, ne pas plier.
Et taper au bon endroit, au bon moment.」

「ボクシングっていうのは、ただ、殴ればいいってもんじゃない。
まず、パンチの、受け方を、覚える事から初めなけばならない。
なるべく痛みを感じない様に、パンチを受け止めなきゃならない。
人生は、幾つものラウンドの繰り返しに過ぎない。
受け止めろ、受け止めろ、持ちこたえろ、倒れるな、そして、チャンスが来たら、急所を叩け」


といった様な、袋小路の中で、精一杯生きようとする者達へのメッセージが作品の所々にちりばめられています。

ただ、ニヒルなだけでなく、一本筋の通った主人公の生き方には共感を覚えます。

マルセイユを舞台としたハードボイルドの傑作だと、私は思いました。
Fabio Montale みたいな警官が、沢山いれば、昨年の騒擾事件なんかは、起こるはずがなかったのに・・・
と、ふと思ったりしました。



この記事は、以前Yahoo blogに投稿したものを一部修正、加筆したものです。
 


Jean-Claude Izzoの他の著作に関する記事

2005年ベストセレクション その3

私が2005年に紹介した本の中で特に印象に残っている本を紹介するシリーズ、第3弾は、これはびっくり!もののポリティカルスリラーの紹介です。

Coup de coeur

french tab
   「French Tabloïds 」
 著者 : Jean-Hugues Oppel
出版社 : Rivages
ISBNコード : 2743613580
表装 : ソフトカバー(16x2x24)346頁
 




 本の内容☆☆☆16/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



2002年5月21日の大統領選挙第一回投票の結果は、フランス全土を驚愕させた。
保守のジャック・シラクと社会党のリオネル・ジョスパンの二人が決選投票に残ると、誰もが予想していたのに、蓋を開けてみたら、シラクが第一位、極右の国民戦線の人種差別主義者と評判の高いジャンマリ・ルペンが第二位で、この二人が決戦投票に残る事になった。
「そんな、馬鹿な」
この結果を知ったフランス人は、誰もが耳を疑った。

でも、もし、これが計算された政治的陰謀によるものだったら・・・

という、仮定を元にして、架空の作中人物と、実際にフランスで起こった出来事をパズルの様に組み合わせて作った緻密なストーリー構想のポリティカルスリラーです。


勿論、話の結末は、分かっているので、話の行く手を知りたくてわくわくしながらページをめくるという楽しみは味わえません。
だけど、どの様に陰謀が仕組まれて、遂行されていったのかが、フランスで実際に起こった事件を交えながら、かなりのリアルに語られているため、
「もしかしたら、これはフィクションではなく、ドキュメント?」
等と言う考えが、チラット頭をかすめたりもしました。かなり読み応えのある作品です。


この小説に出てくる大統領は、もし、今度の選挙で大統領に再選されなかったら、汚職で、刑務所行きは間違いなし。
刑務所行きを避けるため、マスコミを操作するプロジェクトチームを作り、シナリオに沿った事件を故意に起こして、国民を意のままに操り、再選へこぎつけます。

いやぁ、本当、リアリティーがあります。

でも、これが真実だったとしたら、ホント恐ろしい事ですねぇ。

これほど、重要なテーマを扱っているのだけれど、エンターテイメントとして書かれているので、操る側、操られる側、不審に思う側、色々な立場の作中人物が登場し、ストーリーが進行するので、スラスラ読めてしまいます。

フランスの政治事情をご存知の方、マスコミと政治家の関係に疑惑を抱いていらっしゃる方には、かなり楽しんで頂ける作品ではないかと思います。

Oppelさん、2005年のフランスの騒擾事件を元に、この手の小説書いてくれないかしら?

Jean-Hugues Oppel の他の著作に関する記事

2005年ベストセレクション その2

私が2005年に紹介した本の中で特に印象に残っている本を紹介するシリーズ、第2回目は、Famille Malaussèneシリーズで有名なダニエル ぺナック氏が子供向けに書いた作品を取り上げる事にします。

Coup de coeur

cabo
   「Cabot-Caboche 」
著者 : Daniel Pennac
出版社 : Pocket junioir (pocket)
ISBNコード : 2843373433
表装 : ペーパーバック(14x2x21)227頁
 



 本の内容☆☆☆17/20
 フランス語難易度易しい
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)


見てくれが悪かったため、溺死させられそうになった主人公の小犬は Gueule noire という野良犬に助けられます。

Gueule noire と一緒に、ニースのごみ収集所で、暮らし始め、それなりに幸せな日々を送っていましたが、ある日、Gueule noire は事故に遭い、「飼い主をみつけなさい」と言い残し、この世を去ります。そんなわけで、主人公の犬は、ごみ収集所を後にし、飼い主を探すため、旅に出ます。そして、紆余曲折を経て、主人公の犬は、ある女の子に引き取られる事になったのですが・・・


この作品は、私が好きなダニエルぺナックの作品の中でも、かなり、気に入っている作品です。子供向けに書かれた作品ですが、大人が読んでも、十分読み応えのある、動物好きには、堪えられない本です。
犬の目から見た、人間っていうのは、なんて、わがままで、理解し難く、犬の気持ちなんか、ちっとも分かってくれないので、そのため、犬は、いつも苦労している。そんな犬の気持ちが、ひたひたと伝わって来ました。
「おらぁ、飼い主をうまく、しつけられなかった」と、
野良犬が、主人公のイヌに、ぐちるあたりでは、思わず、笑いがこぼれました。

そんなどうしようもない、人間の中にも、いい人はいるわけで、主人公の犬がそんなタイプの人間に巡り会う場面には、思わず、ほろりとしてしまいます。

色々な辛酸をなめた、主人公の犬が、やっと本当の幸せを手にする、ラストのシーンは、とても感動的で、思わず、涙ぐんでしまいました。

又、巻末の、作者による、犬に対する、回想録も、とても、素敵。
犬を飼う時にはお互い(犬と飼い主)の尊厳を尊重する事が大事、という、提言には、納得させられます。

動物を飼う前に、是非、子供に読ませたい本ですが、大人が読んでも、十分楽しめる作品です。

この書評は、Yahoo Blog フランス読書に以前投稿した書評を一部加筆、修正したものです。

Daniel PENNAC の著作に関する記事

2005年ベストセレクション その1

明けましておめでとうございます。
パソコンの修理も終わり、無事に新年を迎えることが出来ました。
今年も、どんどん本を紹介していくつもりなので、どうぞ、よろしくお願いいたします。
2006年の初めは、ちょっとオーバーですが、2005年ベストセレクションと題して、2005年に紹介した本の中で特に印象に残っている本を今日から、5回に分けて紹介することにします。
第1回目の今日は、以前Yahoo Blog で紹介したことのある、 ベナキスタの作品を取り上げたいと思います。


Coup de coeur

comedia
   「La commedia des ratés」
 著者 : Tonino BENACQUISTA
出版社 : Folio (Gallimard)
ISBNコード : 2070406466
表装 : ペーパーバック(2x11x18)233頁
 





 本の内容☆☆☆18/20
 フランス語難易度##普通
 読みごごち♪♪♪ .すらすら読めました

(上記評価は、個人的な物なので、あくまでも目安としてご参考下さい)



主人公の Antoine の、幼なじみの Dario が、殺された。
Dario は、彼が死んだ場合、Antoine に、彼らの両親の生まれた、イタリアの小さな村にある、ワイン畑を譲る、という、奇妙な遺言を残していた。この問題のワイン畑で、出来るワインは、飲むのもはばかられる様な、クズワイン。
Dario の過去を探っていくうちに、命をねらわれる目に遭った、Antoine は、問題の畑をその目で見るため、イタリアへ向った。

そこで、Darioが自分に多大な信頼を寄せていた事に気づいた、Antoine は、Darioがやり遂げられなかった、ある事を実行に移す事にしたのだが・・・

以前にも、何度も書きましたが、ベナキスタは、現在最も私が気に入っているフランス人作家です。この作品は、今まで、読んだTonino BENACQUISTA の作品の中で、完成度といった点からすると、ベストクラスに入る作品だと、私が密かに評価している作品。

読む楽しみが少なくなってしまうので、あまり詳しく書けませんが、驚きから、驚きへと、読者をいざなっていく、からくりが仕掛けられた、見事なプロットで、とにかく、とても面白い。
読み終わった時、「やられた。完敗」と、久々にすがすがしい、気持ちを味わう事が出来ました。

本を沢山読み続けていると、おのずとから、本に対して多くを要求するようになり、どの本を読んでも、おもしろかったけど・・・と、ちょっと、一言付け足したくなるのですが、この本は、そんな隙すら与えてくれませんでした。
私は、今まで、かなりの量の本を読んでいますが、こんな、読後感を与えてくれる本って、本当に少ないです。

考えぬかれたプロット、BENACQUISTAお得意の現代の寓話といった風味のストーリ、生き生きとした作中人物の描写・・・と、私好みの要素が満載されている、読み応えのある作品です。おまけに、人間風刺というスパイスも、ほんのりと、効いています。

自信を持ってお勧め出来る1作です。


Tonino Benacquistaの著作に関する記事

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